No.61 珍獣とお嬢様とお茶会
ふわふわ、可憐なお嬢様の集まりのなのに……反応が二つに別れている。
名前を知らないので、あえて容姿で差別化をしてみよう。
主に私の容姿に爆笑。嫌がせしようと魂胆が見え見えの金髪、緑色の瞳のお嬢様を筆頭に金髪二名。
三名とも、煌びやかな金髪に碧や緑色、茶色の瞳の華やかな方々。
二つ目は、私に好奇心を動かされてキラキラしているお嬢様が二人。
どちらのお嬢様も、ブラウンの髪に暗め瞳の方々で、公爵家のルルーさんが誉める私に興味津々。
嫌悪感やら侮蔑は全くないにしろ、さも楽しそうに見られては……ちょっと顔が引きつりますよ。
「ルルー様、その色の薄い方……フフフッ、ごめんなさいませ。そちらの方は、どなたなのかしら?」
色の薄いって……まぁ、確かに青銀色の髪に金色の瞳だから色彩は薄いけど。
私的には、父様やお兄様とお揃いで気に入ってるけどね。
この人は、何となくローズニアと似てる気がする。
美少女にしては、ちょっと年が……な人達だけど。
三名とも同年代なのか、結束力が強そうだね。
ここで、姫なんて単語を出せばまた爆笑の渦に巻き込まれる事は明白。
それに、ルルーさんはちゃんと私を゛お花のお姫様゛と紹介しましたよ?
事実、今の私は花の都の国セレーネの唯一のお姫様。
お花のお姫様も、あながち間違えではないんだよ。
それを、爆笑して見下す。
不敬罪適用されるし、過激な話をすれば彼女達の命も摘み取る事も、家を潰す事も簡単に可能な訳ですよ。
私から挨拶なんてしなくても、礼儀に反する事もない。
まぁ、一応軽く挨拶はしとくけど。
「ディアティアです。以後、お見知りおきを」
無邪気に。ただただ、無害に見える笑顔と表情を見せとく。
言葉を短くしたのは、身分がバレた時に支障のない程度に抑えた結果。
サンエーリ様やリーフ様に、迷惑かける訳にはいかないし。
「先日、大変な所を助けて頂いたのがディアティア様で。本当に素敵だったんですよ。お兄様も驚いていらしたけど、きっと見とれていたと思いますわ」
「点数稼ぎなんて、さすが下級貴族は違いますわね。身体を張るなんて、女性のする事ではありませんわ」
ルルーさんが、゛お兄様゛と言った瞬間。
キラキラからギラギラになった金髪が自慢の三名が、扇で顔を隠しながら目は狩人になっている。
コワッ!あの三名はルルーさんと仲良くしたいのではなく、狙いはベルーナさんらしい。
面倒なので、一番目立つ緑色の瞳の金髪がA、青色の瞳がB、茶色の瞳がCにしよう。
金髪Aさんは、何を勘違いしたのか。
私を下級貴族設定にしちゃった。
筆頭がいたらキレちゃう勘違いだから。
「きっと旦那様も、一人もいないんじゃないかしら?だって、残念なお子様ですもの。きっと、ベルーナ様も呆れたんですわ」
おっと、意外と金髪Bさん鋭い。
最初は呆れ?怒り?どっちつかずの反応だった。
次の日に、きちんと謝罪と求婚されたけど。
そう、求婚されて返事を保留にしている。
ベルーナさんに求婚されたのが知られれば、更に面倒くさい事になりそう。
これは、黙っておこう。
「ふふっ、お姉様方に比べれば、私もディアティア様もお子様ですわね。大人の色香があるお姉様方が、本当に羨ましいですわ!」
ルルーさん素敵な笑顔で、素敵に嫌味を垂れ流しております。
私達=お子様。
金髪さん達=年増。
なんて方程式が、簡単に出来上がり。
頭の回転が凄まじくいい。
アピールの仕方も自然で、言葉遊びに気がついても咎めれば…年増と認めて自爆
。
ルルーさんは、本当に同年代なんだろうか?
