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転生珍獣王女奮闘記  作者: 千里
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No.6 ボスと遭遇


お茶を楽しんだ後。

兄様は二人を残して、父様に呼ばれたからと出ていきました。

私はと言うと…、時間があるだろう二人を城の案内を仰せつかりました。

気分的には、マジで?!が本心だよ。

王族の居住地スペースを案内した後に、私は一番人が集まる場所を案内した。


「ここが高貴な方々が群がるスペースになっています」


「群がる、ではありません。集うと言ってください」


お城で一部、貴族達が出入り出来るカフェスペースが用意されている。

宰相様いわく、社交場らしい。

ユーリのツッコミが入るものの、集うも 群がるも変わりないと思うのだけど…。

要は暇人の集まりに、変わりないと思う。


「高貴って…フフッ、ティアは王女でしょ?」


「私ですか?サンエーリ様、私は珍獣ですよ?高貴には当てはまりません」


「自分で認めているのかよ!」


「えぇ、まぁ…呼び名なんてどーでもいいですよ。生きてく上で支障なしです」


私が答えると、やはり二人は笑ってしまいます。

何か変なこと言ったかな?


「うん、本当に面白いね!」


「そうでもないですよ?」


アダ名程度で、死ぬ事はないしね。

目標はスローライフですから!

何と言われようと、私には屁でもない。

そんなんで凹んでいたら、きっと私は今頃ウジウジ・ネチネチの悪役になって死亡フラグが立つからね!


「ルナ様、もう少し猫被って下さい…」


「被ってるから、一応!でも、最初が不意打ちだったから今更かな~って」


残念そうに見るユーリに、私は肩を竦める。

だって最初から爆笑されたんだよ?

今更取り繕っても、違和感バリバリでしょ。


「うん、ティアはそのままで良いよ。本当に面白いから」


「だよな。こんな自由な王族見たことないわ」


「まぁ、私みたいな王族は…残念過ぎますからね。ダメダメ王女ですから!」


言い切って笑う。

だって、王女は私より妹の方が向いている。

適材適所。私は裏方がお似合いだし、その方が気楽だもの。


「言い切らないで下さい!」


「プッ…」

「アハハハッ!」


ユーリの言葉に被せるように、笑い声が響く。

また笑われておりますよ。

どこかにあるスイッチを、私は連打してるのかもしれない。

それにしても、よく笑う方々です。

私が死んだ魚のような目でいるのも、許してくれる方々ですが…誰かスイッチのOFFにする方法を教えて下さい。

まだ、肩を揺らして笑っている方々を見て…少々複雑な気分になります。


「あの、大丈夫ですか?」


一応、遠慮がちに声をかけてみる。

ユーリも複雑そうな表情で、左右に顔を振る。

誰かたーすーけーてー!

一瞬、前世のアニメに出てきた青いロボットを頭に浮かんだ。

ヤツがいれば、勿体ぶりながらも道具を出してくれるのに。


「ごめんね。あまりに見てきた王女様達と違うから…あ、悪い意味じゃないよ?」


「ごてごての化粧やら香水の王女より、全然親しみが持てるしな。何より面白い」


「ソーデスカ」


じゃ、どんな意味だよ、と聞いていいだろうか。

面白いって事も同じく。

でも、まぁ…化粧なし美貌なし。

オマケに色気なしのなしなし王女は、私ぐらいだから仕方ないか。

体型は普通なのに、色気なしの自分に疑問だけどね。

あ、珍獣か!今更だよね。


「ティア、折角だしお茶でもしていこうか?」


「そうだな。案内してくれたお礼に、な?」


「え、あの…お茶でしたらお二人でどうぞ?私はこの場所は……」


鬼門なんですよ。

ここでお茶を飲んで、うふふ、アハハ出来る場所じゃないのよ!

どうしたら、角が立たずに断れるか?


「どうして?私はティアとリーフと一緒がいいのだけど…」


「えーと、あの…」


サンエリー様の寂しそうな顔に、グサッと良心が痛みますが…流されたら大変。

きっとこの時間帯は、一番危険な時間だから。

そこへ、カツカツとヒールが響く。

私は「あぁ…面倒な!」なんて、思いながらも振り返り優雅になるように一礼する。


「なぜ、ここに汚点の貴女がいるのかしら?ここは貴女が来ていい場所ではないでしょ!」


バサッと扇を開いて、険しい顔で立っていたのは…魅惑的な身体を真紅のドレスに包んだ我が母。

名ばかりの母だけどね。

今日もばっちり化粧で香水がキツいよ。


「申し訳ありません」


「貴女の声なんて聞くに耐えないわ!どっかに消えておしまいなさ…あら、後ろの方々はどちらかしら?」


キターッ!

