33話 できる事から
「ボクが『魔女』として覚醒するための条件は・・・魔女になる事・・・?」
「うーん?どういう事だろう」
お母さんも首をかしげています。
「これって、どっちが先なんでしょう?」
「ええと?・・・魔女になれたら魔女として覚醒するって事は、魔女にならないと魔女として覚醒できないって事で・・・」
お母さんも混乱しているみたいです。
「つまり覚醒は出来ないって事にならないか?」
お父さん・・・・・はっきり言い過ぎです。
「身もふたもない事言わないで下さい!」
「・・・すまない」
「まあ、それが正解とは限らないんだけど・・・わりといい線いってるかもしれないよ。そもそも、ルルは何で魔女になりたいと思ったの?」
「それは・・・お母さんが見せてくれた不思議で面白い魔法でわくわくしたから・・・だと思います」
「ララは変な魔法ばかり使うからな」
「変な魔法って何ですか!楽しい魔法って言って下さい!」
「お母さんって、普段の生活や戦闘にはあまり魔法を使わないんですよね?」
「うん、魔法でなくても出来る事は魔法でやらなくてもいいじゃない?」
魔法を使わずに『上級の魔物』を倒せる人はそんなにいないと思いますが・・・
「魔法は、魔法でしかできない事に使うのがいいんだよ!」
魔法を使う時のお母さんは本当に楽しそうです。
「ボクも・・・お母さんみたいな楽しい魔法が使える様になりたいです」
「うん!そうだね。無理に魔女になる事を考えるよりも、楽しい魔法を使いたい!ってそれだけを強く願っていれば、いずれ覚醒するんじゃないかな?」
「そういうものでしょうか?」
「そういうものだよ、きっと!」
お母さん、こういうところは結構適当です。
でも、お母さんは、その適当が正解の事が多いのです。
「それに、魔女になったらこんな事も出来るよ!」
言い終わると同時に、お母さんの体が一回り大きくなりました!
「どうかな?」
声が・・・低音の、良く通る素敵な声になっています。
お母さんは・・・逞しい肉体のイケメン金髪男子になっていました!
・・・はっきり言って、お父さんに匹敵するくらいのイケメンです。
「お母さん!どうしたんですか?」
「魔法で男性になったんだよ!」
・・・声が・・・やっぱりすごいイケボです。
「どうしたんですか?急に!」
「魔女になったら魔法で性別を変えるくらい簡単に出来るって事だよ!」
「・・・あっ!」
そうです!・・・ずっと抱えていたボクの悩みを自分で解決できるのです。
「私が魔法をかけてあげてもいいんだけど、こういうのは自分の力で解決した方が納得できるでしょ?」
確かにそうです。お母さんに魔法で女性の体にしてもらう事に躊躇していた理由の一つはそれかもしれません。
お母さんに性別を変えてもらっても、やっぱりそれは本当の自分を誤魔化しているだけの様な気がしていたのです。
「それに、いつでも性別を変えられるから、たまにこうやって気分を変えて男同士でっていうの出来るしね!」
お母さんはそう言ってお父さんの腕を組んですり寄りました。
「ルイに迫られてるみたいで気持ち悪いからやめてくれ」
そうです・・・男性になったお母さんが誰かに似ていると思っていたのですが、この国の王太子のルイ殿下によく似ているのです。
元々、お母さんはこの国の第一王女のアン殿下によく似ているので、男性化したらこうなってもおかしくありませんでした。
でも、お母さんの方がルイ殿下よりイケメン度が高い気がします。
「えー、一度ジオと男同士でいちゃいちゃするのやってみたいんだけどなぁ」
「そういうのはいいから、早く元に戻ってくれ」
お父さんは本気でいやそうです。
「ちぇえっ、つまんない!」
お母さんは冗談ではなく本気だったのかもしれません。
なんでも挑戦したがる強欲なお母さんならやりかねません。
お母さんは、すぅっと元の姿に戻りました。
魔法陣も詠唱も無く、自然に発動するお母さんの魔法はいつ見ても不思議です。
でも・・・ボクも魔女になったら、お母さんみたいな魔法が使えるようになるのです。
そうしたら、ソラ君とちゃんとしたお付き合いが出来るかもしれません。
・・・それに、もしかしたらですけど・・・将来結婚して、子供を産む事も不可能ではなくなるのです!
「でも、ルルも少しやる気が出たんじゃない?」
少しどころではありません!
「はい!必ず魔女になりたいです!」
「うん!ルルの場合は魔女になりたいって気持ちを強く持っていればいずれ覚醒できると思うよ!」
ボクも、そんな気がしてきました!
「魔女の覚醒は、まあ、そんな感じで成り行きに任せるしかないんだけど、もう一つ、『念技』の習得はソラ君に相談するしかないよね」
「ルルも疲れているだろうから、今日はもう休んで、明日ソラに聞いてみたらいいんじゃないか?」
「そうだよね、ルル、今日はもう休みなさい」
「はい、お父さん、お母さん、おやすみなさい」
お父さんの提案で、ボクは部屋に戻りました。
今日は色々な情報が一度に入って来て、何だかよくわからなくなっていましたが、疲れがたまっていたのか、ベッドに入ったらすぅっと眠ってしまいました。
ボクが魔女になる日を夢に描きながら・・・




