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シャルルの気持ち

 エドゥーとバルトの殴り合いは五分ほど続いた。お互いノーガードで殴り合っていたので、二人の顔はみるみる内にボゴボコになっていった。


 そして……


「よっしゃー、俺の勝ちだな。プラシアに帰るぜ」


 最後はバルトの渾身のアッパーカットがエドゥーの顎に直撃して、大の字に倒れた。


「ち、ちくしょう。一日に二回も負けるとは……」


 殴り合いだけの実力でもエドゥーが上かと思っていたが、俺との戦いのダメージも残っていたのだろう。


 俺としてはグレイブに挑戦してもらいたかったのだが……まぁ仕方ない。そのうち挑みにいくだろう。


 バルトもさすがにダメージが大きいのか、その場に座り込む。


「と、いうことで俺達もプラシアに帰るけど、見ての通りボロボロなんで休んで出発するな。シャルル達は先に帰ってな」


「じゃあそうさせてもらおうかな。ルクスさんは今後の予定は決まってるんですか?」


 あぁ、そういえばまだ話してなかったな。同じパーティーになったからみんなで再確認しないと。


「うん、一応決まってるから帰りの馬車で話すよ」


「はい、わかりました」


 そして俺達三人は、エドゥー達と別れプラシアに向かった。


 馬車の中の席は、俺とルミナが並んで目の前にシャルルちゃんが座っていた。この馬車は並んで三人座れるから両手に花というのも味わってみたかったが、やっぱり俺はルミナを大事にしたい。


 馬車の中ではルミナが積極的にシャルルちゃんに質問している。


「シャルルさんはやっぱり魔法が得意なんですか?どんな魔法使うんですか?」


「そうですね。後方から魔法で援護するのが私のスタイルです。接近戦は全く駄目だから……使う魔法は主に上級ですね」


 確かにシャルルちゃんが接近戦をしている姿なんて想像できない。つばぜり合いなんてしたら簡単に飛ばされそうだ。


 しかし二人の会話を聞いてると、お互い敬語で話してるな。もう職員と冒険者の間柄じゃないんだし……よし。


「ねぇ、二人とも。俺達はもう同じパーティーなんだし敬語とか使わなくていいんじゃないか? そんなんじゃ、今後言いたい事も言い合えないかもしれないし」


「私は別にいいけど、シャルルさんはいいんですか?」


「私も大丈夫ですよ。でも職員としての癖が抜けないかもしれませんが、頑張ります」


 二人とも賛成のようだ。


「よし、じゃあ決まりね。これからよろしく」


「元々ルクスはシャルルさんに対して敬語とか使ってなかったじゃない。あっ! さん付けも無しでいいよね。そっちの方が仲間って感じだよね」


「そうですね。シャルルって呼んでいいですよ、ルミナ」


「ありがとう、シャルル」


 二人とも楽しそうに笑みを浮かべている。うん、仲良くやれそうだな。シャルルは敬語がまだまだ抜けないみたいだけど。まぁいいか。


「ルクス!」


 さっきまで笑っていたルミナに急に凄まれた。なんかしたか、俺……


「な、なに?」


「ルクスもちゃんとシャルルって呼んであげなさいよ。ちゃん付けしたら私も許さないんだからね」


 あぁ、そういうことか。あんまり自信ないけど、ルミナの目がほんきだ。頑張ろう……


「わ、わかってるよ。これからよろしくね、シャルル」


「う、うん。よろしくおねがいします、ルクス」


 シャルルは照れているのか伏し目がちになっている。


 俺とシャルルのやり取りを見てルミナも満足そうに頷いている。


 そしていきなりルミナが爆弾を放り投げた。


「ところでシャルルは好きな人とかお付き合いしてる人とかいるの?」


 突然の口擊でシャルルは目を挙動不審になり冷静さを保てなくなっている。


「えっ! どうしたんですか、いきなり。わたし? 私にはそんな人いませんよ」


 シャルルは否定するが、ルミナが止まらない。


「ほんとに? 実は近くに好きな人がいるんじゃないの?」


 その言葉で、シャルルの顔がゆでダコのように赤くなる。


「な、な、なんで……」


「ふふん、そんなの見てればわかるわよ」


 ルミナは腕を組んで得意気だ。それに比べ俺はもうシャルルを見ていられない。


「見てればわかるか……駄目だな、私。彼には相手がいるのに」


 シャルルは一人で呟くような小さな声で話す。その声は全てを諦めたような声だ。


「エドゥー……」


「「えっ??」」


「エドゥー、さようなら。ランカーなれるといいね」


 シャルルの頬から涙が流れている。しかし、涙などお構い無しに焦ったルミナが確信をつく。


「ちょ、ちょっと待って。シャルルの好きな人ってエドゥーなの?」


「えっ? さっき見てれば分かるって……」


「えっ、あっ、へ? ほんとに?」


 ルミナの動揺が半端ない。それはそうだろう。俺も予想外過ぎて何も言葉が出てこない。


「え? 誰と思っていたんですか?」


「私はてっきりルクスのことを好きなのかなって」


 うわぁぁぁぁ、この状況で言わないでくれぇぇぇぇぇぇ!


「えぇぇぇ! なんで? 全然違いますよ」


 そして全力で驚かれて、全力で否定された……


「いや、だって、私と付き合ってるって聞いて悲しそうにしてたかなって……」


「うーん、それは可愛がってた弟が他の女の所に行ってしまった的な感じですかね。息子をとられたお母さん的なものとも似てるのかな。確かにルクスは格好いいし、強いけど私のタイプとは違いますね」


 うん、これ、完全に俺とルミナの勘違いだ。


「そ、そうなのね。じゃあ何かエドゥーと引き離したりして悪いことしちゃったのかな」


「それは大丈夫です。私も諦めるために今回のクエストでパーティーから抜けなきゃって思ってたから。むしろ入れてくれて感謝してます」


 シャルルは笑顔に戻っている。せめて感謝してくれているのは助かる。ただ好きな人の元から引き離しただけなら悪者そのものだからな……


 ほんと俺、ピエロだな……



 





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