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35話 旅立ちに向けて

 学院の登校日に、一連の事件をレィナちゃんに話しました。



 ソラ君はまだ体力が回復していないので学院は休んでいます。




「ごめんね。肝心な時に助けてあげられなくて」


 ・・・なぜかレィナちゃんに謝られてしまいました。


「・・・レイナちゃんは何も悪くないけど?」


「途中まで二人の事を尾行してたんだけど、途中で見失っちゃたのよ!最後まで見失わなければこんな事にならなかったのに!」



「・・・レィナちゃん?・・・デートの尾行はしないでって言いましたよね?」



「こういう事があるから、やっぱりあたしがついていないとダメね!」



 レィナちゃんは、こういう時は開き直ってうやむやにしてしまいます。



「それで?出発はいつなの?」


「色々準備もあるから二ヶ月後ぐらいかなってお母さんが言ってました」


「まだ十分に時間があるわね!あたしもそれまでに親を説得して準備しておくから!」


 ・・・レィナちゃん、何を言ってるのでしょう?


「レィナちゃん?もしかして一緒に行くつもりなの?」


「当たり前でしょう!あなた達二人だけじゃ碌な事にならないじゃない!」


 当然の様に一緒に行くつもりだったみたいです。




「ソラの奴はあれからどうしてんの?」


「体力が回復するまでうちにいてもらう事になったよ」


「へえ!いきなり同棲ってわけね!」


「そういうのじゃないから!」


「これからルルの家に行ってもいい?」


「いいけど、どうしたの?」


「あいつのお見舞いでもしようと思ってね」


 レィナちゃんが普通にソラ君のお見舞いをするとも思えないですけど・・・




 レィナちゃんと一緒に家に帰宅すると、ソラ君は部屋にいませんでした。




「ソラ様は中庭にいらっしゃいます」


 執事のバトラーさんが教えてくれました。




「もう歩き回れるんだ?」


「かなりの出血だったから、しばらくは安静にって話だったけど・・・」



 ボクとレィナちゃんが中庭に行くと・・・




 ソラ君はお母さんと激しい打ち合いをやっていました。




 ソラ君は左手一本で剣を持ち、お母さんと激しい攻防を続けています。




「へえ、左手だけでもあれだけ戦えるんだ」


 ソラ君は片腕がない事を感じさせない程、安定した戦いをしています。


 お母さんがソラ君に合わせてるのですが、それでもかなり高いレベルで打ち合っています。




「お母さん!ソラ君は大丈夫なんですか?」



 ボクが声をかけると、二人は打ち合いをやめました。


「おかえり、ルル!レィナちゃんもいらっしゃい」


「早かったな、ルル。レィナは何しに来たんだ?」


「ふんっ!腕持ってかれたんですってね!情けないわね。あんたがルルを守れなくてどうすんのよ!」


「ああ、その通りだ。だから今鍛えてるところだ」


「次は勝てるんでしょうね?」


「当たり前だ!オレはもっと強くなってやる!」



 レィナちゃん、きつい事を言っていますが、ソラ君には優しい言葉をかけるより、この言い方が一番だってわかってて言ってるのです。



「ソラ君はもう大丈夫なんですか?」


「傷はもう変化しねえ。悪化も回復もしねえから待ってる時間がもったいないからな。相手をしてもらってた」


「ソラ君、一日で左手の剣さばきが各段に上達したよ!」


「うん、見ていてびっくりしたよ。利き腕じゃなくてもあんなに戦えるなんて」


「朝の時点では全然だめだったが、『剣聖』にずっと相手をしてもらってたら、だいぶ使えるようになって来たな」


「ええっ!朝からずっと続けてたんですか?」


「うん!そうだよ!」




 ・・・二人とも、とんでもない体力です。




「さあ、まだまだ続けるぞ」


「私はそろそろ夕食の準備を始めたいからルルが代わってくれる?」


「えっ?ボクですか?」


「頼むぞルル、手加減はいらねえからな」


「わかりました。ちょっと着替えてきます」




 ボクは部屋に戻って練習着に着替えました。



 着替えが終わって中庭に戻ると、レィナちゃんとソラ君が打ち合いを始めていました。




 ・・・レィナちゃん、制服のスカートのままなのに・・・



「ははっ!そんなもんなの?前よりも腕が落ちてんじゃないの?・・・ああ、ほんとに落としちゃったんだっけ?」


「はっ!腕が無くなっても腕前は変わんねえよ!」



 レィナちゃんは練習用の剣の中で一番大きな大剣を使っています。


 ソラ君は、ソラ君の剣を模した練習用の細身の片刃剣です。

 それを片手で持っているソラ君が、圧倒的に不利に見えますが、レィナちゃんと互角に戦っています。


 朝からお母さんと戦い詰めで、利き腕じゃない片手で剣を振るっているとは思えない安定感です。


 レィナちゃんの方も、全く手を抜いていません。

 いえ、むしろ今までよりも技のキレが上がっているくらいです。

 それくらい本気を出さないと、今のソラ君と渡り合えないという事です。


「そんなに激しく動いたらスカートの中が見えちまうぞ。いいのか?」


「はんっ!あんた、あたしのスカートの中なんて全然興味ないでしょ?見られても何ともないわ!」


「ああそうだな、見るならルルの方がいい!」




 ・・・戦いながら何を言い合ってるんでしょうか?


 ・・・それにボクのスカートの中は、見られると大変困ります。




 軽口は叩いていますが、二人の戦いは真剣です。

 二人とも、更に技を繰り出す速度が上がってきています。


 レィナちゃんは、動きが激しすぎて、太腿どころか、下着もちらちら見えてしまっています。

 でも、そんな事に構っていられない状況なのがわかります。


 ソラ君も、レィナちゃんの下着が見えようが、全く気を取られる様子がありません。

 ものすごい集中力です。


 ・・・さっきは軽口をたたいていましたが・・・ボクの下着が見えても、きっと戦いの最中は気にも留めないのでしょう。




 二人とも息が切れるまで戦い続けて、ようやく終わりにしたようです。




「ふぅっ、片手にしてはやるじゃないの」


「おまえ相手には丁度いいハンデだ」


 ・・・模擬戦が終わっても軽口の言い合いは終わりません・・・



「じゃあ次はルルとやるぞ!」


「ソラ君、少し休んだ方がいいですよ」


「問題ない。すぐ始めるぞ!こういう時は疲労の極限状態で続けた方が体に馴染むのが早いんだ」


 ・・・そういうものなのでしょうか?


 でも、こういう時のソラ君は何を言っても聞きません。


「わかりました。相手しますね」




「あ、そうだ。おまえはこれを使ってくれ」




 ソラ君が差し出したのは、練習用の剣ではなく・・・




 ・・・例の・・・・・ソラ君の剣でした。


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