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26話 忍び寄る影

 ソラ君の剣が一瞬、月明りで光りました。


 そして、何者かの剣とぶつかり火花が飛びます。




 全身真っ黒な服を着た人が、ソラ君に襲い掛かっていました。


 黒い服の人はソラ君に、絶え間なく攻撃を仕掛けます。


 ソラ君はそれに対応していますが、相手の連撃が速すぎて、防戦一方になってしまっています。



 ボクが加勢すれば、状況は改善したかもしれませんが、ボクは今日、剣を持って来ていませんでした。

 初デートだったし、まさか王都の中心地でこんな事になるとは思ってもいなかったので油断しました。



「ルル!早く逃げろ!」


「でも!ソラ君が!」


 ソラ君は押され気味です。


 このままでは危険です。


「お前がいてもどうにもならないだろ!それより助けを呼んで来い。剣聖かジオなら何とかなる!」


 確かに、お母さんたちを連れてくれば、この場を切り抜ける事が出来ます。

 でも、ここからボクの家までどんなに急いでも5分くらいかかります。

 間に合うのでしょうか?


「早く行け!」


「わかりました!待ってて下さい!」


 助けを呼び行くなら一刻も早い方がいいです!


 ボクは振り返って走り出しました。

 でも走り出した先に、二人目の黒い服の人が現れました。


 その人を認識したと同時に、剣がボクに襲い掛かります。

 ボクは咄嗟に後方に下がって、剣を紙一重で躱します。


 一瞬でも反応が遅れたら切られていました。


 しかし、間髪入れずに第二撃が来ます。

 これも、ぎりぎりで躱します。


 次々と繰り出される連撃を全て紙一重で躱していきます。

 一度でもタイミングを読み間違えるとそこでボクの命は終わります。


 ボクは次第にソラ君のいる場所へ押し戻される形になりました。


 どうやらボクが助けを呼びに行くと困るみたいです。


「ルル!今行く!」


 ソラ君はこれまでよりも更に速い剣速で、対峙している黒い人を圧倒し、切り倒しました。


 そして僕の方に走ってきます。


「ルルから離れろ!」


 ボクを襲っていた黒い服の人をソラ君が払いのけました。


 この時もソラ君は、今まで見た事もない素早い動きでした。



 黒い服の人は、ソラ君を警戒してこちらの様子を見ています。


 ソラ君がにらみを利かせているので、うかつに攻撃に出られない様です。



「大丈夫か?ルル」


「はい、ボクは無傷です。でもソラ君が・・・」


 ソラ君にはいくつかの小さな切り傷が出来ていました。


「オレは平気だ。だが敵があと何人いるかわからねえ。丸腰のお前を一人には出来ねえな」


 ・・・ボクが剣を携帯していなかったばかりに、ソラ君の足手まといになってしまいました。


 それにしても王都の中心地に、どうやって賊が侵入したのでしょう。


 王都は三重の城壁と強固な結界に覆われていて、城壁だけでなく空や地中からも侵入は出来ないはずです。


 城門の警備体制も万全で、不審な外国人がそう簡単に入り込むことは無いはずです。



「ソラ君、この人たちは?」


「たぶんオレの国から来た追手だ。大方オレを殺しに来たんだろう」


 ソラ君を・・・殺しに来た?


「どうしてソラ君が殺されるんですか?」


「オレにこの世からいなくなって欲しいやつらがオレの国にいるって事だ」


「そんな!」


「こんな遠い国まで追って来るとは思わなかったけどな」


 そんなに遠くまで殺しに来る理由が、ソラ君にはあるという事でしょうか?


「とにかく、お前だけは何があっても助けてやるから安心しろ!」


 それは自分が死んでもって意味ですよね?

 そんなのだめです!


「ボクも一緒に戦います!」


「剣もねえのにどうやって戦うんだ!」


「それは・・・」


 話している内に、ソラ君が最初に倒した黒い服の人が起き上がり、こちらに迫ってきました。


 同じタイミングで、二人目もソラ君に仕掛けてきました。


「オレから離れるなよ!」


 ソラ君が一歩踏み込んで最初の人に切りかかります。


 鞘から抜かれたソラ君の剣は超高速で黒服の人を切り倒し、そのまま回転して二人目の剣を自分の剣で受け流しつつ、銅に剣が入ります。


 ソラ君の独自の剣技に、お母さんの技を合わせた連続攻撃です。


 二人の黒服の人は同時に飛ばされて行きました。


「今だ!走れ!」


 ソラ君の掛け声でボクとソラ君は同時に駆け出しました。


 倒れた二人はすぐには追ってこられない様です。


 おそらく身体強化のようなものを使っているのでしょう。

 致命傷にはなっていない様ですが、ダメージを受けてすぐには動けないみたいです。


 これなら逃げ切れるかもしれません。


 あと少しで雑木林を抜けます。

 そうしたら人通りも多くなるので、さっきの黒い服の人たちも派手に動くことは出来ないはずです。


 でもその時、頭上からさっきの二人よりも更に危険な気配を感じました。


「ルルはそのまま走れ!」


 ソラ君は叫んで上に跳躍しました。


 木の上で剣戟が響き渡りました。


 間髪置かずに超高速で剣を打ち衝け合ってる金属音が、静かな雑木林に連続して響き渡ります。


 そして、木の上から降って来たのは、ソラ君と・・・三人目の黒い服の人です。


 今度の黒い服の人はさっきの二人と何か様子が違います。

 何か・・・とてつもなく禍々しい感じがします。



 そして・・・ソラ君の体のあちこちから血が滴っていました。



「早く逃げろ!」


 そう叫んでソラ君は黒い服の人に向かっていきました。


 これまでで、最も速い打ち込みです。

 

 鞘から抜かれた剣が黒い服の人を一閃します。






 ・・・そして・・・ボクの方に何かが飛んできました。






 ・・・ボクの足元に落ちたそれは・・・・・






 ・・・剣を握ったままの・・・ソラ君の右腕だったのです。 


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