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シャルルちゃんをかけて?

 朝になり、俺とルミナが準備を終え外にでると、すでにシャルルちゃんは族長に別れの挨拶をしているようだった。


 ちょうど話が終わったようで、俺の方に振り返る。


「あっ、ルクスさん、ルミナさん、おはよう」


「お、お、おはよう」


「おはようございます、シャルルさん」


 昨日ルミナとあんな話をしたせいか、緊張してまともな挨拶にならなかった。ルミナから肘で軽く押されてしまった。妙に恥ずかしくなり俺も肘でルミナを押し返す。


「ふふふ、仲が良いんですね」


 シャルルちゃんに、笑われてしまった。


「おーい、シャルル。そろそろいくぞー」


 二人組の男がシャルルちゃんを呼びながらこちらに向かって歩いてきた。二人とも俺よりも一回りも二回りも大きく筋肉モリモリの男だ。


「紹介するね。今、私とパーティーを組んでるバルトとエドゥーよ。二人とも私と同じC級よ。あっ、でも今回のクエストでみんなB級かな。こちらはルクスさんとルミナさん。みんな知ってるよね」


 シャルルちゃんが紹介してくれたバルトは、金髪短髪でバンダナを巻いており、エドゥーは長い黒髪をなびかせている。


「おー、君たちが噂の疾風迅雷か。噂は色々聞いてるよ。ばか強いらしいじゃないか。よろしくな」


 バルトがニカッと笑って握手を求めてきたので、


「よろしくお願いします」


 と素直に受けた。だいぶ年上に見えるが人の良さそうな人だ。そのままエドゥーにもこちらから握手を求めたが、何も声を放つことなく腕を組んだままで軽く頷くだけだった。


「あーこいつ無口なんだ。気にしないでくれ」


 と言いながらバルトが俺をじっと見ている。いや、俺というか俺の手を見ているのか?


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁー」


 バルトが俺の手を指差しながら叫んだ。


「そ、そ、それはもしかして、噂に聞くランカーの証じゃないのか。しかもⅣって。すげぇ」


 おぉ。王都では誰も知らなかったこの腕輪をプラシアの冒険者が知ってるとは意外だな。普段は念のため袖の中に隠して見えないようにしてたのだが握手をして少し捲れてしまったようだ。シャルルちゃんも今気づいたようで、驚きの表情をみせている。


「ほんとだ。昨日は暗くて気づかなかったけど、間違いなくランカーの腕輪よ。すごい、まさかこんな若さでランカーになっちゃうなんて……」


 おぉ。シャルルちゃんまで……やっぱ有名なんだな、この腕輪。王都はグレイブのせいで浸透してなかったんだな。


「おい、ランカー」


 うわっ、ビックリした。今まで一言も話さなかったエドゥーがいきなり凄い形相で口を開いた。


「は、はい。な、なんでしょうか……」


「俺とランカーをかけて戦え」


 でた!この展開!!これが嫌でランカーにはなりたくなかったんだ。今まで誰からも挑まれなかったのがおかしかったんだ。でも俺の返事は決まっている。


「いやです。遠慮しておきます」


 予期せぬ展開だったのかエドゥーはさらに睨みを効かせる。


「なぜだ」


「だって面倒だし、戦うメリットなんて俺にないし、シャルルちゃんのパーティーを倒すの気が引けるし……それに冒険者同士は勝手に戦かったら駄目じゃないんですか?」


「シャルル、たしかランカーにそのルールは適応されないよな」


「うん、それは大丈夫だけど……」


 そうなの!?ほんと最悪だ……この腕輪……


「とにかく、俺はやらないよ。王都にグレイブっていうランカーいるからそっちに挑みなよ」


「どうしても駄目か」


「うん、駄目」


 エドゥーは表情には出さないが落ち込んでいるようだ。まぁいきなり襲ってくるわけじゃないから、悪いやつじゃないんだろう。と思っていたら、黙っていたルミナがいきなり口を開いた。


「わかった!!」


 皆がルミナを見る。なにがわかったと言うんだ?


「ルクスは戦うメリットがあればいいんでしょ?じゃあルクスが勝ったらシャルルさんを私達のパーティーに移籍させてください。エドゥーさんが勝ったらランカーになれる。これでどう?もちろんシャルルさんがよければだけど……」


 そういうと、ルミナはシャルルちゃんをじっと見ている。


「わ、わたしがルクスさん達と?駄目だよ、私弱いから足引っ張るだけだよ。だめだめだめだよー」


「いや、そんな弱くないだろ。少なくとも俺よりは強ぇじゃん」


 バルトが否定する。シャルルちゃんがこの筋肉バルトより強いのか。意外だ。シャルルちゃんはどんな戦いをするのだろうか。


「もう!それは、バルトが弱すぎるだけだよっ」


「ぐはぁぁ」


 シャルルちゃんの精神攻撃でバルトは胸を押さえて、膝をつく。確かに口擊力は強そうだ。シャルルちゃんに弱すぎと言われたたら大概の男は、ああなるだろうな。


「シャルル……」


 エドゥーが真剣な顔でシャルルの前に立ち頭を下げる。


「頼む。今お前に抜けられるのはパーティーとしては痛い……けど俺はどうしてもランカーと戦ってみたいんだ。なんとか条件を飲めないか」


「もう、しょうがないなぁ。元々私が強引にパーティーに入れてもらったわけだしね。エドゥーがそういうなら任せるよ。簡単に負けないでよ」


 それを聞いたエドゥーは軽く笑みを浮かべ顔を上げた。


「よし決まりだ、やるぞランカー」


 俺は一切何も言ってないのに戦うことが決まってしまったようだ。でもシャルルちゃんがパーティーに入ってくれるのは少し嬉しいかもしれない。正直シャルルちゃんへの気持ちはハッキリ分からない。一緒に冒険すればきっと見えてくることもあるだろう。


 でも勝ったら女の子を貰うとか、すごく悪役っぽいんですけど。まぁシャルルちゃんも了解済みだから大丈夫かな。もし、ほんとに嫌だったら返してあげればいいし……


 エドゥーがなんであんなにランカーと戦いたいのか知らないが受けてやろう。ほんと面倒くさいよ、この腕輪……

 

 あー、エドゥー腕をグルグル回してやる気満々だな。しかしどうやって倒そうか……あんまり傷つけたくないから首トンで、気絶させるかな。


「ルクスー、頑張ってー」


 ルミナから黄色い声援が飛んでくるので、俺は手をふって答える。


「エドゥーも頑張ってぇー」


 エドゥーはシャルルちゃんから声援を受けている。べ、べつに、う、うらやましくないし!!

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