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38話 母からの餞別

 あれから2カ月が経ち、出発の日が迫ってきました。




 ボクとソラ君、そしてレィナちゃんはお母さんに呼ばれてお母さんの工房に来ています。



 レィナちゃんは今回の旅の話を両親にしたところ、「武者修行に丁度いい」と言われてあっさり承諾を得て来たようです。


 レィナちゃんの家は両親揃って武闘派なので、まあ、当然の結果かもしれません。




「今日は旅に出る三人に贈り物があります」



 机の上にはお母さんに預けていたボク達の装備がありました。


「まずは、みんなの装備に防御力・耐久力などの特性を付けておきました」


「へえ!見た目は全然変わっていないけど」


「オレの装備は壊れる前に戻ってるな」


 ソラ君の装備は例の襲撃の時に大破していたのです。


「見た目と使い心地は以前と変わらないと思うけど、ダメージは大幅に削減されるし、ちょっとやそっとじゃ壊れないはずだから!」



 ボクたちは、装備を装着してみました。


「あれっ?なんだか軽くなっていない?」


 レィナちゃんの言う通り、装備の重さを感じません。


「うん、運動補助機能も付けてあるからね。以前より動きやすくなるはずだよ」



 なんか、結構すごい装備になっています。



「それからレイナちゃんにはこの剣ね」


 お母さんは赤い鞘に入った大剣をレイナちゃんに渡しました。


「知り合いの職人さんに作って貰ったんだけど、その職人さん、レィナちゃんの事知ってるみたいだったよ」


「変ね、武器職人に知り合いなんていないけど・・・」


 レィナちゃんは大剣を手に取り鞘から抜きました。



 刀身が僅かに赤みがかったきれいな剣でした。



 レィナちゃんは大剣を振り回してみます。



 巨大な剣が、高速で縦横無尽に振り回されます。


 その大きさと、見た目の重量感に対して、動きが不自然に感じる速さです。



「すごい!軽いし手に馴染むわ!」


「職人さんがレィナちゃんに合わせて調整してくれたみたいだよ」


「まあ、いいわ。有難くもらっておくわ」




「ルルにはこのレイピアね!」


 青と黒で装飾された鞘に入ったレイピアです。

 鞘と柄のデザインはなんとなくお父さんのロングソードに似ています。


 ボクはレイピアを受け取ると、鞘から抜きました。


 刀身が僅かに黒みがかっています。

 そして、重さを全く感じません。


「ちょっと振ってみて!」


 お母さんに言われて、レイピアを振ってみました。

 まるで手に何も持っていないかのように、振り回せます。



「すごっ! 速すぎて剣筋が見えなかったわ!」


「ああ、オレも目で追うのは無理だったな」


 レィナちゃんもソラ君もびっくりしています。


「これなら普段から持ち歩いていても疲れないでしょ?」



 そう、ボクはあの日から、常に剣を肌身離さず持ち歩く様にしていたのです。

 いざという時に剣があれば、きっと違った結果になるからです。


「性能は私のレイピアとほぼ一緒だよ!」



 ・・・お母さんのレイピアって、確か国家予算レベルのお金がかかってるって聞いた事があります。



「もしかして、とても高価なものなのでは?」


「あはは、大丈夫!材料は全部支給したし、制作も半分以上私がやったから!」


 お母さんが作ったら、なおさら価値がつくのでは?


 でもお母さんがそこまでボクの事を考えて用意してくれたのです。


「大事に使わせていただきます」


「ははは、武器なんだから遠慮なく使い倒してね」




「それから・・・ソラ君にはこれだね!」




 ・・・お母さんは、金属でできた腕を机の上に置きました。




「なんだ?こりゃ!」


「『義手』だよ!」


「『義手』?」


「左手だけでも十分戦えるようになったけど、やっぱり右手が無いと色々不便でしょ?」


「・・・どうやって使うんだ?」


「それを右手の切断面にあててみて」



 ソラ君は右手の包帯をほどき傷口を出しました。


 切断面がそのままの状態なので、ちょっっとグロテスクです。


 ソラ君は左手で義手を掴み、右手の切断面に義手をくっつけました。


「っ痛!」


 すると義手は吸い付く様にソラ君の右手に張り付きました。


 ソラ君が左手を放しても義手は落ちません。


「大丈夫ですか?ソラ君」


「ああ、一瞬神経が引き摺り出される様な感じがしたがもう大丈夫だ」



「ソラ君、右手を動かしてみて」


 お母さんに言われてソラ君は右腕にくっついた義手を見ました。




 ・・・義手は手のひらをソラ君の方に向けました。


 そして、ゆっくりと五本の指を曲げたり伸ばしたりしています。



「どう?」



「すげえ!元の右手と同じ様に思った通りに動くぞ!」


 ソラ君は右手を振り回しました。


 動く時に少しガチャガチャと金属音がします。


「少し練習すれば、右手でも前みたいに戦えるよ」


「ありがてえ!ルル!早速やろうぜ!」




 ソラ君は、中庭へ向かいました。


 ボクたちも後を追います。




 ソラ君は練習用の剣ではなく、自分の剣を持っています。


「ルルも『それ』を使ってみろよ!」


 ボクはさっき受け取ったレイピアをそのまま持っていました。


「お母さん、大丈夫?」


 お母さんのレイピアは、何でも切り裂いてしまうと聞いた事があります。


「普通の剣が相手だと剣ごと切ってしまうけど、ソラ君の剣なら大丈夫だよ」


「じゃあ、試してみます」




 ボクもさっき受け取った装備とレイピアを試してみる事にしました。




 ソラ君と、フル装備同士の真剣勝負です。


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