返しがイチイチえげつない。
「そ、そうかしら?旦那様は、私に夢中だけど。もう旦那様を増やさないでくれって、言われてますのよ?ディアティアさんは、そんな苦労もなさそうで羨ましいわ」
「うちも。旦那様ったら焼きもち焼きで。愛されるのも大変ですわよね~」
「きっと未婚のディアティアさんには、想像もつかない事でしょ?」
金髪A・B・Cに、好き勝手言われてるけど、無知は怖いね。
自ら自分の首を絞めるんだから。
私も割りと愛されてる方だと、なんとなく感じているんだけどな~。
「私も婚約者に愛されてると、思いますよ?私にはもったいない婚約者で、私は幸せなんですけどね」
サンエーリ様とリーフ様には、きっと愛されてると思う。
優しいし、そのままの私を受け止めてくれる。
本当に私には勿体ない婚約者様達。
「貴女の婚約者様が、見てみたいわね~?きっと、妥協して年上とかの後妻か平民かしら?」
「まぁ、可哀想ですわ~。私の旦那様二人は、伯爵家と男爵家なんですのよ」
「うちの旦那様は、騎士をしていますのよ。やっぱり、地に足がついた地位は必要ですわよね~」
高笑いでもしそうな場面で、急に大きな魔力が動いた。
現れた人物を見て、お嬢様方は歓喜に包まれる。
真顔のサンエーリ様とリーフ様。
慌てた様子の緋色の髪のダンディーな紳士と、申し訳なさそうなベルーナさん。
あぁ、なんてメンツだろう……。
お嬢様方からしたら、鴨ネギの状態。
想像の通りに、金髪Aが妖艶な笑顔を浮かべながらメンツに話かけようと立ち上がる。
「サンエーリ様、お久しぶ」
「迎えにきたよ、私達の可愛いお姫様」
金髪Aの言葉を遮って、サンエーリ様は私の横に来て優雅に頬笑む。
完璧な甘い甘い雰囲気と笑顔で。
「心配したぞ?まぁ、ベルーナ殿の家だから最初は嫉妬したが、正解か?」
ポンポンと頭を撫でるのは、大きな手のリーフ様。
こちらも、色気垂れ流しですよ。
金髪ABCは、唖然としている。
何を見たのか信じられない様に。
「本当にうちの妹が、申し訳ありません。でも、やっぱりティア様はティア様ですね。お人好し過ぎますよ?ずっと侍って、見守りたいくらいですね。ノル様以外では、ティア様だけですよ?僕を動かすのは」
スッと側にくると、膝をついて私の手を握り頬笑むベルーナさん。
その頬笑みは、キラキラ眩しいくらい。
三人の顔面偏差値高ッ!
私は三人の勢いに負け気味。
「ご心配おかけしまし、た?」
に、なるんだろうな~。
ただルルーさんを送って終わるはずだったのに、現在はなぜか見下されながらお茶会に参加していて。
流されたんだから、私も悪いよね?
「あの、本当に大丈」
「サンエーリ様・リーフ様、私を覚えていらっしゃいませんか!?」
私の言葉をサクッと被せてきたのは、金髪A。
サンエーリ様は、チラッと金髪Aを見てすぐに不機嫌な表情を見せる。
「シーク・キートス。私以外に、私と対等に話せるのは誰だと思う?」
「そうですな~。この中では、お花のお姫様でしょうかな?なんせ、お花の国でもっとも王に溺愛され、信頼されていた王女ですからね」
さっきまで慌ててたのが嘘の様に、悠然と頬笑むダンディーな紳士。
ダンディーさんは、多分だけど曲者だと思う。
端々に感じる腹黒さと図太さ。
『お花の国』としか言わない、ちょっとした嫌がらせ。
それなりに勉強をしていたら、そのキーワードと私の色彩で分かるはずだし。
私の色彩の青銀の髪に金色の瞳は、父様とお祖父様の色なのは有名な話。
サンエーリ様とリーフ様は、金髪ABCを軽く睨むとダンディーな紳士に向き直る。
「この場所は、私もリーフも不愉快だ。新たな場所は用意出来ないだろうか?」
「新たな場所にご案内致します。今は妻の庭の花が見頃ですので、そちらでいかがでしょうか、花の姫様?」
「私は何処でも?サンエーリ様やリーフ様がよろしければ?」
「ティア様、僕も忘れないでくださいよ?」
拗ねたベルーナさんの、垂れ流れる色気がヤバい!
