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ハルカ彼方のchronicle  作者: イサク
3/3

キオクノカケラ

昔々

そこには何もないただの広い空間があった

そこに一人…

と言ってもいいのかわからないが

人の形をしていたらしいから

単位は人で合っていると思うが…

とにかく創造の神がその空間に現れた

だがこの神には感情も心もなかった

なぜ無かったのかわからない

無くなったのか

そもそも初めから持っていなかったのかもな

何も持ってはいなかった

いや何にも持ってなかったわけじゃない

少なくとも

右手に剣と左手に盾を持っていた

持っていた盾をかざすと宇宙が出来た

持っていた剣で宇宙を切り拓いた

なぜそれだけ持っていたのか

なぜ宇宙を創ったのかわからない

まぁそんなもの理解したいとも思わないが

なぜって?

当たり前だろ

そもそもそんな行動人間に

理解しろ

と言ったところで到底理解できないだろう

そんなスケールの大きい話は分かんないしな

宇宙を創造したその神は興味をなくしたのか

剣も盾も置いてどっかに行ってしまった

まぁ感情も心もなかったらしいから

興味なんてあったかどうかもわからない

が

それでもどっかに行ったことは変わらない

置き去ったことには変わりない

忘れ去られ長い時間が経って

後に残った剣から悪魔が生まれた

後に残った盾から神が生まれた

悪魔には心がなかった

だが感情はあった

喜怒哀楽を知っていた

反対に

神には感情がなかった

だが心はあった

愛することを知っていた

二つが生まれた頃にはたくさんの星があった

そのいくつもの星の中には

いくつもの種類の知的生命体が生まれていた

文明が生まれ世界ができた

そしてヒトが生まれた

ヒトは感情も心も持っていた

なぜヒトというか

星の中の知的生命体にだけ

感情も心もあったのか分からない

まぁでもその二つがあったからこそ

文明が出来たんだろう

素直に凄いと思う

いやいや先人達に感謝するよ

神と悪魔は生まれてすぐに争った

なんで争ったか分からない

まぁ神と悪魔だ

相容れない存在だということはわかる

いくつもの世界を飛びながら

いくつもの世界を壊しながら

いくつもの世界を創りながら

…力が強すぎるから

それは自然災害だったり天災になったりして

世界に降り注ぐ

それで滅んだ世界もある

また

力が強すぎるが為に世界を創る事もある

そうして争い戦い

疲弊していく

疲れ果てどちらも仲間を増やした

また戦い疲弊して仲間を増やす

その繰り返し

そして長い間戦い

力を使い果たし眠りについた



「これがオレが聞いた神と悪魔の昔話

つまらなかったろ

年寄りの昔話ほど

つまんないものはないからな


そう言って

イサクは鼻で笑った

ユーイチやモリ、アリスは

それでもカレーを口に運んでいる

あの赤い男は

まだ信用できないと言って

イスには座っているが腕を組んで

怒っているような態度だ

まぁ怒ってるんだろう

もちろんオレは前者だ

このカレーうまいな

今度教えてもらおう


「それがどうした


あの赤い男が口を開く


「だからなんだってんだ

んなものしらねぇよ

さっさと俺の城まで戻せ

つか誰だよ

俺をココに連れてきた奴は


「だから言ってるだろ

お前達をここに連れてきたのは神達だ

神がお前達をここに呼んだんだ

それに

お前達を元の世界に返すことは出来ない

オレには転移魔法が使えない


ちょっと待て


「どういうことだ

神は眠りについたと

今さっき話しただろうが!

自分で!


赤い男が声を荒げ

机を叩く


「あぁそうだ

眠りについた

そうだな…

言い方が悪かった

正しくは願いに引き寄せられた

だ


「願いに引き寄せられるだと…?


願い…?


「お前達は

元の世界から来る前に

願ったはずだ

どんな願いかは知らないが

強く強く願ったはずだ

その強い願いがココに引き寄せたんだ

神の願いに呼ばれたんだよ

そういう意味では

神に連れてこられたとも言えるな


神の願い…?

待て

ちょっと急だな…


「神は願っている

自分の力を取り戻したいと

神は待っている

自分の力を取り戻してくれる者たちを

だからお前たちが来た


ダンッ!

あの赤い男が強く机を叩き

立ち上がる

2度目の机を叩いた拍子に

オレのカレーの皿が落ちた

ユーイチ、モリ、アリスはちゃっかり

皿を持ち上げて回避していた

ていうかずっと食ってんな

何で息が揃ってるんだ


「…もういい

御託は聞き飽きた

さっさと俺を元の場所に戻せ!


