お金貯めなきゃ
「ちなみにルクス今いくらくらいもっている?」
「えーと、二千万くらいかなぁ」
プラシアでA級クエストを受けまくっていたので、それなりに蓄えはあるのだ。
「うわぁ、すごいね」
「えっ? ルミナは」
俺達はクエストの報酬は折半にしているので収入は同じくらいなはずだが……
「……八百万くらいかな」
「えっ、この前グレイブさんに貰った二百万を合わせても?」
「うん……」
ルミナはそんな物を買う女ではない。服も必要最低限しか持っていないはずだ。もしかして、昨日もらった誕生日プレゼントがすごく高かったのか……いやいややっぱり食費だろ。昨日一人だけ10万払っていたし。まぁしょうがないなぁ。食べるのを我慢しろとは言えない。食べているときのルミナはほんと幸せそうなのだ。しかし、本人も自覚があるらしく……
「ごめんね。ご飯食べ過ぎだよね……」
「いや、それはいいんだよ。ルミナがおいしそうに食べている姿も俺は好きなんだ。だから我慢する必要はない」
俺が笑顔でそう言うと、ルミナも笑顔になった。
「ありがと、ルクス。でもどうやってお金貯めようか」
「二人で一億かぁ。とりあえずクエストこなすしかないよな」
「そうだね。他の国にはカジノとかあるけど負けたら意味ないしね」
カジノがあるのか……でも他国かぁ。もし近くに行くときがあれば絶対行こう……
「じゃあやっぱりクエストで稼ぐか。とりあえずランク上げしますか」
「でもいいの? アルスさんと一緒にS級に上がるって言っていたのに」
「もういいだろ。三年も待ったんだし」
「そっか。ルクスがいいならいいんだ」
正直S級には興味はないが、それよりも早くスキルを知りたい。A級ではいくら頑張っても一億貯めるなんて何年もかかってしまう。ただでさえうちは食費がかかるのだ。
「よし、じゃあとりあえずギルドに行ってさっさとS級にあがるぞ」
「うん、がんばろう」
ギルドに行くと数々のS級クエストが掲示されていた。今は報酬よりも時間がかからないやつだ。他国へ行くようなクエストは往復するだけで時間がかかる。
「ルクス、これいいんじゃない?」
「ん、どれどれ?」
S級クエスト
新しく見つかった洞窟に様々なキノコが大量に生えています。食べられるキノコと毒キノコに実際に食べて分けてください。注:毒の耐性必須 報酬:二百万ピア
「えっルミナ、毒の耐性あるの?」
「ないよ。でも食べ物でしょ。食べるだけなんて楽じゃん」
「じゃあダメじゃん。S級で食べるだけのクエストがあるわけないでしょ。S級ってことは相当強い毒なんじゃないの。リスクの割に報酬も安いし」
「えー食べられるかどうか見れば分かると思うけどな。じゃあダメかぁ」
ルミナはうなだれている。本気で受ける気だったのだろうか……
「二人してどうしたんだい。何か悩み事かな?」
奥からグレイブさんが歩いてきた。
「いや、どうしても金が必要になりまして」
「ほう、それはなんでまた」
「グレイブさんに紹介されたスキルを見れるという人ですよ。見てくれって頼んだら二人で一億用意しろと言われて」
「あーたしか一人五千万だったよな。俺も払った、払った」
「グレイブさんなら簡単に払えるんでしょうけど、俺達にとっては大金なんで手っ取り早くS級の高額クエスト受けようかなと思いまして」
「それは困るな……」
グレイブさんが不思議なことを呟いた。
「なんか言いました?」
「あっいやいや、それならこういうのはどうかな。俺が個人的に君達に依頼を出そう。その依頼を達成してくれたら、俺が彼女に話をつけてスキルを見てもらえるように話しておくよ」
「そんなことできるんですか?」
ルミナが目を輝かせている。
「かなり難しいけど俺なら出来ないことはないだろう。しかし俺の依頼もそう簡単に達成できるものじゃないよ」
うーん、どうしよう。一億がタダになるぐらいだから、相当な依頼だろうな。でもルミナには俺の力は明かしているし、多少強敵でも俺がメインで戦えばどうにかなるだろう。
「わかりました。受けましょう。ただ、要人の暗殺とかは嫌ですよ」
「大丈夫だ。それぐらい分かっている」
「あっ、でも彼女、グレイブさんからスキルのこと聞いたって話したらめちゃくちゃ怒っていましたけど大丈夫ですか?」
「えっ、ほんとに? しょうがない。お土産持って謝りにでも行くか」
「それがいいと思いますよ」
謝っても一発ぐらい殴られるんじゃないかな……この人。
「まっ、とりあえず依頼は明日伝えるよ。またギルドに来てくれ」
「分かりました。色々とありがとうございます」
俺とルミナはグレイブさんに感謝を込め深々と礼をしてギルドを後にした。
グレイブは一人になったところでニヤリと笑った。
「よし、これでクレアの最年少記録は守られた」
ただの親バカであった。




