イグナイトギルドへの道
「おいしいぃぃぃ」
ルミナは頬を食べ物で膨らませて、幸せそうな顔でトマット料理を頬張っていた。ルミナは鶏肉をトマットで煮込んだ料理を頼んで、俺とシャルルは麺の上からトマットで作ったソースをかけたものを頼んだ。いつも通りルミナの量は尋常ではなかったが、シャルルも慣れたのか何も言うことはなかった。どちらの料理も見た目は真っ赤で、ブランで食べた激辛料理を思い出して怯んだが、シャルルがおいしそうに食べるのを見て安心した。一口食べると、トマットの甘酸っぱさと香りが口いっぱいに広がる。確かにうまい!
「ほんと、おいしいですね。初めて食べました」
「だね~。トマットってプラシアでは売ってないもんね」
「ですね。気候が合わないんですかね」
プラシアの気候は一年中過ごしやすい。暑くもなく寒くもない。ロッソは正直暑くてジメジメしている。暑いの苦手なんだけどな……まぁ寒いのも苦手なんだけど。
俺達はほぼ同時に食事を食べ終わり、次こそギルドへ向かうことにした。
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三十分後……
「ねぇ、シャルルまだ着かないのぉ?」
「シャルル、もう結構歩いたから休憩しないかぁ?」
「きっともう少しですよ。頑張りましょう」
きびきびと前を歩くシャルルに俺とルミナはダルそうについて行っていた。サンドラも十分暑かったがロッソはそれ以上だ。更にずっと歩いているせいか、体温もどんどん上がっているような気がする。汗が止まらない。しかしシャルルは元気だな。ルミナでさえへばりかけてるのに。まぁ、さすがにそろそろつくだろうから頑張ろう。
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更に三十分後……
「ねぇ、ねぇ、シャルル。本当にこの道で合っているの?」
「シャルル、迷ったんじゃないのか? 大丈夫? シャルル?」
「いえ、大丈夫です。あとはこの道を真っ直ぐ行くだけです。そろそろつきますよ」
シャルルは相変わらず元気良く笑顔だ。俺とルミナは……もう駄目かもしれない……長時間歩くのは体力的には問題ない。ただこの暑さ……汗が気持ち悪い……ボーとしてくる……だが、あとは真っ直ぐ行くだけらしい。それを信じて進むのみだ。頑張ろう。
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更に……
「ねぇ、ねぇ、ねぇ、シャルル。怒らないから迷子なら迷子って言っていいのよ」
「そうだよ、シャルル。シャルルだって間違う時ぐらいあるよ。ドンマイ、シャルル」
「…………」
もうどれぐらい歩いただろうか……全くギルドらしき建物が見えない……これまで元気だったシャルルも俺達の問いかけに応えなくなってしまった。流石に疲れたのか? しかし歩くスピードは全く衰えずどんどん前に進んでいく。
「ねぇ、シャルル?」
「…………」
「なぁ、シャルル?」
「…………」
「「ねぇ(なぁ)、シャルル?」」
俺とルミナが同時に話しかけた瞬間、前を歩いていたシャルルが急に足を止め、振り返った。
「うるさぁぁぁぁぁぁぁぁぁい」
「「えっ??」」
「さっきから大丈夫って言ってるじゃない! 私だって暑いし、汗べたべたでイライラしてるの! それなのにねぇねぇとか、シャルルシャルルとか、うるさい、うるさぁぁい! それに私が道に迷うわけないじゃない! そんなに不安なら自分で誰かに道を聞けばいいじゃん」
真っ赤な顔でハァハァ言いながら持っているハンカチで汗を拭っている。俺達はシャルルの変わりように茫然としていた。え? 怖い……シャルルは普段敬語で話してくるので、怒ったときのギャップがすごく強烈だ。
「ご、ごめんね、シャルル。私、シャルルの事信じてるよ」
「う、うん、そうだね。確かにシャルルが迷うとかありえないよね」
慌ててフォローすると、シャルルは機嫌がなおったのか、悪いものを吐き出して自分を取り戻したのか分からないが、何事も無かったかのように再び笑顔に戻り、
「いえいえ、分かってくれればいいんですよ。でも確かに遠いですね。ちょっとその辺の人に聞いてみます。ちょっと待ってってください」
と言って、近くの雑貨屋に入っていった。
「……ルクス、あんまり怒らせないようにしようね」
「……そうだね。怖かったね……」
「う、うん。あっ、戻ってくるよ」
シャルルは足早に戻ってきた。よかった、まだ笑顔だ。きっといい報告だろう。
「よかった。やっぱり道は合っていました。もう少し真っ直ぐ歩いていったら、イグナイトギルドっていう看板を掲げた建物が見えるらしいです」
「そっか。じゃあ頑張って歩こうか。着いたら少し休憩しよう」
気を取り直して俺達は再び歩き出した。もう少しという言葉に若干の不安を覚えながら……
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三十分後……
「ふぅ、やっと着きましたね」
「う、うん。私早く座りたい」
「俺も……それと冷たい飲み物」
予想通り少しの距離ではなかったが無事イグナイトギルドに着くことができた。それにしてもこの町広すぎだ。ブランの何倍もあるんじゃないのか。




