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C級クエスト

 ちなみにランクを上げるためには、現在のランクのクエストを十回以上達成したのちに、昇級試験として一つ上のランクに挑まなくてはいけない。失敗すればまた十回以上達成してからやり直しだ。

 昇級しできたとしても、連続で失敗すると降格する。厳しい制度である。だが冒険者を守る為には仕方のないことかもしれない。実際クエストで死んでしまう冒険者はかなり多い。ランクが上がるほどそのリスクは高くなるのだ。その分報酬は高くなるのだが。

 俺はⅮ級をすでに十回以上達成しているので昇級試験の条件は満たしている。しかし、D級とC級では難易度が格段に違うらしい。もちろんC級からB級でも格段に違う。C級からは冒険者でも選ばれた者しか達成できないのだ。そういった理由から冒険者はほとんどがD級に留まる。生活するにはD級を繰り返し達成するだけで十分だ。C級を受けるとアルスが言って、シャルルちゃんが心配したのも無理はないだろう。ちなみにC級以上の冒険者は全体の1割ほどしかいないらしい。

「C級かぁ、大丈夫かなぁ…」

 C級といっても俺にとってはデコピン一発レベルなのは変わらないだろうが一応心配な振りをした。

「ルクスなら大丈夫さ。いざとなったら、お父さんが付いているからな」

 拳で自分の胸をドンッと叩いて、ゲホゲホむせている。この人が一番心配だ……

「で、どんなクエストなの?」

「ゴーレムの討伐みたいだ。隣国のサンドラの砂漠に現れてオアシスに住み着いているらしい」

 ゴーレムとは石を積み重ねて作られたような巨人である。魔法は効きにくく、物理攻撃でも硬い石の体が邪魔をする。しかし弱点の水魔法を使えればさほど倒すのには苦労しない。弱点が無ければC級とは言わずB級、大きさによってはA級でもおかしくない魔物である。

 しかし、妙だな……水が苦手なはずなのになぜオアシスに……少し嫌な予感がした。

 険しい顔で思慮しているとアルスが、

「どうかしたか?」

 と顔を覗きこんできたので、

「サンドラかぁ、じゃあちょっとした旅行だね」

 と切り替えて明るく返した。サンドラまでは、馬車を使って三日はかかるのだ。

「旅行だと気を抜いていたら、ケガでは済まないぞ。道中では盗賊などもでるかもしれない。ゴーレムもゴブリンやスライムと比べると強さは桁違いだ」

 アルスが真剣に話してくれている。普通はそれほど危険なのだろうな。

「じゃあ今日は準備して、明日の朝出発だ」

「はい、お父さん」」

 この世界でアスール以外の国にいくのは初めてなので、少し楽しみになっていた。


 アルスと俺は馬車に揺られてサンドラへ向かっている。プラシアを出発してから、三日経っていた。ここまでは順調な旅となっている。

 サンドラはプラシアの同盟国であり熱帯の国である。熱帯地方でしか育たない果物のマンゴンが有名だが、それ以外には特徴のない国である。

 なので、わざわざプラシアからサンドラへ向かう旅行者はおらず、馬車にはアルスとルクス、それとマンゴンを買い付けに来たと言う若い商人の三人だけである。

「いやぁ、今回の移動は順調だなぁ。いつもなら一日三回は魔物や盗賊に出くわすものだが」

 アルスがそう言うと、若い商人はイヤイヤイヤという素振りを見せる。

 商人曰くたしかに、長距離の移動では魔物などの遭遇の心配はある。だからこそ、護衛をギルドに依頼するのだ。しかし実際は何事もなく目的地に着けることも多いらしい。一日三回も魔物や盗賊に襲われるのは単にアルスの運が悪いだけなのだろう。

 ちなみに今回の護衛は自分たちが冒険者ということで依頼していない。何かあったときは自分達が対処するとアルスが伝えると運賃を半分にしてもらえた。

 今回は自分の運のステータスのおかげで、平和だなと思っていたら、前方に十人程の人影が見えた。

「あ~やっぱりこうなったかぁ」

 いつもの事だというようにアルスは頭をかいている。どれだけ運悪いんだよ!

 二十メートルぐらい距離をとりアルスと俺は馬車を降りる。

「なにか用ですか~?」

 アルスが盗賊らしき集団に茶化すように話しかける。

「なにか用ですか~? じゃねーよ! 死にたくなければ、馬車と荷物と金全て置いていきな。そしたら見逃してやる」

 殺さないなんて、優しい盗賊だな……

「ルクス、対人戦は初めてだよな。大丈夫か?」

 とアルスが心配そうに話しかけてきた。

「うーん、初めてだけどたぶん大丈夫だよ。」

 この世界では初めてだが、今まで何人殺してきたかは覚えていない。戦争になれば、敵対してきた者は躊躇わず殺してきた。最初は嫌な気持ちもあったかもしれないが、今では悪い奴を殺す事には何も感じない。

「殺しちゃっても大丈夫なの?」

 アルスは殺すという発言に多少驚いたようだが、コクリと頷く。

「あぁ、かまわない。ここで見逃しては、また次の馬車が狙われるだけだからな」

「なに話してやがる! 早くしやがれ」

 二人が緊張感なく話しているのでイライラして気が立っているようである。

「お前らには何も渡す気はないよ。はやくかかってこい」

 アルスは手招きして挑発している。俺も真似して手招きして挑発する。

「ふ、ふざけんなよ」 

すると盗賊達は怒りにまかせ、一斉に襲いかかってきた。そりゃあ十二歳の子供に盗賊が馬鹿にされたらキレるよね。

「フリーズ!」

 俺が右手を前に出し、魔法を唱えると、十メートル先の道がキレイに凍りついた。勢いよく走ってきた盗賊たちは一斉にその凍りついた道を踏みつけ全員が激しく転んだ。受け身を取れず頭を打ち気絶する者もいた。

 この隙に、アルスに攻撃してもらおうと思っていたのだが、隣で腹を抱えて盗賊を指差しながら笑っている。

「こいつ、つかえねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ』

 盗賊たちは立ち上がろうとするが、すぐまた転んでいる。それを見てアルスはさらに笑い転げる。アルスの下にもフリーズかけてやろうかな……

 盗賊達は凍った道の上でひたすらもがいている。それでも這って抜け出してきた盗賊には俺が剣で切りつけていった。

 一気に半分以上の戦力を失った盗賊たちは敵わないと悟ったのか命乞いしてきた。

 幸いサンドラも近かったので、捕まえてサンドラのギルドに引き渡すことにした。無抵抗の相手を殺すほど鬼畜ではない。

「さすがだなぁ、ルクス。一人で片付けてしまうなんて」

 父に向け冷ややかな目を送ると、すまん、すまんと謝ってきた。

「すごいです。子供が盗賊を撃退するなんて。それにあんな魔法の使い方初めてみました」

 同行していた商人は俺の活躍に興奮しているようだ。

 ついでに商人に帰りの護衛も頼まれた。個人で受ける依頼なので、格安にしてあげた。


 そうしているうちにやっとのことで、熱帯の国、サンドラへ着いた。







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