母の美しいモノを侍らしたい病。

私は内心ため息を吐き出す。

全力で猫を被るのも忘れない。


「…初めましてご婦人。リーフ・バトルです」


先に挨拶したのは、優雅に一礼するリーフ様。

確かに、誰か分からない人に王子様が先に挨拶する訳にはいきませんからね。

母は扇で口もとをかくして、ほくそ笑む。


「ワタクシは王妃・リリースですわ。是非、ワタクシとお茶でもいかがかしら?サンエーリ様もご一緒に」


狙いを定めた目をしている母に、どうしようかな~なんて思う。

兄様に案内を頼まれたからには、ちゃんと約束は果たしたいけど…これ、いかに。

サンエーリ様がどう考えるかで、話は変わってくるし。

サンエーリ様を見ると、一瞬顔をしかめてすぐに満面の笑顔を見せる。

ザワッと背筋がしたのは、気のせいだと思いたい。

小説では腹黒じゃなかったはずなのに…背筋がザワザワするのが止まらない。


「いいえ、私はティアに案内を頼んでいるので」


「それでしたら、ワタクシの娘・ローズニアに案内させますわ。あの子なら王女としての作法も問題ありませんし、殿下もきっと楽しいはずですわ!」


「いいえ、お誘いは有り難いのですが、私はティアが良いのです。彼女と一緒にいると楽しいので」


サンエーリ様は言った後、すぐに殺気のこもった視線が突き刺さる。

あー、火に油を投入したみたい。

これは八つ当りの嵐コースまっしぐらだね。

思った通りに、パチンッと閉じた扇が顔面目掛けて飛んできた。


「本当に貴女は邪魔だわっ!ワタクシ達の邪魔ばかり…卑しい魔女だけありますわねっ!」


ベシッと当たった扇は、そのまま地面に落ちていく。

避けると神経を逆撫でするから、あえて避けない。

面倒は少ない方が良いしね。

幼少から身に付けた処世術の一つ。


「ディアティア、覚えてらっしゃい!」


母は紅い唇を噛んで踵すを返す。

悪役よろしくな捨て台詞に、呆れ返ってしまう。

母は相変わらず、我が道を行く通常運行らしい。

ふぅ、と息を吐き出して扇を拾う。


「ユーリ、コレをいつものようによろしくね」


「分かりました。精々悪態つかれた分、コレで備品を買いましょうね。今日のは…フラスコが買えますね」


ユーリに扇を渡すと、ニッコリ人好きする笑顔で毒ずく。

目が笑ってないし、冷気が漂っているのを見ると…やっぱり怒っているみたい。

こっちも安定の、母…王妃嫌い。

もはや末期の病気だね。


「それをどうするんだい?」


「フラスコを買うって…まさか」


私達のやり取りに驚いた表情をする、サンエーリ様とリーフ様。

私は先ほどの大人しい態度とは、打って変わってほくほく顔で頷く。


「正解です。あの人は、私に投げつけたモノはゴミ行きなので…それなら再利用しようかな~と」


「品物だけは良いので。モノだってただ捨てられるよりは、誰かに使って貰える方が幸せでしょう」


「備品の資金も手に入って一石二鳥なのです!あ、お見苦しいモノをお見せして申し訳ありませんでした」


すっかり言い忘れていた謝罪を口にします。

フラスコの資金にウハウハで、礼儀をコロッと忘れる所だったよ!

私の態度に目を見開いた後、サンエーリ様は私の手を優しく包みます。


「私達の事は気にしなくていいよ。それより、案内の続き頼んで良いかな?」


「あの…はい。私でよろしければ…」


死んだ魚の目になるのは許してね。

王子様の距離感に、軽く引いているだけだよ。

近いの!ものすごく近いっ!

心臓に悪いったら…。


それでも、頑張って笑顔を張り付けて、返事をした私は偉いと思う。

兄様…私をどうしいのでしょうか?

心での問いかけは、手を握り直されてふっ飛んだ。



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