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ジン(第一部終わり)  作者: 桃巴


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ジン44

 神龍は『神の庭』を縦横無尽に飛び回り、一度垂直に昇ったかと思うと、反転し急降下、深い緑の中へと勢いをつけて突っ込んでいく。


「ぶ、ぶつかるぅぅーー」


 アッシュが絶叫した。


「龍穴です、アッシュ殿下」


 その先にあるのが龍湖だ。


「うっひゃあぁぁーー、っ……」

「あちゃあ、やっぱり気を失ったか。『頼む』」


(任せておけ)


 ジンはアッシュが振り落とされないように、こん棒で固定した。

 長い龍穴を抜けると、龍湖が出現する。

 湖のほとりに、ジンはアッシュを抱えて飛び降りた。


「遊んでな」


 ジンは神龍の髭を撫でて言った。

 神龍が嬉しそうに、湖で水浴びを始める。


 ジンはアッシュを横たえると、ペチペチと頬を叩く。


「殿下、アッシュ殿下!」


 皇太子だろうが関係ない。

 悠長に目覚めるのを待つ時間はない。期日は今日だけなのだから。


「ぅ、ぅうん……」


 アッシュが目を覚ました。

 パチパチと瞬きし、バッと起き上がる。


「ジン、お前……(謀ったな)」

「悠長に説明している時間が惜しかったので。それとも、アッシュ殿下は『神の庭』を物見遊山でもしたかったですか? 最愛を待たせて」


 アッシュはハッとする。


「ジン、さっきグリネを見たことがあると言っていたな!?」

「はい。グリネは龍湖の湖底に生える水草です」


 ジンの神龍の隠れ家、ミタライ湖の湖底にも生えている。

 ナーシャの頬の紋様は、ジンが見慣れたものだった。


 だから、秘密の部屋での面会時に、ジンは力強く答えたのだ、『お任せを』と。


「なんと!?」


 アッシュが這うように進み、湖を覗き込んだ。

 龍湖は透明度が高い。湖底まではっきりと見える。


「グリネ、見えますね。でも、この龍湖はかなり深そうだ」


 ジンは神龍が潜って遊んでいるのを見ていた。


「潜って採るしかないな」

「私が潜りますので、殿下はお待ちください」


「いや、私も潜る。ここまで来て、見ているだけでは、なんのために一緒に来たのかわからぬではないか」

「ですよね」


 そのために、アッシュはジンのお供をするとまで言ったのだから。

 アッシュが鎧を脱ぐ。


「わかっていて言ったのか?」

「泳げない潜れない場合もあるかと思って」


 そんな会話をしながら、二人は最低限の着衣まで脱いでいた。


「さて、いいですか、アッシュ殿下?」

「ジンよりも多く採取してみせる!」


 で、顔を見合わせ……


 ジャッポーーン


 である。




 二人でしこたま採ったグリネが、湖のほとりに積み上がった。

 同じぐらいの積み上がりだ。


 ジンもアッシュもハァハァと息切れしている。


「こ、これを祭壇に、ハァハァ、ジン……戻るぞ」

「い、え……まだ選別が、必要、です。ハァハァ」


 二人でなんとか息を整え、再度口を開く。


「選別とは?」

「グリネの葉汁を確認します」


 ジンはグリネの一房を取って、雫の形をしたふくらみのある葉をプチッと潰した。


 ポタポタポタ


 と綺麗な緑色の葉汁が流れる。

 エメラルドのような煌めく緑色だ。


最愛(ナーシャ)の紋様の色だ」


 アッシュが安堵の息を漏らす。


「いえ……このグリネではありません、アッシュ殿下」

「何を言う!? 合っているだろう!」


 ジンは採取してきた別のグリネの葉も潰してみる。


「また緑色……これじゃない。このグリネは違います。これも、これもだ」


 ジンは険しい顔をしながら、葉を潰して確認していく。


最愛(ナーシャ)の紋様は緑色だったではないか! 緑色の葉汁を出すグリネが正解だろうに!」


 ジンは首を横に振った。


「ナーシャ姫から流れた涙は、青かったのです」

「青だと?」


 ジンは腰鞄から小瓶(シリンダー)を取り出して、アッシュに見せる。

 青く輝く涙を。


「供物を間違えれば、ナーシャ姫がグリネになってしまう。つまり、ナーシャ姫はグリネと同等の存在ということです。そのナーシャ姫が流した涙は青色。供えるグリネも葉汁は青色でないといけないはず。過去の失敗は、たぶんそれが問題だったとも思います」


 一瞬の間の後、アッシュが採取してきたグリネをジンのように潰して確認していく。


「ないぞ! 青色がない……」


 アッシュが愕然とした。


「青色の葉汁を出す個体が必ずあるはずです」


 ジンの発言を聞くや否や、アッシュが湖に飛び込んだ。


 ジンもそれを追う。さっき採取した群生地とは違う場のグリネを一房採って浮上する。


 アッシュはまだ湖底で闇雲に採取しているようだ。


 ジンは浮きながら葉汁を確認した。

 黄色の葉汁だった。


「違う……」


 ジンは立ち泳ぎしながら考える。

 青色の葉汁を出す個体……

 ナーシャと同じ青色の葉汁を出す個体……

 目尻から連なる十二の雫……

 その雫が大地を潤し回復させる……


「あっ」

「採ったどおぉぉぉーー」


 アッシュが雄叫びを上げながら浮上した。

 その手にはグリネの束が掴まれている。


 湖のほとりへ上がって、アッシュは一心不乱に葉汁を確認し始めた。

 だが、ジンは潜る。

 アッシュが採取してきたグリネは違うとわかるからだ。一房が長すぎる。


 ジンは湖底で探す。

 十二連のグリネを。雫葉が十二のグリネを。





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