No 22 暁の白魔女・オババ様
二時間睡眠三日目。
やっとオババ様に渡せる薬が出来た。
日常に色々ありすぎた割に、出来ばえは上出来。
ヒマの花を使った回復薬は、値段の割に効果もあってなかなか上手く出来た。
ヒマの花は、珍しい花ではなく観賞用の花だ。
花のエキスの抽出も、魔法を上手く使えば誰にても出来る。
今日は予定もないし、オババ様の所に行こうと決めて準備する。
今日のお供はユーリ。
そこに、控えめなノックの音に、私はとりあえず出てみる。
「やぁ、今日は一緒に遠乗りに行かないかい?」
「よっ、何か急いでる用がないなら行こうぜ」
顔を出したのはサンエーリ様とリーフ様。
軽装に身を包んでいる事から、お誘いは聞き違いじゃないらしい。
断りずらいけど……オババ様には相談もあるし。
正直に伝えると決めて、二人に向き直る。
「ごめんなさい。今から暁の森に行くんです」
「白魔女様に会いに?」
「はい。薬も出来たし…聞きたい事もあったので」
「それは、私達も一緒に行きたいな」
ニッコリ笑顔が怖いです。
逃がさないとばかりの雰囲気に、私はまた捕まった!と項垂れる。
それをサンエーリ様達が、嬉しそうにしていたとも知らずに。
ユーリはその話を聞いて、留守番をするようにお願いした。
ポカポカ陽気に誘われて、大きなあくびをしてしまう。
今は馬の上で、サンエーリ様と相乗りしている。
最初は密着具合に落ち着かなかったけど、意識されてない相手にドキドキしているのが滑稽過ぎるので、意識を切り離す事にした。
ドキドキしているなんて認めない。
暁の森に行くルートは二つ。
街を抜ける近道と、街を回って逆側から入るルート。
今日は馬がいるから、逆側からのルートで少し遠回りする。
「この辺は静かだね」
「そうだね。荷物を乗せた馬車がよく通る道で、本来は人だけはあり得ないから」
私が知っているのも、欲しい苗を持ち帰るのに、オババ様から聞いたから知っているだけだし。
普段は使ったりしないもの。
「ちょっと得した気分だな。こんな綺麗なのに勿体ないよな~」
森の入口に来ると、キラキラ咲き誇る野花に、綺麗な青空。
暁色の木々は、サワサワと風に揺られて爽やかな音色を発てる。
「そうだよね。皆、暁の森は危険だって言うけど、本当は綺麗で優しい森なんだよ」
魔物もたまに出るけど、いつも変わらずに迎えてくれるこの森は大好きだし、お気にいりな場所でもある。
「馬も一緒で魔女様は怒らないかな?」
「大丈夫ですよ。前にもハーツの馬車で来てきてるいるから」
嫌味は言われるけど、それがオババ様の愛情表現だから気にしない。
そんな天の邪鬼なオババ様は、いい人なのにかわりないし。
そのまま森を進むと、いつもの場所でパチンッと何かが弾けた音がする。
「オババ様~!」
馬から軽く飛び降りて、ちょっと大きめな声で声をかける。
すぐに、答えが帰ってくる。
「なんだい!もう少し静かに出来ないのかい!」
「静かにしてたら、無視するでしょ?私が待ちぼうけくらったの忘れてないからね!」
「そうかい。あたしは忘れちまったね」
「もう、いつもそれなんだから!」
「馬なら適当に繋いでおきな。逃げることはないだろうしね」
サンエーリ様とリーフ様は馬を木に繋ぐと、優雅に礼をする。
「またお目にかかれて光栄です」
さすが王子様。
眼福な所作であります。
しかしながら相手はオババ様。
「王子様も暇なんだね。 それとも、運命とやらを見つけたのかい?」
「いえ、まだなんですが…是非、ヒントをもらいたくティアに、頼んで付いてきてしまいました」
「全く仕方ないね。中にお入り。話はそれからだよ」
なんだかんだで面倒みのたいいオババ様は、ドアを開けて顎で誘う。
ツンデレなオババ様が、可愛いと思ったのは秘密。
「それで、話ってなんだい?」
オババ様が座ると開口一番聞いてくる。
前置きもないのもオババ様らしい。
私はとりあえず質問をしてみる。
「オババ様は昔、失せ物探ししていたでしょ?」
「それがどーしたんだい?」
「探して欲しいモノがあるの」
「探しモノはあたしより、アンタが得意だろ?」
ふんっと、鼻を鳴らしてお茶をすするオババ様。
私はそれでも食い下がる。
「それが出来たら苦労してないよ!魔力の判別が出来なくて、今は何も出来ないの」
私の言葉から何かを読み取ったのか、オババ様はサンエーリ様を指差して呟く。
「失せ物は、息子のモノだね?」
「正解!なんで分かったの?」
「それくらいお見通しさ。で、無くしたのは宝石だろ?」
「どうして…それを…」
バシッと言い当てたオババ様は、そのまま目を閉じる。
サンエーリ様とリーフ様は、難しい表情でオババ様の言葉を待つ。
次にオババ様が目を開いた時は、小さく溜め息を吐く。
「それが運命だからさ」
「運命…?」
サンエーリ様が呟くとオババ様は頷く。
「そうさ。運命だ。その宝石は息子や血縁者を導く運命なのさ」
「俺達を導く運命?」
「あたしが言えるのはここまで。後は自分達で考えな」
二人は考え込むように、言葉を繰り返す。
運命とは何か?
難しい問いかけに、私も眉間にしわを寄せてしまう。
「ヒントはティアにあるよ」
更に混乱してしまう。
ヒントが私?
なぜ、私なだろう。
サンエーリ様とリーフ様の視線が突き刺さる。
そんなに見られても、答えは持ち合わせてないから!
「この話は終わりだよ。ティアの用はそれだけかい?」
「薬出来たから持ってきたんだ!」
「忘れていたのかい!」
「忘れてないよ!ちょっと意識が違う方に行ってただけ」
「本当に…」
オババ様は呆れた様に、やれやれと肩を竦める。
私は持っていたアイテムボックスから薬の瓶を取り出す。
「これで精一杯!」
瓶を渡して確認してもらう。
その間も、サンエーリ様は上の空で何か考えているみたい。
「うん、今回はいいみたいだね」
「大変だったんだよ…ヒマの花に出合うまで試行錯誤したんだよ」
「まぁ、頑張ったんじゃないのかい?」
私とオババ様が話している時、急にサンエーリ様が私の手を握る。
急にドキッとして、動きを止める。
「あぁ、ごめん。なんとなく…なんだけど」
「え、はい。あの…」
「じゃ、俺も」
「あの…」
ドキドキして口から心臓が出そうになる。
なんのフラグですか?!
焦ってオババ様を見ると、満足気な顔をしている。
「運命とは身近にあるもんだ」
「オババ様、笑顔でいないで助けてよ~!」
「いいじゃないかい」
「えー、ちょっとどうしたんですか?!」
聞いても答えてもらえなくて。
オババ様の家にいる間、ずっとサンエーリ様とリーフ様は手を握ったり、髪に触れたりとピンク色の空間になった。
これは、なんのフラグでしょうか?




