表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/87

50話 入って来たもの

 ボクの体の中に流れ込んできたのはソラ君の『念』でした。




 ボクは、何を一人で勘違いしていたのでしょう。


 そうです・・・ソラ君はこういう人です。

 常に修行の事しか頭に無いのです。


「ふふふっ」


 ボクは思わず笑いがこみ上げてきました。


「どうした?ルル」


「あははは!・・・何でもないです・・・ふふふふっ」


 笑いながら目から涙がこぼれてきました。


「大丈夫か?ルル」


 ソラ君が心配そうにボクの顔を覗き込んでいます」


「大丈夫です、ソラ君!大好きです!」


 ボクはソラ君を抱きしめてキスをしました。


 ・・・ちょっと触れるだけの軽いキスですが・・・


「どうしたんだ?急に!」


 ソラ君がちょっと動揺しています。




 少し落ち着いたところでソラ君が話し始めました。


「ようやく落ち着いたみたいだな。だが、その様子だと『念』を感じ取る事は出来たみたいだな」


「はい、ソラ君、他人の体に直接『念』を送る事なんて出来たんですか?」


「そういう『念』の使い方を極めればそれを利用した攻撃なんかも出来るらしいな。オレはそこまでは習得していないが」


「そうですよね?ソラ君は剣の技を強化する使い方しかできないって言ってました」


「これら会いに行く奴は、そういうのが専門の奴だからいろんな使い方を知ってる。オレも教わったんだがうまくいかなかった。他人の体にまともに『念』を送り込めたのは初めてだ。やっぱりルルとは相性がいいんだな。」


 ソラ君に相性がいいと言われて、恥ずかしいけど何だか嬉しい気分になりました。

 

「それで、今のはどうやったんですか?」


「条件を揃えれば伝わりやすくなるかと思ってやってみたんだ」


「条件?」


「まずはお互いを強く信頼している事だ。少しでも不信感があるとうまくいかないらしい。あとは同じ目的に対して強い目的意識を持っているといいとか言ってたな」


 ・・・という事はボクがソラ君を信頼しているのと同じ様にソラ君もボクを信頼してくれているという事です。


「後は出来るだけ肌を接触させる事、接触している面積が広ければ広いほどいいそうだ。それと唇みたいに皮膚の薄い部分は面積が狭くても効果が高いらしい」


「それで服を脱ぐ様に言ったんですね」


「ああ、全身裸で抱き合った方が確実なんだが・・・今ので『念』を感じ取れたのなら、しばらくそれでいい」


 全身裸で抱き合うって・・・それではほとんどあの行為と同じです。


「あとは、交尾をするのが効率がいいって言ってたな」


 ・・・まさにその通りだったらしいです。


 ボクは耳まで真っ赤になってしまったと思います。


「ああ、別にそこまで強要しないから安心しろ」


 強要されても出来ないのですが・・・


「じゃあ、続けるぞ、大丈夫か?」


「はい、大丈夫です」




 ソラ君は再び唇を重ねてきました。




 唇と、絡めた腕と、脚からソラ君の『念』が流れて来るのを感じます。


 確かに、唇からくるのが一番強いみたいです。




「体に『念』が入って来る感覚がわかったら次は動かしてみるぞ」


 ・・・動かす?



「ひあっ!」


 今度は唇から入って来た熱が、次第に右手の方に移動してるみたいです。


 わずかな変化なので神経を集中していないとわかりません。


 唇から入って来た熱が、時間をかけてゆっくりと右手に移動して右手から抜けて行ったんだと思います。


「今のわかったか?」


「はい、唇からゆっくりと右手に抜けて行きました。


「正解だ。ちゃんと感じ取れているみたいだな。じゃあ、次だ」


 今度も唇から入ってきました。


 首を通った後は、体の中心を下に下がっていくみたいです。

 おなかの中を通っていく時はちょっと変な感じです。


 やがてそれは右足に入り、太腿の接触している所から出て行きました。



「今度はどうだった?」


「唇から入って右脚に抜けて行きました」


「ちゃんと感じ取れているみたいだな?」


「集中していないと、どこにいるのか見失いそうですが」


「この時点でダメなやつは全くダメなんだ。ルルは確かに素質があるかもしれないな」


 ソラ君に褒められました。

 何だかとっても嬉しい気持ちになりました。


「『念』の感覚を完全に把握できるまで、しばらくはこの練習を続けるぞ」


「はい!がんばります」




 ・・・あれっ?という事は毎晩ソラ君と一緒に寝るという事でしょうか?




