25話 二人の夕暮れ
レストランで昼食を食べた後は、王都の観光名所をいくつか紹介して回って、日が傾きかけたところで、王都のデートコース定番の夕日の見える寺院に来ました。
寺院の螺旋階段を昇って行くと屋上に出ました。
ちょうど夕日が沈むところです。
「ふふふっ、本当に一日普通のデートをしちゃいましたね」
「ああ、一度も剣を振るわなかった日は何年ぶりだろうな?」
「物足りないですか?」
「いや、たまにはこういう日があってもいいと思える様になったな」
「退屈じゃありませんでしたか?」
「ルルと一緒にいて退屈だと思う事はねえな」
「ふふ、嬉しいです」
なんかとてもいい雰囲気です。
周りはカップルばっかりで、みんなそれぞれいい雰囲気みたいです。
今なら・・・ソラ君に聞いてみても良いかもしれません。
「ソラ君は、ボクの事が好きですか?」
「今更何言ってんだ?好きに決まってるだろ」
「もし・・・もし、ボクが男の子だったとしても・・・同じ様に好きになりましたか?」
「何言ってんだ?男か女かなんて関係ねえだろ!オレはお前と初めて剣を交えた時、運命の相手だと確信したんだ。むしろ、オレに運命の相手が現れるとしたら男だと思ってたくらいだ。女のお前だった方が意外だった」
何か今、とんでもない事を聞いた気がします。
「ええと、ソラ君は、運命の相手が男だったとしても・・・ええと・・・その・・・キス、したんですか?」
「ああ、男だろうと女だろうと関係ねえ!そいつと一つになりたいくらい強い結びつきが欲しいと思ったらそうしただろうな」
ボクが男の姿だったとして変わらなかったみたいです!
・・・ でもそうなると ・・・
「もしかしたら、ボクと・・・エッチしたくなる可能性もあるって事?」
「エッチって、裸で抱き合って交尾するアレか?」
ソラ君!そんなダイレクトに!
「そこまでは考えてねえが、ルルはやりたいのか?」
これって!ボクがOKしたらする事になる流れでしょうか?
それは絶対だめです!
「いえ!それは本当に無理なので!」
ボクは思いっきり首を左右に振りました。
「だよな、オレもちょっと無理だな」
ソラ君も、無理みたいです。
ほっとしましたが・・・心の片隅で、ちょっとだけ残念な気持ちがあった気がしました。
でも、なぜでしょう?
ソラ君も何か体に問題があるのでしょうか?
「でも、キスなら・・・したいかな・・・今、してもいいか?」
「ええと・・・いい、ですよ」
周りのカップルたちもみな、抱き合ってキスしてるみたいなので、誰もボク達の事など見ていないでしょう。
「すまん、ちょっと屈んでくれないか?」
「はい」
ボクは少しかがんで、ソラ君は背伸びして上も向きました。
そして、お互いに軽く抱きしめながら、くちびるを重ねました。
夕日が沈みゆく中、ボク達は唇を軽く押し付けたまま、しばらくじっとして、唇からお互いの体温を感じていました。
ソラ君の唇は、意外と柔らかくて、滑らかで温かくその感触が心地よくて、いつまでもこうしていたいと思いました。
夕日が完全に沈んであたりが暗くなってから、ボク達は唇を離しました。
「心地よくって、ずっとあのままでいたいと思っちまった」
「ふふふ、ボクもです」
ソラ君も ボクと同じ事を考えていたのが嬉しかったです。
「・・・交尾はしなくても・・・裸で抱き合うだけなら有りかなって、思っちまった」
「ええっ!」
ソラ君!そんな事を考えて・・・って、実はボクも少しだけ同じ事を考えてしまいました。
「いや!思っただけで、本当にするつもりはないぞ!・・・ただ、ルルともっと触れ合ってみたいと思っちまっただけだ!」
ちょっと一瞬でいろんな事を想像してしまって、心臓がバクバク言ってます。
「ボクも・・・ちょっとだけ、同じ事を考えていました・・・」
ソラ君の顔が一気に真っ赤になりました。
「おまえ、交尾は無理だって言ってたじゃねえか!」
ソラ君、かなり動揺しています。
ボクが完全に拒絶すると思っていたのでしょう。
「ボクも・・・するのは・・・絶対無理なんですが、抱き合うのは・・・ちょっとならいいかなって・・・」
ソラ君なら、男の子の体でも受け入れてくれそうな気がして、つい言ってしまいました。
「いや!まて!今のは言葉のあやだ!とりあえずこの話は忘れよう!いいな!」
「はい!ボクもそう思います」
危なかったです。
何かあやうい雰囲気になってしまう所でした。
これが普通の男女ならそういう関係になってしまう所だったのかもしれません。
男同士でそうなった場合、その後って、いったいどうなってしまうのでしょうか?
しばらく無言の時間が過ぎました。
「すっかり真っ暗になってしまいましたね」
日が沈んで、時間がたち、あたりはすっかり真っ暗になってしまいました。
人気もほとんどなくなってしましましたが、物陰に、いくつか人の気配を感じます。
・・・これは・・・おそらく詮索してはいけないものです。
「ソラ君、帰りましょう」
「そうだな」
ソラ君も気配を察知して、ちょっと気まずさを感じている様です。
ボク達は気配を殺して寺院を後にしました。
寺院の周りは公園になっており、裏の雑木林を抜けると近道になっています。
雑木林の中は人気もなく真っ暗です。
「ソラ君、今日は楽しかったです。ありがとうございました」
無言だと気まずいので、当たり障りない話をしてみます。
「ああ、オレも楽しかった」
ソラ君は照れくさそうに返事をします。
「また、デートしましょうね」
「そうだな・・・・・」
ソラ君が急に黙りました。
・・・どうしたのでしょう?
「避けろ!」
ソラ君が急にボクを突き飛ばしました。
月闇の中で一瞬、何かが光りました。




