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名付け

 一人、部屋で考えていた。今日は色々なことがあったな。この国唯一のランカー、グレイブさんには会えたし、赤き竜とかいう他国の冒険者とも戦った。まぁ俺は見ていただけだが、使っていた技やあの体、見たことないものばかりだった。いや、どこかで見たことあるようなのだが思い出せない。

 一番驚いたのはスキルの存在だ。今まで何度も転生してきたが初めて知った。しかし、説明を聞いて納得もできた。今までの才能の違いの一言で片付けてきた者達が、スキルを活かしてのことだったら納得ができる。早く自分のスキルが知りたい。今回の転生には自信がある。なんせ今までの転生と成長の仕方が違う。なにかしらのスキルはあるはずだ。楽しみで仕方ない。

 楽しみすぎて寝つけないでいると、ドアがノックされた。

「ねぇ、ルクス起きてる?」

 うわっ、ルミナの声だ。こんな時間にどうしたんだろ。

「起きてるけど、どうした?」

「ねぇ、ちょっと話さない?」

「あ、あぁ、いいよ」

 少し緊張しながらもドアを開けた。そこにはお風呂に入り寝間着に着替えたルミナが立っていた。かわいい。そしていい香りがする。

「こんな時間にどうしたの? ルミナ」

「前に話したでしょ。二人でこの白と黒の剣の名前付けてあげようって。ちゃんと考えた?」

ルミナは手に白の剣を抱えて持っていた。

 げっ、ガザンでそんな話してたな。すっかり忘れていた……

「全く。どうせ何も考えてなかったんでしょ。私はちゃんと考えていたんだから」

「へぇ、ぜひ聞かせてよ」

「えー、では発表します。私の剣がホワイトプリンセスで、ルクスの剣がブラックプリンスよ。いい名前でしょ」

「え…………」

あまりの衝撃で絶句してしまった。どんなセンスしているんだ……えっと意味は白い王女と黒い王子でいいのかな……いやいや、勘弁してくれ。

敵の前で、

「俺のブラックプリンスの錆びになれ」

 とか絶対言えないから!

 俺が何も言えずにいると、ルミナが話を進めてきた。

「ふふふ、感動で声もでないのかしら。じゃあこれで決まり。いいわね」

 やばい、やばい、やばい。何か案を出さないとほんとに決まってしまう。

「いや、ルミナ。確かクレアさんは雷切って名前だったよな。格好いいなって思っていたんだよ」

「えー嫌なの? じゃあなんか案だしてよ」

 俺は脳をフル回転させ考えた。

「よし、ルミナの剣は雪のように白く綺麗だから、【白刀 雪華(ゆきばな)】。俺の剣は闇のように暗くも輝きを放つから、【黒刀 輝夜(かぐや)】とかどうだ?」

 我ながら急によく名前が出てきたものである。ルミナが付けた名は絶対嫌だったので必死だった。

「へぇー。ルクスにしてはいい名前考えたわね。うん、それでいきましょう。私の付けた名前は長いしね」

 ルミナはうんうんと頷いている。気に入ってくれたようだ。

 長いだけの問題じゃないけどな……とは言えなかったが。

「うん、そうしよう。いやぁ決まってよかった」

「そうね。早く名前付けてあげたかったの。よろしくね、雪華。私達をこれからも守ってね」

 ルミナは自分の剣を優しく撫でている。雪華もこころなしか喜んでいるような気がする。

 俺も輝夜をそっと撫でた。二人でルミナを守りぬくと誓いながら……

「よし、名前も決まったところだし明日の予定をたてましょう」

 ルミナは晴れやかな表情で話を切り替えてきた。

「あぁ、そうだな。まだ何も決めてなかったな」

「そうだよ。もー何時まで寝るつもりだったのかしら。何かやりたいことありますか? クエストはまだ特に急を要するものは無さそうだったし」

「うーん、どうしてもやりたいことはスキルを見てもらいたいかなぁ」

 俺が希望を伝えるとルミナは呆れたような表情をした。

「ルクス、明日はどこで寝るつもりですか? 毎日グレイブさんの家に泊まるのは申し訳ないわ。まずは宿探しとしましょう。それから生活に必要なものを買いにいきましょう。いいわね」

「は、はい」

 そこまで決めているなら、何かやりたいことあるか聞く意味あったのかな……無駄に怒られた気が……

「じゃあ決まり。明日グレイブさんには伝えましょう。あっ、グレイブさんが朝ご飯用意してくれるみたいだから、ちゃんと起きるのよ」

「うっ、わかりました」

 なんか母親みたいだな……悪い気はしないが。

「明日が楽しみだね、ルクス」

 ルミナが可愛い笑顔でそう言うので

「あぁ」

 とだけ答えた。顔赤くなってないかな、俺……



「ただいま戻りました、グラム様」

 レイが貴族風な男に片膝をついて報告している。左右には同じようにオッドとキースが一歩下がり片膝をついている。グラムは玉座のような豪華な椅子に座っている。周りには誰もおらず、四人だけである。

「戻ったか、赤き竜よ。で、どうだった? 殺せたのか?」

「いえ、想像以上でした。とても力を隠したままでは敵いません。いや力を解放したところで勝てるかどうか……特にあの青年、只者ではないです」

「ほう、レイがそこまで言うのであれば本物なのだろうな。で、これからどうするのだ?」

「グラム様に頂いたこの力を完全に制御できるよう鍛えようと思います。今のままでは乗っ取られる可能性がありますので。特にこの二人は……」

 オッドとキースは顔を伏せる。

「そうだな。こちらも次の作戦の準備で時間がかかる。なかなかお前らのように上手くはいかないものだ。しかし意外にやるものだ、アスールも……厄介なのはランカーと数人のS級だけだと思っていたが……まぁゆっくりいこう。どうせ奴らは何もできん」

「そうですね。では我々は失礼します。次会うときは必ず期待に応えられるよう精進します」

「期待しているぞ」

 三人は立ち上がり、グラムに一礼をして立ち去った。

「その青年がやはりそうなのか? ふふふ、まぁすぐに分かることだろう。アスールよ、一時の平和をじっくり味わうことだな……」



12時にもう一話更新します。

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