ゴーレムとの対決
ルミナと色々と話しながら歩いていると遠目にオアシスが見えた。三時間の道のりが、あっという間だった。それほどルミナと話すのが楽しかったのだ。自分は断じてロリコンと言うわけではないし、見た目の好みはお姉さん系のスレンダーな女性である。まぁルミナが将来そのような女性になるかもしれないが……
オアシスに近づいていくとゴーレムの姿も、明らかになってきた。
「なんか、でかいな…」
アルスがつぶやく。確かにまだオアシスまで距離はあるが、明らかに大きいことは分かる。
遠くからオアシスを見ていたときは建物のようなものがあるなと思っていたが、それがゴーレムだったのだ。
ゴーレムは人間よりは大きいがせいぜい二、三メートルほどである。しかしこいつはその倍近くありそうだ。
俺達は足を止め、作戦を話し合った。幸い、まだゴーレムには気づかれてはいないようだ。
「でかいとはいえ相手はゴーレムだ。できるだけ近づいて、水魔法で一気に倒すぞ。ルミナちゃん、水魔法は何か使えるかい?」
「はい。魔法はあまり得意じゃないですが、中級魔法のウォーターボールなら大丈夫です」
「よし、中級なら大丈夫だろう。ルクスも使えるよな?」
「うん、僕も中級までだけどねー」
本当は水魔法だったら究極まで使えますけどね。
「よし、じゃあ俺は上級のウォーターランスでいく。じゃあ、一気に近づいて気づかれる前にぶちかますぞ」
「「はい」」
三人でゴーレムに向かって一直線に走り出した。
ゴーレムが俺達に気付き動き出そうとしたその瞬間、
「ウォーターランス!」
「「ウォーターボール!!」」
三つの魔法が同時にゴーレムに直撃した。激しい水しぶきが周囲を覆っている。
「やった」
とルミナが喜んだ瞬間、無傷のゴーレムが水しぶきが消えた中から現れる。
「え、なんで……」
ルミナが動揺して立ち尽くしている。ゴーレムは太い腕をゆっくり振り上げて地面を殴った。
「まずい!避けろ!」
アルスが叫んだ。
割れた地面の固まりが高速で飛んでくる。やばい、ルミナが反応できていない。
「ちっ、しょうがない」
俺はルミナを押し倒して、なんとか攻撃を避けることができた。
「あ、ありがとう」
ルミナは顔が赤くなっている。
「集中しよう。あいつ普通のゴーレムじゃないよ」
「うん。ごめんね」
顔を赤くしたまま、立ちあがって服についた砂を払っている。
それにしても、水魔法が全く効いていない……ゴーレムを観察してみると薄い膜のようなものが体を覆っている。あれが魔法を防いでいるのか。しかし、水魔法が効かないゴーレムか。とてもC級クエストじゃないな。しかもあのサイズ……亜種なのか。A級クエスト並みかもな。
元々物理攻撃にはめっぽう強く、攻撃力も高い。ただ水に弱すぎる。それがゴーレムのはずだ。そのゴーレムが倍のサイズになり、唯一の弱点が消えた。
「まずいな……」
アルスもゴーレムの異常さに気づいているようだ。
アルスも元々はA級冒険者だ。A級のクエストは何度も達成しているはずだ。しかしそれはパーティーを組んでの結果だろう。普通三~四人のパーティーを組み、盾役、物理攻撃、魔法攻撃など役割を分け魔物を討伐する。A級の冒険者でもソロで達成できるのはせいぜいB級までだ。
アルスの決断は早かった。子供達を間違っても死なせるわけにはいかないという判断だろう。
「逃げるぞ、撤退だ」
「「はい!!」」
俺達はゴーレムに背を向け走った。
攻撃してこないかとゴーレムの様子を窺いながら走っていると、手を合わせている。何をする気だろうか。すると合わせていた手を離して、前方にかざした。すると逃げている方向に巨大な土の壁が出現し、ゴーレムと俺達を土の壁で囲った。
「なるほど、逃がすつもりはないってことね」