現に金髪ABC達は、うっとり頬を染めた後でキッと私を睨みます。
これは、的認定されましたな~。
「是非、私も参加させていただけませんか?」
「そうですわ!人数が多い方が、お茶会だって楽しいですよ?」
「ねぇ、ベルーナ様?」
金髪Cがベルーナさんに渾身の微笑みを見せる。
ベルーナさんは、金髪Cを見ずに顔を反らして鼻で笑う。
「そんなに家を潰されたいのかい?今ここで僕より身分が同等、もしくは上なのはサンエーリ様とリーフ殿。そして、お花のお姫様のティア様だけだ。後、少し前の会話も筒抜けだから……君達、不敬罪だね」
「えっ、……だって、彼女は」
「この薄い色彩で、気がつかないのは君達の勉強不足なんだよ。この綺麗な色彩は、セレーネ王国の色。知ってるよね、前王は月の化身の様な淡い青銀色の髪に、神秘的な金色の瞳の慈悲深い賢王だったと」
「因みに金色の瞳は神の愛し子とも言われて、溢れる魔力は神の加護であり恩恵ですからね~ティア様は、愛されるために産まれた希にみる存在ですね」
ハハハッと笑うのは、緋色の髪が綺麗なダンディーな紳士。
頷いているサンエーリ様とリーフ様、ベルーナさん。
ルルーさんまで、なぜか嬉しそうに笑っているよ?
その中で金髪ABCは、少し呆けた後にまだ信じられないのか私を睨み付けてるね。
「皆様は騙されていませんか?こんな野蛮な小娘が、美姫を排出してるセレーネの姫な訳ありませんわ!」
「そうですわ!きっと彼女は魔女なんですよ!お父様から聞いた事ありますわ、魔女は魔法で操るのです!」
言いたい放題ですな。
やはり、ここに来ても魔女ですか。
悪しき魔女呼ばわりでとは。
なかなかハードですな。
まぁ、悲しくないと言えば嘘になりますが、父様とお兄様には白魔女認定されてたので、あながち間違えでもないかも?
内心納得していると、サンエーリ様が満面の笑顔で追い討ちをかける。
「私達の愛しい白魔女さんだからね。あと、君達の家は金輪際私の前に現れないでね。私は魔法の国の王子だ。あ、もしかして私が魔法に耐性がないと言いたいのかな?」
「ティアはこの中の誰より綺麗だぜ。野蛮?人を値踏みして生きてるアンタ達より、数千倍は愛しいお姫様だよ」
「僕はティア様の優しさに、魔法のような恋をしてしまったみたいです。眩しいくらいに真っ直ぐなティア様に、惹かれて愛しくなる」
後半の誉め殺しですな。
顔が熱くなって、きっと今すごく顔が真っ赤だよ。
サンエーリ様とリーフ様でだいぶは、慣れたけど。
ベルーナさんの言葉は、直球ストレートで照れとむず痒さ。
いや、サンエーリ様やリーフ殿のも、照れくさいし恥ずかしいよ?
でも、ベルーナさんの言葉や態度は、二人とはまた違った恥ずかしい気が。
内心、私を分かってくれた人がいるのは心強い。
直球ストレートだけに、恥ずかしいのは免れ無いのだけど。
頬に手を当てて、熱を冷ます事にする。
金髪のお嬢様方を見ると、顔は青ざめてブルブル震えてる。
やっと事の重大さに気がついたみたい。
私が姫なのは、頑なに否定したいらしいけど。
サンエーリ様やリーフ様の言葉に、自分達の立場を思い出したみたい。
「不愉快には変わりないな。この三名にティアへの謝罪がなければ、それなりの罰がくだると思うといいよ」
バッサリご令嬢達を無視して、緋色のダンディーな紳士に話しかける。
場所の移動を求める。
「では、案内致します。ディアティア様もご一緒に。今、見頃なんですよ?ルルーは、この場を収めなさい。説教はその後ですよ」
「はい、お父様。お任せくださいませ」
にっこり頬笑むルルーさんが怖い。
水を得た魚の様に場を支配するのは、ルルーさん。
「お花のお姫様。すぐに場を収めて行きますわね!さぁ~て、私の素敵で理想的な王子様を、見下したお姉様方。最初にちゃんと紹介したのに……お姉様方、もうお会いする事もないかと思うと残念です」
私はサンエーリ様にエスコートされて、背中でどこか冷々としたルルーさんの声を聞く。
主導権はルルーさん。
それに異を唱えるご令嬢は、いなかったみたい。
立ち上がった直後に見たルルーさんは、緋色の髪のダンディーな人と親子だろうな~。
ふんわり雰囲気で仕留める。
なんともえげつないやり方が、そっくりなんだもん。
ベルーナさんも、ふんわり仕上げで仕留める辺り似ている。
似た者親子。
本人がいくら否定しても、彼等を知る八割は似た者親子だと答えるよね。
知らぬは本人ばかりなり。
なんて思えば、可愛く見えてくるから不思議。
勝手に幸せのお裾分けを、もらったみたいで胸がホッコリした。




