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32話 魔女になるには

 「じゃあ、ここから本題に入るよ」



 ボクがこの事態を解決するためには何をすればいいのでしょう。


「まず、ソラ君のお兄さんのかけた『凍結』の術の解除は、ルルが行う必要があります。そのために必要な準備が二つあります!」




 お母さんはにっこり笑って指を一本立てました。


「一つ目はルルが『念技』を習得する事」



「『念技』ってソラ君が使っている技ですよね?ボクに習得できるのでしょうか?」


「完全にマスターしなくてもいいんだけど、術式の仕組みを理解する必要があるんだよ。それに、一回使えているから、多分素質はあるんだと思うよ」


 ・・・何をすればいいのか、今一つイメージが湧きません。




 そしてお母さんは二本目の指を立てました。


「二つ目はルルが『魔女』として覚醒する事」




「この二つの条件が揃って、初めて、絡み合った術式の解析が可能になります」


 ・・・それぞれがとんでもなく難しい事の様な気がします。


「でもそれがスタートラインで、そこからルルが術の解析にどれくらいの時間がかかるのか?それから、どうやって解除するのか?それが判明するのはその後だからね」



 ・・・一年で、それだけの事が出来るのでしょうか?



「それに解除は一回で確実に終わらせないといけないよ。中途半端に解除してしまうとソラ君のお兄さんは死んでしまうからね」


 そうでした・・・ソラ君のお兄さんは首を切られた状態なのです。


 『凍結』の術を解いたらすぐに死んでしまいます。




「『念技』の事は、ソラ君に相談するしかないかな?ソラ君に指導してもらえれば話は早んだけど、できない場合は、どうやって習得するか方法を考えないといけないね」


 『念技』を習得するにはどのような修行が必要なのでしょうか?


 そもそも外国人のボクに教えてもらえるのでしょうか?




「魔女の覚醒は・・・どうすればいいんですか?」




「・・・・・知らない」




「・・・・・ ええっ!どうしてお母さんが知らないんですか!」


「魔女って一人一人特性が異なっていてね、それが魔女の『二つ名』にもなってるんだけど、『覚醒』の条件は魔女の特性に密接に関係してるんだよ」


「魔女の特性って?」


「私の場合は『強欲の魔女』! 私は生まれつき人よりも欲張りで、何でも手に入れないと気が済まない性格だったんだよ」


 それは・・・お母さんを見ていればよくわかります。


「それでね、私の魔女としての覚醒条件は『全ての欲望を満たして思い残す事が無くなる事』だったんだよね」



「・・・・・それって・・・達成可能なんですか?」


 強欲な人が全ての欲を満たす事なんてあり得るのでしょうか?


「うん、普通は無理だろうね。実際に、過去に存在した『強欲の魔女』のほとんどが『魔女』として覚醒しないで普通の人間として一生を終えたからね」



「お母さんは、どうやって覚醒したんですか?」


「聞きたい?」


 お母さんは手を口に当ててニヤニヤした顔になりました。


 ・・・なぜ、ここで、このリアクションなんでしょう?


「・・はい、知りたいです」


「しょうがないなぁ!ルルには特別に教えてあげるね!」


 お母さんは言いたくて仕方ないのだと思います。


 ふと、お父さんの方を見ると、お父さんは頭を抱えてため息をついていました。


「お母さんはね、お父さんと結ばれて、二人の間にかわいい赤ちゃんが出来たら他にはもう何もいらないって、本気で思ったんだよ。それが叶ったから魔女になれたんだよ!」




「・・・・・はい?」




 ・・・ええと・・・魔女として覚醒するための条件の話でしたよね?




「つまり・・・お父さんと結婚したら、魔女になれたって事で、合ってますか?」


「うん!その通りだよ!それとルルが誕生したからだね!」


 それって、結婚したからっていうか・・・言葉の通り、お父さんと結ばれたからですよね?



「そんな・・・簡単な事で魔女になれるんですか?」


「簡単じゃなかったよ!何度もあきらめかけたけど、がんばった結果だからね!」



 そうでした・・・好きな人と結ばれるのって、そんなに簡単な事ではありませんでした。



「ごめんなさい。お母さん・・・簡単なわけないですよね・・・」



「だが、そんな事で『強欲』が満たされるのはララぐらいしかしないだろうな」


「ジオ!前にも言いましたけど、ジオと結ばれるのは世界中の女の子の究極の願望なんですからね!これ以上の強欲はありませんからっ!」



 ・・・確かに、それは分かる気がします。女の子だったら、お父さんと結ばれるなら他の全てを失っても構わないと思ってしまうかもしれません。



 そして、お母さんにとっては『魔女』なった事よりお父さんと結ばれた事の方がずっと大事な事なのだという事もボクには分かります。




「まあ、私の場合はそうだったんだけど・・・魔女の覚醒条件って、覚醒してみるまでわからないんだよ」


「ボクの場合、何の魔女になるんでしょう?」


 好きな人と結ばれたら魔女になるって事は無いとは思いますが・・・


「私や、他の魔女の例を見ても、魔女の特性は、本来のその人の性格にかなり影響しているという傾向はあるよ」



 ・・・ボクの性格っていえば・・・内気で引っ込み思案なところでしょか?



「一つ言える事は、自分がやりたいと思った事を突き進んでいけば、わりとそれが正解なんじゃないのかな?」



「ボクの・・・やりたい事?」


 ボクの、やりたい事って・・・なんでしょうか?



「そうだなぁ・・・例えば、ルルの将来の夢は何かな?」



 ・・・ボクの・・・将来の夢?



 ・・・・・・・ あれっ?



「・・・魔女になる事・・・」


「えっ?」


「すっかりあきらめていたので、忘れていましたが・・・ボクの夢は魔女になる事です」




 ボクが『魔女』になるための覚醒条件は・・・『魔女になる事』?




 ・・・・って、どういう事でしょうか?


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