赤い男は

腰に下げていた刀に手を伸ばす


「…だからオレは

そんな力は持ってない

元の場所…

元の世界に戻せない


だろうな

まぁ薄々そうじゃないかとは思った

ここにきて冷静な自分に少し驚く

多分現実味がなくなってきて

分からなすぎてだな

さては考えるのを放棄したな


「だったら…

どうしたら元のとこに

戻れるんだよ!


赤い男は

刀を引き抜き

座っているイサクの喉元に向ける


「答えろ

殺すぞ


イサクは

喉元に向けられた先を握る

握ったところから血の雫が垂れる

その状態のまま立ち上がる


「話は最後まで訊けよ

帰る方法はある

神の『記憶のカケラ』を探すんだ


記憶のカケラ…?

神の…記憶?


「神は

自らの記憶を対価に

魔法を力を使う

対価に支払った記憶は

様々な形で様々な世界に散らばっている

その記憶を探し集めて欲しい

それが神の望んでいることだ

もちろんタダじゃない

記憶が集まれば何でも

どんな願いでも一つだけ叶えてくれる

それが条件だ

どうだ?

悪くないだろ?


イサクは

最後に不気味に笑い手を放した


「記憶を集めれば

帰れるんだから

願いが叶うんだから別にいいだろ

それとも何だ

他に叶えたい願いでもあったか?


赤い男は

イサクに背を向け軽く舌打ちしたあと

付いた血を振り払い

腰に下げた鞘にしまう


「…例えば復讐

とか?


あまりに一瞬のことで

分からなかったがあの赤い男が

イサクを押し倒し胸ぐらを掴んでいる


「…お前

俺の何を知ってる?

…何をどこまで知ってる?


赤い男が凄む


「勘で言ったんだが

当たってたのか?

…何にも知らないよ

わかりやすいんだよ

赤いの


イサクは

顔色一つ変えず言った

赤いのと呼ばれた

赤い男は暫くイサクを睨んだ後

乱暴に胸ぐらを離し


「…赤いのじゃねぇ

俺の名前は

龍千凜暁薫《りゅうせんりんあかつきかおる》

だ


「…長い名前だな…


ポツリとユーイチが呟く

コイツ命知らずだな


「うるせぇ…

…分かった

その神の記憶とやらを探せばいいんだろ

見つければ

元の世界に帰れる

上等だ!

ノってやるよ!

別にお前たちのことを

信用したわけじゃねぇ

願いを叶える間だけだ


赤い男

龍千凜暁薫と名乗ったその男は

座っていたイスに腰掛けた


「…待って

私も行く

私にも叶えたい願いがある

…何かは言えないけど…


それまで黙っていたアリスが言った

その後にユーイチも残っていたカレーを

口一杯に頬張り飲み込んだ後


「俺にも

叶えたい願いがある

どうしても叶えないといけない

みんなを助けたい


「…おれには

叶えたい願いは思いつかないけど

ユーイチくんとイオリくんの助けになりたい


モリにもユーイチにも願い

やりたいことがあった

願い…

自分も願ったんだろうか…

ここに来る前に

だとしたらどんなことを願ったんだろう

なぜ願ったんだろう

起きた時に見た人も関係あるんだろうか

今は記憶がないけど

いつか思い出せるだろうか…

いや

思い出す


「オレも行くぞ

オレは記憶を取り戻す

そして願いも思い出す

それでもいいだろ

イサク


今はそれで十分だ


「あぁ

理由なんて何でもいい

それで十分だ

オレにも

どうしても叶えたい願いがある

だからそのために行く


「…それにイサク

オレたちは行くしかないだよ

前だけ見て進むしかないんだ


「そうだな

前に進むしか道はない


いや

まぁそうなんだけど


「拒否しても

行く宛なんてないからな

この広大な宇宙に放り出されても困るしな

だから結局イサクについて行くしかないんだよ

選択肢なんて最初からひとつしかないし

そもそも選ばせる気なんて無かったろ?

意地悪なやつだな


イサクは笑いながら


「ホントだわ!

確かに選択肢ねぇーわ

面白いねー!


それを見ていたユーイチが


「そんなに面白いか?

…でも多分他の選択肢があったとしても

選ばなかったと思うぞ

みんな


まぁ確かに

そうだとオレも思う

願い

みんなに叶えたい願いがあった

どんな願いか知らないけど

その願いを叶える為に進む

だから

結局選択肢は一つしかなかった

いや一つでよかった

一つあれば十分だった

後には引けなく

先に進むしかない

前だけ見る

それでいい十分だ

だけどオレたちは知らなかった

これからどうなるかなんて

結果なんて

誰も知らなかった






to be continue…


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