プロローグ
昔々、この星、クレストルニアは綺麗な水が流れ、草木が生い茂り、沢山の動物たちが暮らす自然豊かな星でした。
しかし、人間達が始めた戦争によってそれらの自然は次第に破壊されていきました。
気がつけばこの星に暮らしていた動物たちはほとんど死んでしまい、水も、草木もほんのわずかを残して、星のほとんどが荒れ果てた荒野と砂漠となってしまいました。
この星は確実に死へと向かっていました。
その事を知った人間達は二つに分かれました。
この星を出て、新しい生活の場、生活できる星を探しに旅立った人達。
彼らは巨大な宇宙船を建造し、いつ終わるか分からない長い宇宙の旅へと向かって行きました。その結果は誰にも分かりません。
そして、この星に留まり、自然の再生を目指す人達。
彼らは残された資源を平等に分け合い、再生の手段を・・・
彼はそこで目が覚めた。夢を見ていたようだ。昔、母親から何度も聞かされた話だった。その母親は今はもういない。数年前に病に倒れてこの世を去ってしまった。それ以来、この話は度々夢に出てくる様になってしまった。
部屋の中は少し薄暗い。彼の身長より大きい窓には厚いカーテンがかかっている。
彼はベッドの上で上半身を起こし少し伸びをする。そして、ベッドから出て窓の方へ歩き、窓の横にあるスイッチを入れる。カーテンが開き、眩い朝日が部屋の中に差し込んでくる。
彼は窓を開け、バルコニーへと出る。乾いた熱い風が部屋の中に入ってくるがそんな事は気にしない。
彼の目の前には王都バルティアの城下の町並みが見える。そして、その向こうには荒れ果てた大地、黄色に染まった荒れ地が広がっていた。遠くに所々緑色の森が見えるが、それもほんのわずかだ。
夢の中で出てきた、この星を旅だった者達。彼らがこの星を発ってからもう何百年も過ぎている。しかし、この星の現状はどうだろうか。あのときから何も変わっていないような気がする。むしろより悪化しているような。そんな気がしてならない。
というのも、この星に残された人々は6つの国に分かれた。ウルジット、ザラマトラ、エールクロン、ラクシュア、ウィツェレ、そして、バルディアの6つだ。そして、それらの国々はこの星に残された資源を巡り対立し、戦争も度々発生していた。
人間ってなんて愚かなのだろう。そんな事をしている場合では無いのに。
「ケネス様、こんな所にいらっしゃったのですか。朝食の準備ができました。」
メイド姿の女性が部屋の中からバルコニーを覗き、話しかけてくる。
ケネスと呼ばれた彼の名はケネス・アル・バルディア。このバルディア王国の王子だ。そして、メイド姿の彼女はマリアンという。彼女は見た目は女性だがケネスが生まれる前に製造された高性能の人工知能を持つ機械でできた人形、いわゆるアンドロイドだ。マリアンはケネスの身の回りの世話をしている。ケネスにとってマリアンは母親のような存在となっていた。
「マリアン・・・」
ケネスは一度マリアンの方へ振り向いたが、再び荒れ果てた荒野を見る。
「この星はどうなっていくのだろう・・・。」
「以前よりも確実に緑が少なくなってきています。この間もウルジットとウィツェレとの間で戦闘があった模様です。」
「・・・人間って、本当に愚かだと思う・・・。」
ケネスはそう言ってそのまま荒れ果てた荒野を見つめる。しばらくの沈黙。
「ケネス様、長時間風に当たっていると体によろしくありません。それに、朝食のスープが冷めてしまいます。そろそろお部屋にお戻りください。」
「あぁ、ごめん、マリアン。」
そう言ってケネスがバルコニーから部屋に戻ろうとしたとき、空に一つ小さな影が現れていることに気がついた。
普段見慣れない影。その影は次第に大きくなっていく。
鳥だろうか?
この星で鳥を見かけるのは大変珍しい。大半は森や湖の近くに生息しており、このような荒野の中で飛んでいる姿を見かけるのはそうそうあり得ない。
しかし、その影はあり得ないほどに大きくなっていく。
この異変に気がついたのはマリアンだった。
「ケネス様!すぐに部屋にお戻りください!あれは・・・軍艦です!」




