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君色レッスンズ  作者: 柏原ゆら
-another story-
13/13

#06

 帰り道。隣には、望月がいた。そんな心地よい感覚に、自然と笑みが溢れてくる。ふと望月を見ると、同じように微笑んでいた。すると、莉乃の視線に気づいた望月が何? と爽やかに訊いてきた。


「……あっ、あのさっ」


 その笑顔にドキリとしながら、言おうと思っていた言葉を口にした。


「『英太君』って呼んでも、いいかな……?」


 こんなことを言ったのは初めてだ。心臓がバクバクと煩い。望月は、一瞬キョトンとした表情を見せ、次に微笑んだ。


「うん、いいよ。じゃあ僕も、『莉乃』って呼ぼうかな」


 望月の口から出る自分の名前に、一気に顔に熱を帯びる。そんな莉乃を心配したのか、望月は手を伸ばしてきた。


「どうしたの? 顔赤いよ? 熱でもあるの?」

「いやっ、違うの……大丈夫だから……」


 その手から逃げるように顔を隠す。すると、望月はクスッと笑って変なの、と溢した。


「でも、そんな、変な莉乃も好きだよ」


 ポロッと出た望月の言葉に、莉乃の動きは止まる。そんな莉乃を不思議そうに望月は見た。どうかした? と問われる。


「だって、望月君に好きって言われたの初めてだから……」

「あれ、そうだっけ? 結構思っているんだけど、伝えてなかったみたいだね」


 あと『望月君』になってるよ、と望月は付け足す。だが、莉乃は反応できなかった。飛鳥が言っていたことは、事実のようだ。先に進む望月の背中を見つめる。


「おいで、莉乃」


 伸ばされる望月の手に、吸い込まれるように駆け出す。隣に立つ、望月の顔を見上げた。望月は不思議そうに莉乃の目を見たあと、微笑んだ。


「好きだよ、莉乃」


 ボッと、一気に顔が熱くなる。望月はそんなの気にしないかのように、平然としていた。


「なっ、何で、そういうこと簡単に言えるの……」

「あれ? 言ってほしかったんじゃなかったの?」


 言ってほしくない訳がない。むしろ、言ってほしい。もっと、もっと。


(……何だろう。英太君って、ちょっと天然なのかな)


 そんな望月の手を、ギュッと握る。すると、望月の顔がこちらを向き、ゆっくりと近づいてきた。



 ――今日もまた、君の色に染められた。


これにて番外編完結です!

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

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