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ドラゴンをつっこむ

「ルクス、もうすぐ着くね。緊張してきたよ」

「ルミナはドラゴンを見るのは初めてって言っていたよね?」

「普通ドラゴンに会う機会なんてあるわけないじゃん」

 そうだよね……普通ドラゴンが現れたら死が決定するくらいだからな。しかもこの世界のドラゴンは相当強いらしいし。

 しばらくすると大きな山々が見えてきた。

「おぉ! でかいなぁ」

 想像よりも大きな山脈に驚いた。ドラゴンが住みかに使うくらいだから、それなりにでかくないと無理か……

「今からこの山登るんだよねぇ」

 ルミナもあまりの大きさに気が乗らないようだ。ドラゴンの住みかまで行くのに、かなりの距離を歩きそうだからな。

「虫とかいっぱいいそうだよね。苦手だよ」

 あっ、虫の心配していたのね……

 御者をふもとに残して山を登り始めた。

 どのくらい歩いただろうか、二時間くらいか? やっと半分まで来たかというところだ。すると少しひらけたところに出た。

「ちょっと休憩しようか?」

 と俺が提案するが、

「私はまだまだ大丈夫だよ」

 と元気な返事が返ってきた。

 まったく頼もしい彼女だ。しかしいつ戦闘になるかわからないので、少しだけ休むことにした。

 ボックスからシートを出し二人で座った。すると手と手が少し触れあった。

 するとルミナが、

「えへへぇ」

 と言って緩んだ表情になり、手を絡ませてきた。

「ルミナ、ずっと山歩いてから汚いよ。汗もかいているし」

「大丈夫だよ。私も一緒だし。それに二人きりってあんまりないから。今ならいくらでも手を繋げるよ」

「だね。でも俺としては早く慣れてほしいんだけどね」

「うぅぅ、それはがんばる」

 ほんと可愛いなぁ。

 二人でくつろいでいると、何かカサッと音がした。なんだ? と思い音をした方をみるとでかいムカデがシートをはっていた。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁl」

 ルミナが甲高い声をあげ俺に抱きついてきた。む、むねが当たっていますよ、ルミナさん。

「ルクスお願い。なんとかしてぇぇぇ」

 殺すのもかわいそうだったので、胴体を軽く掴んで遠くに投げた。

「もう大丈夫だよ」

 俺がそう言うと、ルミナはパッと離れた。幸せな時間はそう長く続かないのだ。

「ありがとうルクス。でも早く手を洗ってね」

 俺の手をまるでゴミを見るような目で見ている。やばい、早くきれいにしないと手を触ってくれなくなる。すぐに手を洗ったが、ルミナはその後、手を繋いではくれなかった……二度と虫は直接触るまい。

 そうした事件もありながら、やっとドラゴンが住んでいそうな場所に着いた。岩肌に大きな穴がたくさんあいている。この穴の中にドラゴンがいるのか? しかし、いっぱいありすぎてどれが主の穴かわからんぞ。

「ルクスどうしようかぁ」

「適当に入ってみるしかないかな?」

「えぇー絶対危ないよ」

 二人であーでもない、こーでもないと悩んでいると、空からバサバサと音が聞こえてきた。ドラゴンだ!!

 赤いドラゴンが俺とルミナの前に着地した。

 緊張が走る。ドラゴンもこちらの出方を警戒しているような目付きをしているが、いきなり攻撃はしてこないようだ。

 沈黙が続いていたがドラゴンがいきなりバサッと翼を一回羽ばたかせ、

「君らなんか用なん? 俺ら捕まえに来たんやないみたいやな」

「「えっ!!」」

 ドラゴンがいきなり話はじめたが、それよりもあまりの軽さに驚いた。

「あ、あなたがドラゴンの主ですか」

 俺は人語を話せるドラゴンが主だと聞いていたのだが……とても主には見えない。

「そんなわけあるかい。俺なんてペーペーやで」

 やっぱり……こいつが主だったらきっとドラゴンは滅ぶ。

「そ、そうですか。主の方はどちらにいるのですか?」

「その前にここに来た訳を話さんかーい」

 ドラゴンの軽さに緊張はすっかり消えていた。

「最近この辺が騒がしくて、近くの町の人が不安がっているので何かあったのか調べにきたんですよ」

「なるほど。やっぱり人様に迷惑かけてたんやな。まっ、君達信用できそうやから会わせたる。背中に乗り」

 まさか、飛んでいくのか! うわっ、こんな経験初めてだ。空を飛べるのか。

 俺はドキドキしてドラゴンの背中に乗る。ルミナもワクワクしているようだ。

「じゃあ、いくでー」

 ドスン、ドスン、ドスン、ドスン

 ……歩きはじめた。

「「は?」」

「おいおい、そこは「は?」じゃないやん。飛ばんのかーい、って突っ込み入れるところやで。これやから素人は」

 イラッとした。とてもイラッとした。ルミナは笑っていたが、このドラゴンなんかムカツク。なので、一発だけ少しだけ力をいれて背中を殴ってみた。

「ドンッ」

 鈍い音が響く。

「いったぁぁぁぁぁ。何すんねん! やっぱ敵なんか」

「いやいや、突っ込み入れろとか言われたんでね。どうでしたか俺の突っ込みは……まだ強いほうがいいですかね?」

 ドラゴンは恐怖を感じたのか謝りはじめた。

「すんまへん。調子にのっていました。ほんとは人間乗せて飛んだらいけない決まりがありまして……ほんとすんまへん」

 がっかりした。すごくがっかりだ。ルミナも残念そうにため息をついていた。

「はぁ、もういいですから早く主の所に案内してください」

「はい……」

 主の場所は歩いてすぐの穴だった……



  

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