新しい仲間
ある一室で三人の男と1人の女がテーブルを囲んで重々しい雰囲気の中対話している。
魔法使いのような三角帽子とマントを羽織った老人。
見た目はまだ若い青年だが二本の角が生えた男
貴族のようなきらびやかで、高級そうな服に身を包んだ男性
赤い露出の多いドレスを着て、細くスラッとした美しい女性
の四人である。
「サンドラに送り込んだゴーレムがやられたみたいだな」
「うん、でもサンドラには奴を倒せるやつはいないはずだよ」
「たしかにあれはS級の冒険者でもかなり苦戦するはずだわ」
「たぶん、隣国のアスールから派遣されたのじゃろうて。あそこにはランカーも1人おったし」
「あんな小さな国の為にランカーが動くかなぁ」
「まぁいいさ。合成魔獣はまだ何体もいる」
「じゃな、このままアスールや同盟国を少しずつ潰して弱体化させるぞい」
「焦るなよ。他国の仕業と勘づかれたらやっかいだ」
「はーい。じゃあ次は何処に送り込もうかなぁ」
※※※※※※※※※※※※※※※※※
俺達はサンドラの町に向かって歩き出していた。アルスとルミナがなにやら話している。
「そういえばルミナちゃんは、これからどうするんだい?」
ルミナはその場に立ち止まり少し考えているようだ。
「私は冒険者です。まずは無難なクエストをこなして当面のお金を稼いでから、もっと強くなるために修行します」
「ソロでやるのかい?」
「私のパーティーは全員やられてしまいました。とりあえず臨時とかでどこかのパーティーにいれてもらいますよ」
「そうか……じゃあ俺達と一緒にパーティーを組もう。それがいい。ルクスにも同年代の仲間が必要だと思っていたんだ。いいよな、ルクス」
「そうだね。心配だしね」
「えっいいんですか?うれしい。ではまだまだ未熟者ですが、これからよろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしく」
俺はテンションが上がっていた。
今までアルスと二人だけで毎日のようにクエストをこなしてきた。嫌というわけでもないが父親と一日中一緒にいるのはウンザリしていた。クエスト自体も全て簡単すぎてつまらないし。ルミナがパーティーに入ってくれればきっと今より楽しくなる。やっぱりパーティーには女の子という花が必要だ。
「よし、そうと決まればさっさとサンドラへもどるぞ」
サンドラへ付くと、まずはギルドへ報告へ向かった。
「お疲れ様です。ゴーレムは倒せましたか?」
なにも知らないギルド職員が聞いてきた。
アルスは怒っていた。
「ふざけるな! あぁ倒してきたよ。でも奴はただのゴーレムじゃなかった。A級、いやS級でもおかしくないレベルだったぞ。C級クエストだと思って、この依頼を受けた冒険者は全滅するはずだ。この子の父親のように」
アルスは捲し立てるように言いはなった。
怒ったアルスは初めて見た。
ギルド職員は怯えて声を震わせながら話した。
「も、申し訳ございません。このクエストは王宮からの依頼でして。難易度の方も王宮で決められましたので……」
クエストは基本的にギルドが個人や商会などからの依頼に応じて難易度を決める。そしてその難易度により請求額を決めるのだ。しかし今回のゴーレム討伐依頼は国からであった。国からの依頼だけはギルドに難易度の決定権はないのである。
この国は決して裕福ではない。むしろ貧乏な小さな国である。A級、S級となれば、請求額はものすごい金額になる。それを節約しようとC級のクエストとしたのだろう。もしくは詳しい調査をせず本当にただのゴーレムと思っていたのか。
「そうか国からの依頼か。それではしょうがないな。すまなかったな。怒鳴ってしまって」
アルスも少し冷静になったようだ。
「いえ、ギルドの方も正確な情報を調べるべきでした。少なくとも彼女の父親達が帰ってこないのを不信に思うべきでした。この国では凄腕の冒険者だったのに。あなた方がこなければ、他にも犠牲者を増やすところでした」
ギルド職員も反省しているようだった。
「もう大丈夫です。父も冒険者です。常に死は覚悟していたはずです。それに相手が強いと分かっていても国を守る為きっと戦ったはずです。それにもうお二人が倒してくれたおかけで国は救われました。父も天国で喜んでいるはずです」
ルミナは笑顔を見せていた。
「そうだね、きっと喜んでいるよ」
これで一件落着だな。
「いや、大丈夫じゃない!」
「「「えっ!!!」」」
アルスが空気を読めない事を言ってきた。
「だから全然大丈夫じゃない。王宮へ乗り込むぞ。文句言ってやる」
全然冷静じゃなかった……