それは既に運命に刻まれている
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
第6話は、これまで積み重ねてきたものが一つの形になる回です。
力とは何か。救うとは何か。
ユウミが向き合う“選択”に、少しでも心を重ねていただけたら嬉しいです。
それでは、第6話をお楽しみください。
闇の底。
沈みきった意識の奥で――
それは、確かに続いていた。
荒れ果てた村。
崩れた家屋。
死んだ空気。
そこに立つ一人の男。
ユウミは“その目”で見ていた。
(……これは……)
自分ではない。
だが、確かに感じる。
この身体は――生きている。
足は止まらない。
導かれるように向かった先は、黒い沼だった。
命を拒絶する場所。
腐敗した水。
沈んだ死。
その中心で――
“それ”は目を覚ました。
ザバァァァァンッ!!
巨大な影が立ち上がる。
八つの首。
ただそれだけで理解できる。
――災厄。
だが。
(……違う……)
ユウミは、気付いた。
その存在は――
苦しんでいる。
「ォォォオオオ……」
唸りではない。
叫びでもない。
それは――
助けを求める声だった。
男は、静かに刀へ手をかけた。
「……救ってやりたい。九頭龍大神は、そう話していた」
その言葉に。
中央の首が、わずかに震える。
「ナ……ニ……?」
濁った声。
壊れかけた意識。
だが確かに――届いていた。
「本当は、優しい蛇だと」
その一言で。
オロチの身体が止まる。
沈黙。
そして――
涙。
黒く濁った眼から、静かに流れ落ちる。
「……オ……オォ……」
震える声。
わずかに戻る理性。
(……救える……!)
ユウミはそう思った。
だが。
次の瞬間。
ズルリ、と。
“何か”が、内側から這い出た。
「……ダメだ……」
声が歪む。
「もう……遅い……」
瘴気が、溢れる。
止まらない。
溢れ続ける。
「……喰らえ……喰らえ……全部……」
理性が、崩れる。
完全に。
男は、目を閉じた。
「……すまない」
その一言だけを残して。
刀を抜く。
ドクンッ――
世界が、静止する。
その瞬間。
ユウミは“理解した”。
この刀は。
命を救うものではない。
“解放するもの”だ。
斬ることで。
断つことで。
苦しみごと、解き放つ。
それが――
この刀の役割。
(……じゃあ……俺は……)
視界が揺れる。
現実が戻る。
血。
死。
崩れた魔物の山。
そして――
自分の手。
握られている。
刀。
(……それが……答え)
(魂を闇から解放して)
ユウミの瞳が、ゆっくりと開く。
その奥で。
“何か”が、完全に目覚めていた。
第6話までお読みいただき、ありがとうございました。
今回の話は「解放」と「救い」をテーマに描きました。ユウミの選択が、誰かにとっての救いであり、そして同時に彼自身にも何かを残していく——そんな回になっています。
ここから物語はさらに広がり、新たな出会いや、より深い“力の意味”へと進んでいきます。
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次回もぜひ、お付き合いください。




