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転生珍獣王女奮闘記  作者: 千里
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44/66

No.44 好奇心旺盛です~王子様は強気


<ディルアルside>


照明の灯りユラユラ揺れている室内。

雰囲気がある部屋に、ティアは毎度同じ反応をする。

答え、ドン引き。

でも、あえて言わせてもらうなら……この知識の根底にあるのが、ティアから教えてもらった事だと言っておこう。

なぜ、そんな知識があるか聞いたら、読書中にたまたまそんな本があったとか。

つまりは、好奇心。

六歳のティアは満面の笑顔で、尋問相手の暗殺者をじわじわイビっていた。

そして、魔力の少ない僕に教えてくれた魔法は……正直、あの時の様にじわじわ系。

ティアにはプライドより、命を大切にしろと言われてるし。

まぁ、僕的にも同じ意見だ。

いずれ王になる自身は、多少汚れようとも生き抜く事を選ぶべきで。

ごく当たり前の事で、王太子としては普通の返答だと思う。


「まだ話さないの?私は良いけど…辛いのは君だよ?」


極上の笑顔でゲス一名の膝に、四角く切った石を乗せているのはサンだ。

僕のやることを的確に当てたサンとリーフは、嬉々として参加したいと打診があった。

最初ダメ出ししたのはティア。

それを、今後の勉強のためとねじ伏せたのはサン。

好奇心をそのままに出来ない。

昔からそうだったんだよねサンは。


「サン、甘いだろ?ほら、こうすれば……」


「くっ!……ち、くしょ……っ!」


「へぇ~まだ余裕みたいだね?もう一個行こうか?」


ぐっと、膝に置かれている石に足で負荷をかけるリーフ。

キラキラ笑顔で、魔法を使って石を追加するサン。

楽しそうで何より。

それに、若干引いているティア。


「もしかして新しい扉開いちゃったとか?小説にそんな設定なかったよね?!」


前半の聞き取った言葉に、僕は言いたい。

是非、言ってしまおう!


「サンとリーフのあれは、もとからだよ?まぁ、多少は僕が知識は教えたけどアレンジは本人達だから」


「素質があったんじゃない~?ほら、ティーちゃんだって、小さい時から尋問得意だったでしょ?」


「誤解を生むような言い方しないでよ~!あれは私だけの知識じゃなくて、先生の知識とハーツの知識も入ってるじゃん!」


初めて見た時のあれは、先生の知識も入ってたんだ……って、何を教えているんだスノーリー先生!

先生って真面目で穏やかだったのに、ティアの前だとヤンチャ過ぎやしないか?

