やることいっぱい
総合ポイント1000越えました。読んでくださる皆様のお陰です。ほんとうにありがとうございます。
「そう、学校だ。私が校長を勤める学校がブライトという国にある。そこでは魔法について学ぶことができる。もちろん剣術だって学べる。魔法は奥が深い。きっと役に立つし、君達ならばきっと回復魔法を習得することができるだろう」
なるほど……たしかに俺はこの世界のことをなめていたかもしれない。最近は知らないことも増えてきた。一度学校へ行って一から学ぶべきかもしれないな。でもなぁ、やることいっぱいあるんだよなー。でも回復魔法は絶対使えるようになりたいしなー。
「ルミナはどう思う?」
俺だけで決められる問題じゃないからな……
「私、いきたい。そこへいけば私はもっと強くなれる気がする」
即答だった。
「でも……ロッソに行かなきゃだよね?」
ルミナは困ったように俺を見る。
そうなのだ。ドラゴンのためにロッソへ行く約束をしているのだ。
「ん、ロッソ?なんの話だ?」
ここまで存在感の薄くなっていたグレイブさんが聞いてきた。
「いえ、グレイブさんに頼まれた依頼なんですけど」
「あぁ、そういえばまだ内容を聞いてなかったな」
「はい。まぁ話せば長くなるんですが……………ってことで、ロッソへ行きたいのです」
俺はドラグーン山脈で起こったことを事細かに説明した。
「ふむふむ、ルミナさんがドラゴンの主になったのか。すごいじゃないか」
えっ、そこ?ロッソは?
「そうなんですよー、なんか流れでそうなってしまって。でも私はセラさんに負けたので、新しい主はセラさんですね。ドラゴン達をよろしくお願いしますね」
「ちょっと待って、そんな勝手にお願いしないで。絶対無理。あっ、その後ルクス君に負けたからルクス君が主だな」
「やっぱり一番強い奴が主をするものだよな」
グレイブさんまで俺を主にしようとしている……ってか、
「主の話はどうでもいいんですよぉーーー」
つい大声をあげて立ち上がってしまった。いかんいかん、冷静にならなければ。みんなが驚いた表情で俺を見ている。
コホンと咳をして、ゆっくり座りなおす。
「ということで主の話はいったん置いといて、俺達はまずロッソへ行かないといけません。すぐに学校へ入学することは無理なんですよ」
相手はドラゴンといっても約束は約束。早く魔法を覚えたいが、無視するわけにはいかない。
「それなら心配しなくていい。学校の入学式まで約100日はある。それまでに解決してきなさい。入学試験は免除しとくから。実力は十分に分かったからな」
おぉーそれは助かる。やっぱり俺は運がいいんだな。都合のいいように物事が進んでいる気がする。
「ありがとうございます。必ず間に合わせて見せます」
「あぁ、楽しみに待ってる。ではそろそろ私は帰るとしよう。最近は不思議なくらい平和だしな。とりあえず今はこの国も大丈夫だろう。何かをあったらまた呼んでくれ」
セラさんはそう言って扉の前までいくと、何かを思い出したかのように振り返り、俺の元に戻ってきた。そして握手を求めるように手を差しのべてきた。セラさんはじっと俺の目を見ている。なんだろうと思いながらもセラさんの目を見ながら握手に応じた。その瞬間、セラさんがニコッと笑った。
カチッ!!
ん、なんだ?今の音。それに腕に冷たいものを感じた。目線を手に向けるとⅣと書かれた腕輪が俺の手に巻いてあった。
「な、なっ、なっ、なんで」
「やっとランカーから解放された。ルクス君に負けたときに腕輪が外れたんだ。きっと普通に渡しても君は受け取らないと思ってな。うまくいってよかったよ。では頑張ってくれ。じゃあ」
そう言うと、そそくさと帰っていった。俺はあまりの出来事に呆然としてしまった。
「よかったね、ルクス。とうとうランカーだね。おめでとう。あとは一番目指していくだけだね」
パチパチと拍手している。
「よくないよ!俺はランカーとかなりたくないの!!こんな腕輪してたら邪魔だし、目立つよ」
「えーなんでー?格好いいよ?」
「かわいそうに……これで日々ランカーを目指す冒険者から狙われる生活の始まりだな……」
グレイブさんも同情の眼差しを向けてくる。
「ルクスなら大丈夫よね。挑んでくる敵なんて全部返り討ちよ」
そんな生活嫌だ……俺は本来安定した生活を送りたいのだ。最近は忙しいけどルミナとの冒険は楽しいから別に構わない。ただこれから毎日命を狙われる生活なんて耐えられない。
おもいっきり腕輪を引っ張ってみたり、愛剣の輝夜で切ろうとしても傷一つつかない。一体なんで作られているのだろう……この俺のステータスを持っても壊せないなんて……ほんとランカー作った奴すごいな。
「無駄だよ、ルクスくん。私も毎日挑まれる戦いに嫌気がさして壊そうとしたこともあるが無理だった。でも大丈夫。ひたすら敵を倒していけばいつか静かになるから。俺もギルマスになってからは結構平和になったし」
そんな……何かいい方法はないのか……負けたら勝手に外れるんだよな?それなら……
「ルミナ、ランカーなりたかったんだよね?今から俺と戦わないか?」
「えー私は別にランカーになりたかったわけじゃないよ?ただ今の自分の力がどれだけランカーに通用するか知りたかっただけだし。まぁ全然ダメだったけど」
「ルクスくん」
悲しそうな顔をして、グレイブさんが俺の肩をポンと叩く。
「ルクスくんの考えていることは分かるよ。わざと負けて腕輪を外すつもりだろ?残念だが諦めなさい。どういうわけか、わざと負けても腕輪ははずれない。おそらく本気で負けたとか、こいつには勝てないとか思わないとはずれないのかもな。俺もいろいろ試したんだが……はっきりとした条件は分からないままだ」
ちくしょう……なんてものを作ってくれたんだ。もし目の前にいたら一発殴ってやるところだ。