74話 高原の町
キラさんの事を意識してしまって、なかなか寝付けませんでしたが、結局いつの間にか眠ってしまったみたいで、気がつくと朝になっていました。
キラさんはまだ眠っています。
・・・イケメンは寝顔も美しいです・・・
キラさんの寝顔を見てそんな事を考えながら、ふと外を見ると、隣の結界の中でソラ君とレィナちゃんが大騒ぎしていました。
「キラさん!起きて下さい!結界の解除をお願いします」
「んん、ルルさんおはようございます。どうしたんですか?」
「ソラ君たちが大変な事になっています」
ソラ君とレィナちゃんが隣の結界の中で大げんかしていますが、声が聞こえてきません。
結界が声を遮断しているのです。
「とにかく、結界を解除します」
キラさんが結界を解除すると二人の声が聞こえてきました。
「なんであんたがあたしと抱き合って寝てるのよ!」
「知らねえよ、お前が抱きついてきたんだろ!」
「あたしのおっぱい吸おうとしてたじゃない!この変態!」
「裸で寝てるから勝手に口にあたってただけだろうが!」
「二人とも落ち着いて下さい」
ボクは結界が解除された事に気がつかないで口論を続けている二人の仲裁に入りました。
「あーっ!ルル!なんであたしを出し抜いてキラとエッチな事してんの!」
「おい!ルルはオレのだぞ!返せよな!」
「ボクとキラさんはエッチな事なんてしてません!」
・・・こっちにとばっちりが来ました。
「とにかく話を聞いてください!それとレィナちゃんは早く胸をしまって下さい!キラさんにも見られてますよ!」
「やだ!恥ずかしい!」
レィナちゃんは慌てて胸を隠しました。
キラさんは顔を少しだけ赤らめて向こうを向いています。
レィナちゃんは昨日は下着を着けたまま寝かせたはずなのですが、きっと寝ている間に自分で外してしまったに違いありません。
結界の中とは言っても少し寒いので二人は無意識のうちに同じ毛布の中で抱き合っていたのでしょう。
それにしてもレィナちゃん、ソラ君の前では胸を丸出しで平気だったのに、キラさんの前では恥ずかしいみたいです。
ソラ君がほんとは女の子だって気がついているわけでは無いと思いますが・・・
レィナちゃんとソラ君が身なりを整えたところで事情を説明しました。
一応二人とも納得してくれたみたいです。
・・・ボクとキラさんに何もなかったというところに関しては、どうも疑惑が残っているみたいでしたが・・・
ボクたちはそれから移動を始めました。
しばらくはこの高原地帯を移動する事になります。
つまり、空気が薄い状態が続くという事です。
「高原で一晩寝たのでだいぶ体が慣れたのではないですか?」
キラさんがソラ君とレィナちゃんに尋ねました。
「ああ、昨日よりは楽になったが、激しく動くとすぐに息が切れるな」
「ええ、ちょっとした事でも呼吸が苦しくなるわ」
「ソラ君は前にここを通った事ががあるんですよね?」
ボクはソラ君に聞きました。
「ああ、前に通った時も苦しかったのを覚えている。一気に走り抜けようと思ったんだが息が続かなかったな。だが長居したくなかったんで最短で通り抜けたな」
「皆さんは剣の修行をしているんですよね?」
キラさんがボク達に聞きました。
「はい、三人とも剣士の修行をしています」
「それでしたらここで修行をしていくといいですよ。高原の薄い空気の中で修行すると、効率の良い呼吸方法が身につきます。剣や格闘技の修行をする人はあえてこの国に来て修行する人も多いみたいですよ」
「そうなのか?」
「はい、そういった修行に来た人のための道場もたくさんあるみたいですよ。もし、旅の日程に余裕があれば、少し修行をしていかれてもいいのではないでしょうか?」
「面白そうね!ちょっと顔を出してみたいわ!」
「一日を急ぐ旅でもねえからな、それに旅の間にもっと強くなる事も必要だ」
レィナちゃんもソラ君も剣の修行となると食いつきが違います。
「では次の町で道場を探してみましょう」
その日の夕方には高原の町に着きました。
大きな町ではありませんが宿屋はあり、部屋は空いていたので4部屋借りました。
レィナちゃんはキラさんと一緒の部屋がいいと言ったのですが、キラさんに却下されました。
翌日はとりあえず冒険者ギルドに行きました。
しばらく滞在するのであれば、お金も稼いでおきたいし、修行のための道場の情報も冒険者ギルドで入手できるのではないかという事になったのです。
冒険者ギルドでは、薬草採取の依頼が多数出ていました。
この国は高原でしか手に入らない特殊な薬草の産地らしくて、国外からの注文も多いそうです。
薬草採取と言っても、地形が険しかったり、危険な魔物に遭遇する事もあり、難易度が高いので高値で取引されるため、それなりにいい稼ぎになるそうです。
そこで薬草採取の依頼は後で受けてみる事にしました。
魔物もこの高原地帯独自の魔物が出現するみたいです。
道場の事を受付のお姉さんに聞いたら、やはり他国から剣術や格闘技の修行に来る人は多いらしくて、いくつかの道場を教えてもらいました。
とりあえず一番お勧めの剣術道場に顔を出す事になりました。
道場に付くとソラ君が声を上げました。
「たのもう! 一番強い奴はどいつだ?オレが倒してやる!」
ソラ君・・・それじゃあ道場破りです。