本当に同じ先生だったか確認したいぐらい。

僕はミノムシにして転がしているゴミ一名の顔面に、水をプレゼントする。

少量の風と水ならある程度操る事が出来るけど、僕にはそれが限界。

ティアやハーツみたいに水の球を時間制限なく顔に押し付けたり、氷の氷柱を多数出して脅すなんて事は出来ない。

土に体を埋めたり、火であぶってみたり。

自由に魔法を使えるティアとハーツは、アイデアを駆使して相手の心を折って、有益になる情報をゲットする。

二人ほどアイデアはないものの、なかなかエグい言動と魔法を使うのがサンとリーフ。

僕は魔力が少ないから、アイデアと工夫で勝負だ。


「ほら、吐かないと~!水足りなかった?」


「うっせぇ!お前なんかんに、吐いてたまる」


ペっと僕に唾を吐き出したゴミ一名を、ゴスッと蹴ったのはティア。

冷たい空気をまとったティアに、ハーツは残念そうにゴミ一名を見る。


「バカでしょ?立場分かっているの~?分かってないでしょ」


「吐きたくないなら、吐きたくなる様にするだけ」


笑顔なのに目が笑ってないティアが手を振ると、無数の氷柱が空中に浮かんでゴミ一名の顔ギリギリで止まっている。

きっともう一度手を振れば、簡単に顔面ダーツ状態。


「女の子だから、選ばせてあげるよ?顔面に氷柱と、足と手に貫通するのと、吐くのどっちにする?」


「温いわ!激ぬるだわ!目にクリティカルヒットしちゃいましょう?もちろん、一個ずつ丁寧に仕事するわよ!」


「…っ、ヒィ!」


ティアとハーツの変なスイッチ押したからには、ちゃんと責任とってもらわなきゃね。

ゴミ一名が煽った結果だし、諦めてね。

ティアは、周りの人を蔑ろにされるのをものすごく嫌う。

今回は、僕に唾を吐きかけたからティアのスイッチが入った。

ハーツはティアのスイッチが入ると、自動的にONになる。

後は自由に動き回る、エルフの覚醒時間となる。

ハイエルフの膨大な知識と、性格がハッキリする時間だ。


「カウント始め!十~九~八」


「早くしなきゃ、貫通式開いちゃうよ?」


小さく手を振ると、氷柱が更に近づいていく。

本当に寸止め。

ゴミ一名は悲鳴を上げて降参する。


「アタシは言われた通りにしただけ!リーダーが依頼された事をしただけだ!依頼主は、アタシは知らない!」


叫ぶ様にして言ったゴミ一名の目の前の氷柱を消し去って、ティアは溜め息を吐き出す。


「捨て駒だね。依頼主からしたら、火を勝手につけた。私は知らないで通るもんね」


「水掛け論になるね。サンがゲスから何か聞き出せたら良いけど……」


「実に楽しそうね~日頃の鬱憤晴らしかしら?王子様は鬱憤溜まりそうだものね~?」


笑顔でイビるサンと足で攻めるリーフ。

腹黒いサンは、ここぞとばかりに黒さを発揮する。

納得気味なのはハーツ。


「純粋に楽しんで見えるのは、気のせいかな……」


「大丈夫よ?ティーちゃんといる時の方が、二人とも今より楽しげだから!」


額に手を当てて言うティアと、なぜか楽しげなハーツ。

ハーツの心配は、斜め上に反れているよね。

わざとなのか本気なのか謎なために、突っ込めないのがハーツのズルいところだ。


「あらあら、ダメじゃない!疲れは美容の敵よ~ティーちゃん、少し休みましょう?隣の部屋借りるわね?」


「うん。一人落としたしチョコレート用意してあるから、ゆっくり休んでね?」


僕の言葉にティアは少し迷う。

大丈夫だよ、と説得して部屋を出たのを感じて、サンはヒュンッと薔薇のムチを取り出すとパシッと地面を叩く。


「空気の読めるハイエルフ殿には、敵わないな~。さぁ、遊びは終わりだよ?」


「だな~。分かってるけど、ちょっと悔しいよな。ほら、まだ頑張っちゃうの?」


「ちっ、い、言わねーよ!あの方は本気だしたら、簡単に消されちまう……」


ハーツを評価しながらも、手を抜く事はしない。

ゲス一名は、顔色をなくしながらも踏ん張っているみたいだ。

゛あの方゛って事は、それなりに地位のある人間。

少人数にせよ、消せる人材を持っている人間なんて本当に一握りだ。


「どっちにしても、任務失敗の結末は分かるよね?コトと次第によっては、僕なら少し助けてあげられるかもよ?」


いい材料になるなら、生かしとく価値はあるからね。

材料にならないなら、すぐに消してしまうけどね。

これが僕達とティアの違い。

ティアは、どんな人間の生も自ら摘み取る事はしない。

どんなに消した方が楽な人間でも、ティアは絶対に一歩を踏み間違えない。

もし、ティアが簡単に消す人間なら……今回父上が綺麗にしようとしている面子は、 問答無用でティアの餌食となって消え失せてるはずだ。


「じゃ…言えば命だけは、助けてくれるのか?」


「嘘か本当かイマイチ信用出来ないけどな~どうする?」


「そうだね。適当に言われても、確かめるすべないしね」


パシッとすぐ横にムチが、ゲスを微かに弾く。

脅しを忘れないのは、さすがサン。

薔薇のムチは本当に痛いと思う。


「じゃ、嘘だと分かったら呪われる魔道具着けてもらうからね?」


「お、おう。……分かった!嘘がなかったら発動しないんだろ?」


「そうだよ。大丈夫、希代の白魔女と賢者殿が製作したモノだから」


控えていたネイルは、すぐに動き出す。

奥の控えの間に保管している、魔道具を持ってくるためだ。

以心伝心な側近を持つと、本当に動きが早くて助かる。


「ティアが呪い系の魔道具作るなんて、ちょっと意外だな~」


「そうだね。嫌いそうなイメージだもんね?」


ムチを消したサンと腕組みしたリーフが不思議そうに、首を傾げてみせる。

確かにティアは呪いは嫌う。

ただ、ある条件があれば『自業自得』として納得する。

だからどの道具も、逃げ道は残されている。

この魔道具は『嘘を吐かない』が条件。

その約束さえ守れば、呪われる事はないんだし。

ティアは優しくても、王族の役目だって分かってる。

その間で揺れる心を、僕はティアに大切にして欲しいと思っているんだけどね。


「逃げ道は用意されているし、それを無視するバカに慈悲はいらないでしょ?子供には使用しない事を条件に、提供してもらっているんだよ」


「作り方教えてもらおうかな…。うちの国でも使えるよね?」


「サンぐらい魔力あれば、もしかしたら大丈夫かもよ?」


ネイルが箱を開けて、僕に差し出してくる。

相変わらず不気味な雰囲気のある腕輪だ。

僕は無言で転がっている三人の腕に、腕輪を装着させる。


「うわっ、気持ち悪っ!」


「いやぁぁ!この腕輪変だわ!」


「大丈夫。嘘を吐かなければ、最後は外してあげるから。嘘を言えば、じわじわ毒が回って死ぬけどね」


皮膚にぴったりとつく腕輪に慌てる三人に、僕は笑顔で詳細を知らせる。

毒はハイエルフのハーツのチョイスだから、ガチでヤバいと思うけどね。


「さぁ、キリキリ吐いてもらおうかな!」


「私も僭越ながら、水芸を披露しようかな?まだ練習中だから、色々と間違ってしまうかもしれないけど」


「大丈夫だろ。無駄に根性ありそうだし」


サンとリーフの両手には、水がふわふわ浮いている。

サンの水の固まりに至っては、グルグル高速回転しているし。


「さぁ、上手に言えるかな?」


その言葉を聞いた三人は、ガクガクと頷いて顔色を無くしていた。

私は楽しげな二人に任せて、見物する事にした。

まぁ、答えを聞くまでもなく…あの人の差し金なのは分かっているけどね。

僕と父上の邪魔したい人間は、それなりにいるけど…人間を雇えるのは数えるだけ。

その頂点にいるのは…あの人。

追い詰めるためにも、使える駒は多い方がいいしね。

父上が粛清に向けて動いているんだから、僕もそれを手伝うつもりだ。

ティアもきっとそうだろう。

それなら、協力して倍の力にしてやる。

最後かもしれない共同作業は、想い出になる事間違いなしね。


そう思うと、心が少し浮き出すのが分かった。

あと一週間の妹のふれあいが、敵の炙り出しなんて僕達らしくて笑えた。



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