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シャルルちゃん捜索

 俺とルミナは馬車を借りてフォールズの森へ向かっている。今のところは順調で問題は何もない。あと数時間で到着するだろう。


「ルクス、きっと大丈夫だよ。シャルルさんがC級の冒険者になっていて今B級を受けているって聞いたのにはビックリだけど、シャルルさんが無理なクエスト受けるわけないよ。きっと勝算が大きいから受けたと思うし。それにキングライオンは力は強いけど、魔法も使わないしB級にしては弱い魔物だよ」


 たしかにキングライオンは俺達にとっては余裕で討伐できる。ルミナ一人でも一振りで終わらせることができるだろう。だが俺にはどうしても信じられなかった。あのシャルルちゃんが冒険者で既にC級になっていて、今B級を目指そうとしている……あの可愛くて小さなシャルルちゃんが戦えるのか。それに……


「俺もキングライオンは大したことはないと思うけど……ただサンドラや、ガザンのようや変わった魔物が現れた可能性もある。もしそうだったらS級ぐらいの実力がないと危ない」


「そうだね……でもきっと大丈夫。大丈夫だよ」


 ルミナはそう言うと祈るように目を瞑り、両手の指を組合わせていた。俺は馬車が向かう先を早く着いてくれと真っ直ぐ見ていた。


 俺とルミナは呆然となった。走っている馬車からフォールズの森が見えてきたのだが、目の前には広大な森が広がっていた。


「この中からシャルルちゃんをさがすのか……」


 俺はそのあまりの難易度にボソッと呟いてしまった。


「でも、こんなに広いんだったらシャルルさんもキングライオンを探すのに時間がかかってるだけじゃないかな」


 ルミナは俺を励ますように声をかけてくれる。


「そうだね、とりあえず探すしかない。いこう」


 俺とルミナは馬車を降りて、森に向かって走り出した。


 三時間程森の中を探し回っただろうか。森は平和そのものだ。動物達は自由に歩き回り、鳥は囀ずり、植物も豊かに生い茂っている。とても狂暴な魔物が暴れているようには見えない。それだけこのフォールズの森が広いということだろうか。


 そのうち大きな川が見えてきた。


「ルクス待って。ゴメンね。少し休憩しましょう。疲れちゃった」


 そう言われてルミナを見ると、大量の汗をかき、肩で息をして、顔には疲労の色が見える。しまった……シャルルちゃんを探すのに必死でルミナのことを見てなかった。全力で探し回っていたから、ルミナも必死で付いてきたのだろう。


「いや、俺の方こそごめん。ちょうど川もあるし、少し休もう」


「ありがと」


 ルミナは笑顔でお礼を言うと、川の方へ向かっていった。俺は近くの木に背中を預けて座り込んだ。これだけ探しても手掛かりすらないなんて……一体どこにいるんだろうか。少なくとも戦闘中ではないだろう。もし戦っていれば、魔法などで大きな音が出るはずだから、こんな静かではないはずだ……それに、もうすぐ夜になる。わざわざ魔物と夜に戦う冒険者はそうそういない。とりあえすこれから戦闘が始まることはないだろう。既にやられていなければいいのだが……


「キャャャャャャーー」


 そんなことを考えていたら、ルミナの叫ぶ声が聞こえた。まさかキングライオンが現れたのか。それとも別の魔物か。俺は急いでルミナの元に急いだ。


 が、ルミナの近くには何もいなかった。


「どうしたんだ、ルミナ。何もないじゃないか」


 俺がそう言うと、ルミナは震えながら地面を指さした。俺がその指の先を見ると、虫がいた。またムカデだ。たしかドラゴンに会いに行くときも叫んでたな。


「もしかしてこれ?」


 ルミナはコクコクと首を縦に降っている。


「はやくどっかやって!!」


「どっかやってって、触ったらまた手を繋いでくれなくなるだろ?」


「だ、大丈夫。洗えば……たぶん大丈夫」


 俺はハァとため息をついて、二本の指で摘まんで遠くに投げた。そして川で手を丁寧に洗った。そして握手を求めるようにルミナの前に洗った手を出す。


「えっ、なに?」


「なにって、握手だよ。洗えば触れるんだろ」


「ちょ、ちょっと待ってよ。ほっ、ほらいきなり握手なんて恥ずかしいし。それにもっと風化させてからじゃないと……」


「こんな森の中じゃ誰も見てないよ!!それに風化って何だよ!!もう綺麗に洗ったから何も変わらないよ!!やっぱり、嫌なんじゃん!!」


 俺が正論をいい放つと、ルミナは何も言えなくなり、


「むぅぅぅぅ」


 と言って頬っぺたを膨らませる。しかし今日の俺はそんな可愛い顔をされても許さない。俺のスピードを生かしてルミナの手を掴み勝手に握手する。さすがに俺の全力のスピードにはルミナも反応することはできなかった。


 一瞬の出来事にルミナは呆然としていたが、目の前で俺と握手しているのに気付くと、手がプルプル震えてきた。やっぱり怒るよね。またビンタかなぁと思っていたが、予想外の展開になった。


「うわぁぁぁぁぁん、ルクスのバカァァァァ」


 なんと泣き出してその場にしゃがみこんでしまった。そんなに嫌だったのか。なんか泣かれてしまうとすごく悪いことをしてしまった気になる。握手しただけなのに……


「ルミナごめん、少しやり過ぎた。そんな嫌だって思わなかったんだよ。だから泣き止んでよ」


 ルミナはそれでも泣き続けていた。めんどくさい……こんなことなら嫌がらせなんてしなきゃよかったよ。


 

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