C級クエスト前夜
「いやー食った、食った」
アルスは大きく膨れた腹をさすりながら満足しているようだ。ギルド職員の奢りだからってこんなになるまで食べなきゃいいのに。ただでさえ、最近太りぎみだというのに……
「ルクスはもういいのか?いっぱい食べないと大きくなれないぞ」
「もうお腹いっぱいだよ。ご馳走様でした」
ほんとはもっと食べたいが、子供の体ではすぐ食べられなくなる。食事はとても美味しかった。特に名産のマンゴンは甘くて絶品だった。アメリアにもお土産として持って帰ろう。
「よし、明日はいよいよゴーレムの討伐だな。まぁ、ルクスが本気でやれば大丈夫だろう。俺はサポートに回るからな」
アルスは何かに勘づいているようにニヤリと笑みを浮かべていた。
やっぱり今まで本気だしてない事に気づいているな……と察しながらも、
「ゴーレムは初めてだから、少し怖いなぁ」
と怯えてみせた。
「まぁ弱点も分かっているし、所詮はC級だからな。ルクスなら大丈夫、大丈夫。今日は早めに寝て、明日の朝出発だ」
「うん、わかった」
アルスの言う通りに、今日はいつもより早く寝ることにした。ここ三日間移動で野宿だったこともあり、フカフカのベッドですぐに寝付くことができた。
次の日の早朝、窓から差し込む朝日の光で目が覚めた。スッキリした良い目覚めだ。隣ではアルスがイビキをかいて気持ちよさそうに寝ている。
「お父さん、起きて!ゴーレムの討伐いくんでしょ」
「うーん、あと五分……」
全くどっちが子供なんだか。
結局あと五分を繰り返し、三十分経ってようやくアルスも目を覚ました。
「いやーすまん。昨日緊張して中々寝付けなくてさ」
「お父さん……昨日僕より早く寝てイビキかいていたよ」
「……すいませんでした」
気を取り直して、装備や持ち物を確認して宿を出発した。この国はとにかく暑い。しかもオアシスは四十度を越える砂漠の中にあり、歩いて三時間ほどかかるので、大量の飲料水が必要となる。魔法で水を出すことはできるのだが何故か飲料水には向かないのだ。高確率で腹を下してしまう。
そこで先に飲料水を購入するため、道具屋に向かった。
「一本で千ピアかぁ、相場の十倍だな」
アルスが水の入った瓶を持って驚いている。
「申し訳ございません。オアシスからの水が少なく価格が高騰しているんですよ」
店主も困っているようだった。
「しょうがない、では八本くれ」
「まいどあり」
片道1人1本あれば足りるだろうが.道中何があるか分からない。クエストに挑むときは多めに準備しておくのが常識だ。
お互い四本ずつボックスの中に入れ、町を出ようとした時後ろから声をかけられた。
「すいません、私も連れていってください」