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新しい剣

「おはよう、ルクス」


「お、おはよう」


 ルミナと初めてキスをした次の日の朝、いつもと変わらない朝の笑顔だった。憂鬱な朝もこの笑顔があれば晴れやかになる。


「じゃあ、早く武器屋に行きましょう」


「まだ朝だぞ。とりあえず朝飯食べてゆっくりしようよ」


「ご飯なんかよりはやく新しい雪華が見たいの」


「だからまだできていないかもしれないだろ。昼前に来いって言っていたし」


「そ、そういえばそんなこと言ってたわね」


 急かすルミナをなだめる。お預けを食らってルミナは口をとがらせていた。しかしルミナに朝飯よりも優先するものがあるなんて……よっぽど新しい剣が楽しみなんだな。


 ちゃっかりといつも通りルミナは朝飯を平らげた。


「ご飯なんかって言った割には、いっぱい食べたな……」


「えっ、普通じゃない? いつも通りだよ」


 そうだね。いつも通りだね。朝からご飯三杯に、肉に麺によく食べたね。


「少し早いけど、お腹もいっぱいになったし行きましょう。もしかしたら早くできているかもしれないし」


 少し早いって、あと正午まで二時間ほどあるけどな……まぁ、できてなかったら待てばいいか。


「そうだな。俺も楽しみだし行ってみるか」



「よう、坊ちゃん。早かったな、もうできているぞ」


 店主はそう言って二本の剣を並べる。デザインは特に大きな変化は見られなかったが、確かに刀身が以前の剣よりも長く作られている。


 俺とルミナはほとんど同時に剣を手にした。


 ルミナは手にした剣を軽く振っている。空気を割く音が、達人の域であると感じさせる。店主もその姿に目を見張っているようだった。


 俺もじっとルミナを見ていた。まぁ俺の場合は店の物を壊してしまわないか心配していただけなのだが。


「うん、これならいける。凄く扱いやすい」


 雪華をじっと見つめていたかと思うと、静かに鞘に納めた。納得のいく出来のようだ。


「ありがとうございます。こんないい剣にしてもらってホワイトクイーンも喜んでるみたいです」


「「え?」」


 ちょっと待て……今なんて言った?


 店主も思惑いながら尋ねた。


「お嬢ちゃん……今のホワイトなんちゃらってのはなんだ?」


 ルミナは自信満々に答えた。


「この子の名前に決まってるじゃない。新しく生まれかわったから名前も変えたのよ。ちなみにルクスの剣はブラックキングね」


 相変わらずのネーミングセンスだな……王子が王様に変わっただけじゃん。


 だがまずい! 今回は相談も無しに名前を決めてしまっているようだ。何とかしないと……俺がどう修正しようかと悩んでいると店主が救いの手を差し伸べた。


「お嬢ちゃん、その名前は止めときな」


「え? なんでですか?」 


「昔な、ある国にホワイトクイーンと呼ばれる女王がいたんだ。その女王はブラックキングと呼ばれる他国の王に恋をした。しかし、他国の王に恋するなど許されるわけがない。そのことが明るみになった女王は処刑され悲恋に終わったんだ。だからその二つの剣にそんな名前を付けると不吉でな」


 そんなあり得ない話をしながら、店主は俺に向かって片目をつぶって合図する。


 おいおいおい。そんなこの場で作ったような話、誰が信じるんだよ。ルミナだってそんなバカじゃないは、ず?


 ルミナを見ると、ホロリと一粒の涙が流れるのが見えた。ま、まさか……


「そんなことがあったのね。可愛そうに……確かにその名前にするのは止めておいた方がよさそうね。ねぇ、ルクス。どうしようか?」


 涙を手で拭いながら俺を見る。まじか……信じちゃったよこの人。バカなのか……いやいや、きっと純粋なんだろう! うん、きっとそうだ! 自分の彼女がバカなんて信じたくもない。


 それにしても店主の機転によってチャンスが巡ってきた。ここで何も答えないと、また変な名前を付けられてしまう。しかし今日は何も浮かんでこないぞ。しょ、しょうがない。


「俺は別に名前は変えたくないな。輝夜と雪華って名前にも愛着があるし。どうしても変えたいって言うなら真・輝夜、真・雪華って感じでいいんじゃないか」


 さすがにこれは苦しいか……


「そうね。確かに愛着もあるわね。じゃあ今回もルクスの意見を採用しましょう」


 おぉ、納得してくれた。もしかしてルミナって人の意見に左右されやすいのかな。


「よかったな。いい名前が決まって。おっ、そういえばロンズがまだ両方残っているんだ。持っていけ」


 店主は俺達の前に二つの鉱石を並べた。持ってきた半分ほどは使っているようだが、まだかなりの量が残っていた。


「これは差し上げます。この剣の代金代わりに貰ってください。いいよね、ルミナ」


「もちろん。おじさんにはすごくお世話になったしね。是非貰ってください」


「おじさんって……しかしこれを売ると結構な額になるぞ。いいのか?」


「そもそも始めにそんな高価な剣をくれたのはおじさんですよ。貰いっぱなしじゃ俺達も気を使いますよ」


「坊ちゃんまでおじさんって……じゃあ遠慮なく貰ってやる。もし剣が欠けたりしたら持ってこい。これを使って直してやる。まぁ、その剣が欠けることなんてないだろうけどな」


 俺達におじさんと言われ若干落ち込んでいるようだ。見た目はおじさんそのものだが、実はまだ若いのだろうか。


 そして、おじさんに別れを告げ、シャルルの待つギルドへ向かった。

最近、更新遅れ気味ですいません。少しでも早くあげれるよう頑張ります。すいません。

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