主の権限
「アニキ~、早くロッソへ来てくださいねー」
「待ってますからねー」
元誘拐犯、現俺の弟分の二人は手を振りながら去っていった…
俺達は弟分の二人と別れ、此れからのことを話し合った。
「とりあえず俺とルミナは一旦ブランに帰ります。一応、今所属しているギルドマスターにロッソに行く許可を得なければなりませんので」
「そうですか。やはり副主として留まって頂くことはできませんね」
黒龍はすでに諦めているようだ。
それは無理だよぉ。しかも副主ってなんだよ…そもそも人間がドラゴンの世界で住むなんて無理だよ。だいたい毎日何をして生きてるんだろ?このドラゴン達…
「そうですね。俺達にもやることがあるのですいません」
「主も一緒に行かれるのですよね」
「はい」
黒龍はそれを聞くとため息をついている。
「でもブランに帰る前に主としてやることがあります」
ルミナが真剣な表情で話している。ん?なんだろ?なにも聞いてないけど…
「な、なんでしょう」
「主になれば、ドラゴンの決まりを変えれるのよね。金龍が主になったら共存は辞めて人間滅ぼすって言ってたし」
「いえ、あっあれは…もう原因を断って頂いたので…今は微塵も主のお仲間達を滅ぼすなどは思っておりません」
金龍は怯えたように言い訳をしている。さっきの誘拐犯といい、金龍といい、恐怖で人もドラゴンも変わってしまうんだな…
「それで何を変えるのでしょうか?」
黒龍がルミナに尋ねる。
「私達を背中に乗せて、空を飛んでください!!」
なるほどー!背中に乗せて飛んではいけないって決まりがあるとかいってたもんな。
「そんなことでしたか。いいでしょう。今までは危険なので禁止にしてたのですが、主達ならその心配もないでしょう」
黒龍は思ったよりも簡単なお願いで安心したようである。
「ほんとに!やったー!!」
ルミナはほんとに嬉しそうだ。そんな乗りたかったんだな。まぁそうゆう俺も楽しみなんだが。
「では外に出ましょうか」
黒龍の背中に俺とルミナが乗せてもらう。真っ黒な大きな翼を羽ばたかせ、大きな体が宙に浮いていく。
「しっかり捕まっててくださいね。ではいきますよー」
黒龍がそう言うと、一気に空高く上がっていき、空を大きく旋回する。
「きゃーーすっごーーい。ルクス見てーさっきまでいた所があんな小さくなってるよー。あっ向こうには町が見えるー。人がちっちゃーい」
ルミナはテンションMAXといった感じではしゃいでいる。
「うっ、あぁす…ごいな」
「どうしたの、顔色悪いよ」
そう、俺は酔ってしまったのだ。
「ちょっと気持ち…わるく…て」
背中の上でそんなことが起こっているとはしらずに黒龍はルミナを楽しませようと急上昇や急降下を繰り返した。
「キャーーーー」
ルミナは叫んではいるが顔はすごく楽しそうだ。
俺はもう……限界だ。ごめんな、黒龍。
俺は黒龍の背中に容赦なくリバースした。
「キャーーーー、大丈夫ルクスー」
先ほどとは違うルミナの叫びが聞こえてきた。
黒龍も何か違和感を感じたのか、
「あのぉ……背中がなんか生温かいんですがなんかしました」
「ごめんね、ルクスが吐いちゃった」
「なっ!!」
………
赤いドラゴンが黒龍の背中を拭いている。
「ごめんな、黒龍。我慢できなかったんだよ」
「しょ、しょうがないですよ。私も調子に乗って飛び回ってしまいましたし」
そう言ってもらえると助かるよ…けどルミナがちょっと不機嫌だ。
「全く、ルクスのせいで台無しだわ。せっかくいい景色で気分もよかったのに」
ちょっとじゃないな…結構不機嫌だ…
「ごめんって。帰ったら何か奢るからさ」
「えっ、ほんと?じゃあ許す」
ちょろいな…しかしルミナは奢るって言ったらナンパでも付いていくんじゃないか?ちょっと心配だ…




