No.15 貴女だけには渡さない~妹姫の策略
<ローズニアside>
お城が静まった夜更け。
私は部屋をそっと抜け出し、ある部屋に向かう。
途中で人とすれ違わない様に、慎重に道を選びながら目的の場所につく。
「…気配では大丈夫よね?」
ここは、あのエメラル国の王子様の泊まっている部屋。
鍵は母に用意してもらっていた。
既成事実を作ってしまえと。
でもそれでは面白くない。
だから、お金で侍女を買って香を炊いた。
深い眠りにつくフィールの花の香を。
どんなに、毒に耐性があっても、この国にしかないフィールの花は盲点よね。
そっと忍び込むと、寝室に向かう。
きっと目的のモノは、ずっと身につけているはず。
目的のモノとは、エメラル国の王子が産まれる時に持っている宝石。
それは、エメラル国をちょっと調べれば
知ることが出来る。
そして、だいたいは皆身につけていると。
だから、すぐに気がついた。
誕生日パーティーで、サンエーリ様が首に銀の鎖が見えたから。
鎖の先に何があるか分からないけど、正装でも取らない所をみて想像がついた。
それからは、ある人にフィールの香を頼んで用意して今にいたる。
眠りこけているサンエーリ様は、寝顔も綺麗でうっとりしてしまう。
こんな人に、愛を囁かれたら…フフッ。
それなのに…サンエーリ様は私も見なかった。
「サンエーリ様が悪いのですよ?」
お姉様なんて、瞳に映して微笑むから…。
私に目もくれずにお姉様を見つめるから。
首に掛かる鎖を引っ張る。
プチッと切れてトップに輝くのは、水色の石。
それをハンカチに包んで胸の間にしまう。
そのまま部屋をそっと出て、人のいない道を辿って部屋に戻る。
侍女はもう休んでいるし、皆私は寝ていると思っているはずだ。
踊り出しそうな気持ちを抑えて、部屋に 戻ると小さな隠し扉を開く。
これを知っているのは、私だけ。
ハンカチに包んだまましまうと、私はガウンを脱いでベットに入る。
高揚した気持ちを抑えて、込み上げてくる笑いを布団を被って隠す。
明日には騒ぎになるはずだ。
そしたら、見つけましたと返そう。
きっと感激してお茶にでも誘ってくれるかもしれない。
あのお姉様が好かれるのだもの、私ならプロポーズしてくれるかも。
どちらにしても、未来は明るいに違いない。
私は目を閉じて明るい未来に意識を馳せた。