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プロローグ

 ある真っ白な部屋に二人の男がいた。

 一人はまだ若い青年といった感じで、白い着物のような物を着ている。髪は薄い青といった感じで長髪だ。体型も細く弱々しく見えるが目付きは鋭く生気に満ちている。なにも無い部屋に一つだけある椅子に偉そうに座っている。

 もう一人は中年の男性でメガネをかけ白い髭を生やし、白いスーツを着ている。椅子に座っている男の横で姿勢正しく立っている。

 若い青年が口を開く。

「やっとこの時がきたな」

「はい。長い年月がかかりましたな」

「百回も必要なかったんじゃないか?」

「決まりですので」

 若い青年は苦々しい表情を浮かべる。

「融通のきかない奴だな。しかし、なんでこいつだけこんなに強いんだ」

「条件は同じはずですが…やはり百回も転生を繰り返すと、その生き方で少しずつ差もついてきますな」

「これじゃあ面白くないじゃないか!能力下げるか?」

「ステータスは変えることはできません。転生者には全員、【神の呪縛】が付与されておりますのでそれ以外では干渉できません」

「ちっ、ほんと融通がきかないなぁ。それにしても【神の呪縛】ってなんだっけ」

 白いスーツの男はため息をついて答える。

「【神の呪縛】とは、呪いの一種です。経験値十分の一、精神年齢の成長無しが付与されます」

「精神年齢の成長無し?」

「はい、そうです。あなたが作った呪いですよ。バカなんですか?「感受性豊かな年齢じゃないとこの転生の意味がないし、子供すぎても意味がない。何千年と年をとっていったら人として落ち着いてしまっておもしろくない。永遠の十八歳でいこう」とか言っていましたし」

「そうだったっけ。よくそんな昔の話覚えているな……っていうか今バカっていった?」

「……言ってないですよ」

「そうか、言ってないか……ちなみに経験値十分の一はなんで付けたんだっけ?」

 白いスーツの男はあきれたように再びため息をつく。

「やっぱりバカですね。「百回も転生したら強くなるのは当たり前だから嫌がらせしてやる」とか言って経験値十分の一も付けたんですよ」

「ねぇ、今やっぱりバカっていったよね。上司である俺にバカっていう部下がいる?」

「あぁ、聞こえちゃいましたか。申し訳ございません。つい……」

 無表情のまま、申し訳ないという気持ちが微塵も感じられないように答える。

「ついって……まぁいい。だがこのままではつまらん。よし、こいつだけ何も伝えずいつも通り転生させろ。あと生まれるのも遅らせるか。これで少しは差が埋まるだろ。他の二人にはちゃんとこの転生の意味を説明するんだ。あっ神の呪縛とやらも二人だけ解いてやれ。あと相当頑張らないと負けるよって伝えて」

「それならば可能です。かしこまりました。神よ……」

 そういうと白いスーツの男は神と呼ぶ男に深々と礼をして姿を消した。

「さて、どんな世界が生まれるか楽しみだな」

 この物語の主人公、ルクスは何も知らされないまま百回目の転生を迎えるうえに、大きなハンデを与えられたのである……



「あぁ、またここからのスタートか…」

 小さな手、小さな足、小さな体…自分が赤ん坊であることが理解できた。しかし、体は自由に動かない。言葉も話せない。

「不便だが成長するのを待つしかないか」

 と、いつものように諦めた。

 周りを見渡すと小さなベッドに寝かされており、父と母だろうか、二人の男女が俺に笑顔をふりまいている。

「よかった。今回も普通の家に生まれたんだな…」

 俺はルクスと名付けられた。俺には前世の記憶があった。いや、前世どころか前々世、前々々世、さらに前々々… 今回でなんと記念すべき百回目の転生となったのである。これまで九十九回の人生を歩んできたが、様々な世界で生きてきた。

 国と国の戦争が絶えない世界

 人類と魔物が殺し合う世界

 様々な種族が争い、優劣を決める世界

 など全てにおいて、争いの絶えない世界ばかりであった。

 そんな世界ばかりなので、運が悪ければ生まれた場所が森の中だったり、廃墟の中であったりする。あっ牢獄の中っていうのもあったか…今回は普通に家の中で生まれ、両親も幸せそうだ。

 しかし百回目だけど今回もどうせ同じような世界だろうな……

 と思いながらも眠気に襲われ目を閉じた。


 俺は十二歳になった。

 朝日で目覚め、顔を洗いに洗面台にいく。鏡を見るとさわやかな少年がそこにうつっていた。髪は黒髪で、身長も同年代と比べても高く、体型も細くもなく太くもなく、ほどよい感じだ。まだ十二歳なので格好いいというよりは可愛い感じではあるが。これは将来女にモテるんじゃないかと思わずにいられなかった。

 赤ん坊の頃はほとんど泣かず両親は心配したようだが、1歳になる頃には誰よりも早く歩きだし、言葉も話すようになり、文字や絵を書きはじめて安心してくれたようだ。

 本当はもっと早くから、歩いたり、話したりできたのだが、あまりに早いと逆に気味が悪いと思われてしまうので、我慢した。九十九回の転生の中で何度も経験したのである。

 十二年で、ある程度この世界のことも分かってきた。

 大小様々な国があり戦争により領土を奪い合っているようである。国の数は二十~三十あると言われているが正確な数は定かではない。常に奪い、奪われ、内戦により国が分かれるなどして、国の数が変動しているのである。まったく、なんで人間はこうも争うのが好きなんだ…

 その中でも三大大国と言われる国がある。

 アスール国

 ロッソ国

 アマレロ国

である。この三国は領土の大きさ、資源、兵力はほぼ互角にあり、互いに手を出せずにいた。他の国はほとんどが三国いずれかの同盟国となっている。小さな同盟国の争いは頻繁にあるようだが、大国間での大きな争いは三百年ほど起こらずにいた。

 俺は運よく大国の一つアスール国に生まれここまで平和に生きてきたが、

「やっぱり今回もいつもと同じような世界かぁ」

 と、落胆していた。


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