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転生珍獣王女奮闘記  作者: 千里
12/66

No.12 アレはなんだ?~仕事馬鹿と珍獣


<イルクside>


揺れるカーテンを見ながら、先程の光景を思い出す。

場違いなドレスを纏った人物を見たとき、あるのは苛立ちだけだった。

そんな彼女を、医局長は孫を見つけた祖父の様な目で見て手招きしていた。

医局の鬼と言われている医局長の姿は微塵も感じられずに、ガッカリしたのは必然的だろう。


その考えはすぐに覆された。

いい意味で斜め上を行く人物だった、と。


「ちょっと違和感があるかもしれませんけど、少しの我慢ですからね?」


その言葉と一緒に漂ったのは、真っ白な粉雪のような光の粒。

患者を包み込む様に、粉雪が辺りを漂う。

息を吸うかの様に、簡単に使って見せる治癒魔法は…昔に滅びたとされている古代魔法だった。

古代魔法の研究をしている俺には、それがどれだけ難解であるか。

そして、貴重であるかが分かる。

火をつける程度の古代魔法なら俺でも使えた。

それまでに、数年を要したのは苦い思い出だが。

だが彼女は、簡単に治癒魔法を使ってみせた。

その時の衝撃は計り知れない。

無性に欲しいと思った。


「研究対象として、だとおもったんだがな…」


ポツリとこぼれた言葉は、自分に問いかけているようで。

実際に実験を手伝ってくれたらと、本気で思ったし、オーラを見ても人柄はうかがえた。

オーラというのは一人一人違っていて、負の感情が強ければ淀む。

昨今では、オーラが見える者は少ない中で自分は見える側の人間。

オーラはその人物を的確に表す。

負が蔓延る城で、意外に便利な能力だと自負している。

そんな俺から見ても、ディアティア姫のオーラは、月の光のように綺麗に澄んでいた。

吸い付けられた様に、彼女と一緒にいられる理由を探す。


「嫁はいい考えだとおもったんだけどな…」


男女でいるなら、夫婦になるのが手っ取り早い。

提案してみるも、あえなくスルーされてしまった。

患者が優先なのは分かるから、黙って見守る事にした。

返事は治療後に、ゆっくり聞き出せばいい。

最後の治療が終わると、医局長から驚愕の事実がもたらされる。

彼女がディアティア姫だと?!


「えぇ、一応…」


聞いていた話と違う事に、驚きで脳内が一瞬停止した。

我が儘な醜女。関わると呪われる。

どれも嘘でしかない噂に、何とも言えない鬱々とした苛立ちが募る。

しかし、本人は平然と受け入れていた。

余計にやり場のない、感情が心をしめる。


「噂とは本当に無責任だな…」


その噂を信じていた俺も変わらないか。

この感情もそこから来ているのかもしれない。

それでも、彼女が欲しかった。

あの魔法を見たから余計に。


風でめくれる本のページを目で追いながら、どうすれば彼女の近くに行けるか考える。

彼女は十五歳で、今日は誕生日パーティーと称して婚約者候補を探す日だ。

俺にも招待状は届いていた。

ただ、面倒で行かないと決めて、研究室に閉じこもって仕事をしていた。

順調に進んでいた研究の途中、怪我人の治療の要請が入る。

そして、ディアティア姫に出会った。

出会ってしまえば、自然と気持ちは彼女に向かっていく。


「…うむ、どうすれば…」


未知の感情が溢れてくる。

分からないから追及したくなる。

研究者の性だろうか。

彼女の性格的に、正攻法で行かなきゃ逃げられてしまう可能性が高い。

じゃ、今何が出来るか?


「まずは…アプローチか?」


アプローチと言っても、誘われた事も誘った事もない。

参考にするモノがない。

考えた結果。

彼女は白魔女と言われていた。

それたら研究に誘えば良いのか?

きっと、彼女も研究は好きだろう。

彼女の研究に付き合うも、面白そうだ。


そうと決まれば、手紙を送ろう。

少しでも印象に残る様に、手紙に魔法を仕込んでみるのもいい。

どんな返事が届くか…。

自然と顔が緩んだのが分かる。


不思議と気分は良かった。





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