 ボクとソラ君は、結局、明け方までこの練習を続けました。


 ソラ君は、『念』を動かす速度を変えたり、経路を変えたりして、ボクはそれを見失わない様に必死に神経を集中させました。


 夢中になっていたら明け方になっていて、いつの間にか寝てしまっていた様でした。




 目が覚めるとだいぶ日が高くなっていました。




 そして目の前にはすぐそばにソラ君の寝顔がありました。


 ・・・ソラ君のあどけない寝顔はすごくかわいいです!


 起きている時のギラついた表情のせいでわかりづらいですが、やっぱりソラ君はすごい美少年です。


 寝顔はまさに天使の寝顔です。


 女の子だと言われたら信じてしまいそうなくらい可愛いのです。


 顔に細かい傷跡がたくさんあるのがちょっと残念ですが・・・

 治癒魔法で傷をきれいに治して女装させたらかなりの美少女になるのではないでしょうか?


 ソラ君はまだ背が低いので、ちっちゃくてかわいらしい美少女になると思います。


 ボクは背が高いので小さい女の子がすごく羨ましいのです。



 ・・・なんて話を起きている時にしたら、ものすごく怒るのでしょうけど・・・・



 でもソラ君の寝顔を見ていたら、何だかキスしたくなってしまいました。


 昨日は一晩中唇を合わせていたのですが、作業みたいになってしまったので、普通のキスがしたいのです。




 ボクは優しくそっと唇を重ねました。




 すると、ソラ君の目がパチッと開きました。



 ボクは慌てて唇を離しました。


「あれっ?・・・あのまま寝ちまったのか?・・・いつ寝たのか覚えてねえ」


 目が覚めると天使の美少女からいつものソラ君に戻ってしまいました。


「あはは、ボクも今目が覚めたところです。唇をくっつけたまま寝ちゃったみたいですね」


 ソラ君は半分寝ぼけながら起き上がりました。


「・・・そうか、よく同じ体勢のまま朝まで寝てたもんだな?」


「ははは、よっぽど疲れてたんでしょうね」


「ああ、ちょっと無理し過ぎたな」



「多分もう朝食の用意が出来てますよ!着替えてダイニングに行きましょう」


「ああ、そうだな」




 ボクは下着姿だったので、そのまま服を着ようとしましたが、下着は汗でびっしょり濡れていました。


 服を着る前に下着は替えておきたいです。


 ボクは後ろにいるソラ君に振り返って声をかけました。


「あの・・・ソラ君、下着を着替えたいので、後ろを向いててもらえますか?」


 すると目の前には、既に下着を替え始めているソラ君の後ろ姿がありました。



 ・・・つまり、後姿のソラ君は、全裸だったのです。



「ああ、このまま後ろを向いてるからその間に着替えろ」


 ソラ君は顔だけ振りむいて、そう言うと着替えを続けました。


「ごめんなさい!見るつもりはなかったんです!」


 ボクも慌てて後ろを向きました。


「ああ、別に構わねえよ」




 ・・・男の子の裸を見てしまいました!


 ・・・後ろ姿でしたが!





 ソラ君の体は細くてしなやかで、やはりまだ少年の体という感じでした。


 


「本当にごめんなさい・・・」


「いいって、ルルも早く着替えろ」


「・・・はい」




 ボクも後ろ向きになって下着を着替え、服を着ました。


 ソラ君は絶対にボクの着替えを覗いたりしないって信頼しているので、安心して裸になって着替える事が出来ました。


「着替えました。もう大丈夫です」



「そうか、じゃあ、メシにいこう」


「はい」




 ボクはソラ君と一緒にダイニングへ向かいました。




 でも・・・さっき見たソラ君の裸が、どうしても脳裏にちらついてしまうのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