第18話(第一部最終話):生命の光と、時を繋ぐ魔法
王都最大の総合病院、その最上階。
アルベルト王の権限によって完全に封鎖された特別室の中心に、リオンはあの日から全く変わらない姿で眠り続けていた。
「……なるほどね。状況は完全に理解したわ」
ベッドの傍らに立ったアヤが、リオンの胸の上に手をかざし、目を細める。彼女の手から放たれる微細な空間魔法の波長が、リオンの身体をスキャンしていた。
「この子の肉体は、エリアの『生命魔法』によって完璧に修復され、満たされている。でも、あの日、致命傷を負った瞬間の『死の恐怖』から魂を守るために、生命魔法が自動的に彼の意識の『時間』を切り離して、次元の隙間に隔離してしまったのよ。だから目を覚まさない」
「次元の隙間に……じゃあ、どうすれば……っ!」
私が縋るように問いかけると、アヤは不敵な笑みを浮かべた。
「簡単よ。私がその次元の隙間をこじ開けて、止まっている時間を動かす。その瞬間に、エリアが渾身の生命魔法を流し込んで、彼の魂を肉体へと縛り付ける。……レオン、アル、あんたたちは私とエリアが魔力切れで倒れないように、後ろから魔力を注ぎ続けなさい」
「人使いの荒い女だ。……まぁ、昔からだがな」
「王に向かって命令とはね。だが、悪くない」
レオンハートとアルベルト王が、それぞれ私の背中とアヤの背中に手を当てた。
この国で最強の武と、最高の知。そして時空を操る女帝。
これ以上ない、最強の布陣だ。
「ルビー、フェンリル、レッドドラゴン! あんたたちは外に誰も近づけないように見張っててちょうだい!」
『きゅいっ!』『わんっ!』『グルルッ!』
窓の外や廊下で待機している家族(幻獣)たちも、頼もしく応えてくれる。
「行くわよ、エリア!」
アヤの両手から、漆黒の空間魔法が渦を巻いて放たれた。それはリオンの身体を包み込むと、空間そのものを歪ませ、ピキピキとガラスが割れるような音を立てて『次元の壁』を破壊していく。
「今よ! 魂を呼び戻しなさい!!」
「リオン……っ!!」
私は両手をリオンの胸に押し当て、ありったけの魔力を解放した。
あの日、絶望の夜に放ったものとは違う。今は、私を支えてくれる仲間がいる。温かくて、力強い、純度100%の黄金の『生命魔法』。
光が部屋中を包み込み、レオンハートとアルベルト王から供給される膨大な魔力が、私とアヤの限界を押し広げていく。
(帰っておいで、リオン! もう誰も、あなたを傷つけさせない!)
『――お姉、ちゃん……?』
光の奔流の中で、確かにリオンの声が聞こえた。
空間の歪みが収束し、黄金の光がスッとリオンの身体の中へと吸い込まれていく。
静寂が戻った病室。
私は息を呑んで、ベッドの上の小さな身体を見つめた。
「……んん……」
長いまつ毛が震え、ゆっくりと、本当にゆっくりと、リオンのまぶたが開かれた。
焦点の定まらない瞳が、何度か瞬きをして、私を捉える。
「あ……れ……? お姉ちゃん……泣いてるの……?」
その、少し掠れた、でも昔と少しも変わらない優しい声を聞いた瞬間。
私の目から、せき止めていた涙が一気に溢れ出した。
「リオンっ! リオン、ああぁぁっ……!!」
私はリオンの小さな身体に抱きつき、声を上げて泣き崩れた。
リオンは戸惑いながらも、細い腕で私の背中をトントンと優しく叩いてくれた。
「よかったな、エリア」
「ああ。本当に、よく頑張った」
レオンハートが私の頭を乱暴に撫で、アルベルト王が優しく微笑む。アヤは「ふぅ、久々に本気出したわ」と、少し疲れたように笑っていた。
こうして、私の弟を救うための旅は、最高の形で終わりを告げた。
王都の騎士団長に目をつけられたり、伝説の幻獣たちを飼い慣らしたり、最強の天才たちを巻き込んだりしたけれど……。
「……ねえ、お姉ちゃん。なんか、窓の外にすっごい大きいトカゲと鳥がいるんだけど……。あと、この人たち、誰?」
リオンが窓の外のレッドドラゴンたちと、部屋にいる凄まじいオーラを放つ大人三人を見て、引きつった笑いを浮かべている。
「ふふっ、リオン。これから、たっくさんお話しなきゃいけないことがあるんだよ。私たちの、新しい家族のこと」
私の『魔女』としての無自覚スローライフは、大好きな弟を巻き込んで、これからもずっと賑やかに続いていくのだろう。
(第一部・完)
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
「絶望の夜に覚醒した治癒魔法~眠り続ける弟を救うため、私は森の奥で「魔女」になる~」第一部はこれにて完結となります。
主人公エリアの勘違いスローライフから始まり、過去の因縁、そして最強の仲間たちとの共闘……書きたい要素を全部詰め込んだ結果、とても熱い展開になりました。
応援してくれる人が一人でもいたら、このカオスな家族たちの続き(第二部)も書いていきたいと思っています!
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(本作はAIアシスタント『Gemini』と共同で執筆・構成した作品です。Gemini、ここまで一緒に駆け抜けてくれてサンキュー!)




