誰が主!?
「主よ、この度は数々の無礼申し訳ございませんでした」
金色と、銀色のドラゴンが頭を下げ謝っている。
「主よ、この者達の処罰はどういたしましょう」
黒龍が尋ねる。
だれに? 俺にだ!
「ちょっと待ってよ。主って俺の事? なんで?そもそも俺人間だよ?」
あまりに急な展開に頭がついていかない。
「あの戦いに勝った者が主になる。そう決めたはずですが。それに主になる者に種族は関係ありませぬ。主を倒した強き者がドラゴン族の主になるのです」
「いやいやいや、あくまでチーム戦でしょ。俺達が勝ったんだから黒龍さんが主をそのままやればいいじゃん」
「私はあの時そこにいる金龍に破れました。その時主は一時金龍に移りました。そしてその金龍を倒したのが主であります。それに私はもう年老いた。そろそろ若い世代に受け継がなければと思っていたのです、主よ」
「だから主って、呼ぶなぁぁぁぁ」
「もう諦めなさいよ。カッコいいじゃない。頑張ってね、ルクス。あっ間違った、主よ」
ルミナまでやめてくれ……とりあえずこの話は後にしよう。なぜ金色のやつが人間を滅ぼそうとしているのか聞いとかないとな。
「おい、金色のドラゴン。ひとつ聞いていいか?」
「金龍とお呼びくださいませ、主よ。はいなんなりと」
「主じゃないけどな。では金龍、お前はなんで人間を嫌っているんだ?」
「実は最近、人間により子供のドラゴン達がさらわれる事件が発生しているのです。離れて一匹や二匹でいるところを狙われ、生かしたままどこかへ連れていくようです。なので、人間の町へ行き、その者達を取り戻したかったのです。だが黒龍はもう少し調べてからだと。簡単に人間との共存を壊してはならないと言うので対立していたのです。主よ」
なるほどね。そりゃ仲間をさらわれたら早く助けにいきたいよね。
「だから主じゃないけどな。でも人間を滅ぼすことはなしだ。悪いのはそのさらった奴らなんだ。関係ない人を巻き込んじゃだめだ」
「はい、わかっております。少し我を忘れてしまっていたようです。反省しております、主よ」
「主じゃないって言っているだろ。何か手がかりはないのか?」
「その人間はロッソの方から来たという目撃者がおります。でも今のところそれだけです……主よ」
ロッソか……そういえば赤き竜もロッソの冒険者だったな。それに使っていた技もドラゴン固有の技、体もドラゴンのような皮膚をしていた。もしかして……それに今まで現れた普通よりも強い魔物達……一つの仮説が浮かんだが、確信は持てないので黙っておいた。
「主、主うるさいぞ。じゃあそのロッソから来た人間を捕まえるしかないな」
「えっ、どうやって? 我々も捕らえようとは考えましたが、いつ現れるか分からないので諦めて、捕まらないように子供のドラゴンは集団で行動するようにしたのです……主よ」
「だから主じゃねぇーって言ってんだろうがぁぁぁぁ。主、主うるさいんだよぉぉぉぉぉ」
「主は主なのです。諦めてください」
俺がキレても一切退く気がない……ほんとに諦めるしかないのか……
「ご、ごほん。まぁいい。とりあえず罠にかけようか」
「罠とは?」
罠も知らないのか……そりゃいいようにやられるわけだ。知能は人間より大分低いようだな。
「罠っていうのは、騙すってことかな。今回だったらわざとドラゴンを一匹で行動させて、俺が隠れて見張っておくんだよ。それでドラゴンを捕まえに来たところを俺が逆に捕まえるってわけだ」
「「「おぉーーー」」」
ドラゴン達から歓声が上がる。これくらいでそんな盛り上がらないでよ……
「いやー、さすが主だ」
「そうだな。私にはこんな良案浮かばなかったぞ。この主がいれば、これからのドラゴンも安泰だな」
しまった……また主として株を上げてしまったようだ……
「じゃあ時間ももったいないし、さっそくやろう。囮役は俺をここに案内してくれたドラゴンでいいだろ。アイツならさらわれても別にいいし」
後ろの方で聞いていた赤いドラゴンは慌てて前にでてきた。
「いやいやあかん、あかん。ちゃんと守ってぇな」
「おい、主になんて口の聞き方だ」
黒龍に怒られていた。俺達を騙した罰だな。主じゃないけどな。
「冗談だよ。ちゃんと守ってやるから安心しな」
「しかし気をつけてください。子供のドラゴンといえど捕まえるのは容易でないはず。主の強さは知っていますが油断されぬよう」
「わかっているよ。まかせときな」
「今回は私もやるわよ。最近出番少なすぎよ」
確かに今回は囮のドラゴン以外はここで待っていてもらったほうがいい。隠れることができる人間が適任だろう。もし相手が多かったらルミナの力も必要かもしれない……まぁ危なかったら本気だして守ればいいか。
「うん、じゃあよろしくルミナ」
「がんばるね、主よ」
「だから主じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
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