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デート!?

 ルミナとブランの町を探索することとなった。

「ねぇルクス、どこから行こうか?」

「ちょっと待って。さっき町の人がいいものを配っていたんだ」


 ブランの町ガイドブック~これ一冊でブランの町は丸裸~


 タイトルはどうかと思ったが、初めてブランを訪れる人には非常に重宝するものらしい。一ページ目を開いてみるとブランの町の全容が載っていた。ふむふむ、ギルドがあるこの辺りが武器屋や雑貨屋がある冒険街、他には人々が住む住宅街や貴族街、おっ、ルミナが好きそうなグルメ街もあるな。エンターテイメント街? どうやら闘技場や劇場などがあるようだ。あとは……大人の街! なんだろう……なにがあるんだろ……なんか惹かれる名前だな。町の外れの方にあるようだが、しかし十八禁のマークが付いていた。俺はまだ十五歳……とてもじゃないが誤魔化せないな。三年後また来よう……

「なんかいい所あった?」

「うわっ、ビックリした」

 ルミナがガイドブックを横から覗いてきた。ちょっと、近い、近い。ほのかに香る髪の匂いに不覚にもドキッとしてしまった。そういえばこれってデートになるんじゃないか? プラシアの町でも二人で歩くことはあるが、毎回同じ店に買い物に行き、同じ道を通り、会う人は全て顔見知りで全然そんな雰囲気にならない。そう考えると少し緊張してきた。もう三年も一緒にいるのに全く進展しないな……思い切って手でも繋いでみようかな。とか考えていたら、

「ルクス行きたい所ないの?」

「えっ、あっ、いや色々あって悩むなぁ~」

 あー意識したせいでなんか変な感じになってしまった。

「どうしたの、何か変だよ」

「いや、大丈夫、大丈夫。とりあえずグルメ街にいきますか。お腹減っているだろ」

「減ってる!」

 即答だった。俺が別の所に行きたいって言っていたらどうしたのだろうか。いやもう長い付き合いだ。俺がグルメ街に行くって言うのがわかっていたんだろうな。

 とりあえず俺達はグルメ街に向かい歩き始めた。手を繋ぐ勇気がでないまま……

「ルクス、お店がいっぱいだよ。どのお店から入ろうかなー。迷うなー」

 どのお店から……ルミナはグルメ街をはしごして回るようだ。しかしほんと見たことない食べ物ばかりだな。香ばしい臭いや甘い香りが色々なところから漂っている。俺も食欲がそそられてきた。

「あっ、あれ食べたい」

 なにか見つけたようだ。それは茶色の薄い生地で果物やソースのようなものを巻いている食べ物のようだ。たしかに旨そうだ。食べている人も幸せそうな顔をしている。しかし、凄く並んでいる……買うまでにどれだけかかることか。

「確かにおいしそうだけどいっぱい並んでいるし、他のにしないか?」

「いや、最初はこれに決めたの! 並ぶのくらい我慢するわ」

 食に対しては一切妥協しないのがルミナだった。

「しょうがないな。じゃあ待ちますか」

 渋々行列の一番後ろに並ぶと、お店からキレイな店員さんが飛び出してきた。

「そのネックレス、ガーランド家の家紋ですよね」

「えっ、そうですけど……」

 クレアさんから預かった家紋入りのネックレスは直ぐに店員に見せることができるよう、ルミナの首につけておいたのだ。

「気付くのが遅れてしまい、こんな後ろに並ばせてしまって本当に申し訳ございません。どうぞこちらへいらしてください」

 そう言うと店員さんは並んでいる行列を無視して、ルクス達を店の中に案内した。他の客の目が痛い……ガーランド家に傷をつけるのではないだろうか……

「さぁ、お好きなものをお選びください」

 店員さんは物凄い笑顔で接客してくる。

「い、いいのかな?」

 さすがのルミナもあまりのVIP対応に戸惑っているようだ。

「せっかくだし、頂こう。また並ぶのも嫌だしな」

「うん、わかった。じゃあ……全部下さい」

「えっ! 全部ですか?」

 さすがに笑顔だった店員さんも目を丸くして驚いていた。この店の食べ物は確かに一つ一つはそんな大きいものではないが、普通一、二個食べれば十分な程である。それなのにルミナは全部……六種類あるので六個も食べる気だ。

「はい、もちろん」

 当たり前のようにルミナは答えた。

「か、かしこまりました。弟様はどちらにしますか?」

 弟! 姉弟に見えていたのか。たしかにルミナは大人っぽいよ。十六歳だけど十八歳って言われてもおかしくないけど、俺だって十五歳の割には身長も高いし、顔だってイケてると思うんだが……まだルミナとは釣り合わないのかな……少し自信をなくしてしまった。

「じゃあ、その赤いのにします……」

 弟じゃないと否定できないまま、注文してしまった。

 ルミナは幸せそうに食べている。どうやらクレプという食べ物らしい。

「美味しいね。ルクスももっと頼めばよかったのに。この緑の果肉が入ったクレプとか絶品だよ」

「たしかに旨いな。他のも食べてみたいけど、さすがにあと一個は多いかな」

「もう、相変わらず少食だね、じゃあ一口あげる」

 そういうとルミナは食べかけのクレプを俺の口の前にもってきた。

 えっ……これって間接キスってやつじゃないか! うわ、どうしよう。今さらいらないって言っても変だよね。いやいや、なに間接キスぐらいでドキドキしているんだ、俺。こんなのパクっと食べて、はい、おしまいじゃないか。

 思い切ってクレプにかじりついた。

「ね、おいしいでしょ」

「あっ、あぁ。たしかに旨いな」

 今の俺に味なんて感じる余裕などなかった……

 その後、二軒のお店に入りようやくルミナのお腹も満足したようだ。途中マルシェ並みに高いお店に入ろうとしていたが、なんとか食い止めた。やりましたよ、クレアさん。全て合わせても二万ピアしか使っていません。あとで褒めてもらおう。しかし、ネックレスの力は凄まじかったな。それだけこの国でガーランド家、さらに唯一のランカーということで絶対的な存在なのだろう。どのお店でもVIP対応だった。癖になりそうだ。

 ルミナがお腹いっぱいになった所で、ちょうどクレアの家に行く約束の時間が近づいていた。結局グルメ街しか回れていなかった……もしルミナと恋人同士になってもこんなデートになるんだろうな。



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