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ジン(第一部終わり)  作者: 桃巴


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43/46

ジン43

「いつから、気づいていたのだ、私がザッケカランの皇太子であることを」


 祭壇脇に捌けていたカッツも片膝をつく。

 ザッケカラン王族には、魔法や魔術は効かない。それを跳ね除けるマジックアイテムを身に着けているから。


「いや、聞くまい。視える者には問うことは愚かだ。愚問であった」


 ジンの報告書はもちろんザッケカラン王家にも届いているわけで。


「ナーシャ姫とのご婚儀相成りますように、尽力致します」

「参ったな、全てお見通しだったか」


 ザッケカランの皇太子がクランツ王とクランツの皇太子と会釈を交わした。

 このお忍びはザッケカラン王家とクランツ王家の了承の元ということ。


 ザッケカラン皇太子の視線に気づいたナーシャが、サッとベールで顔を隠す。


「ならば、私が忍んでここにいる意図もわかっているな?」

「……最愛の近くにいるためであると」


 ジンはナーシャを一瞥した。

 控えるカッツとも視線が重なる。カッツが小さく頷いた。


「それだけではない。お前のお供をするためだ」

「はい?」


「私はお前に侍り『神の庭』に随行する」

「ご冗談を!」


 皇太子を侍らせ、あまつさえ配下のように随行させるなど、あってはならないことだ。


「『最愛』の窮地に、何もせず見ているだけの傍観者になれと? 一緒に参るぞ」

「アッシュ殿下、お待ちを!」


 ジンの背後に回ろうとするザッケカラン皇太子アッシュを両手を上げて止める。

 ジンはマントを脱ぎ、アッシュに掲げた。


「私ジンが、アッシュ殿下に侍り『神の庭』にお供させていただきます!」


 アッシュが、フッと笑った。

 ジンの肩をポンポンと叩き、『頼むぞ』と口にする。そして、ジンの掲げるマントを手に取ると、迷いなくナーシャの所に向かう。


 ナーシャがスカートを摘みカーテシーをした。


「ナーシャ姫、顔を見せてくれ。久しくそなたの顔を間近で見ていない」


 ナーシャが首を横に振る。


「いえ、どうかご勘弁を」

「ジンには見せるのに、私には見せぬのか……」


「そ、それは……」


 ナーシャの声の揺らぎに、アッシュが苦笑する。

 そんな二人の様子を、クランツ王とクランツの皇太子がハラハラしながら見守っている。


「私より、ジンの方が良いのか? 心許せるのか? 心寄せるのか?」

「ち、違いますわ! あんな冴えない者になど! どうでもよい存在だから、私のみっともない思いをぶつけただけ。あの(ジン)にどう思われてもいいからこそっ」


「では、私にはどう思われたいのだ?」

「一番綺麗な私を見せたいの、『最愛』だからよ!」


 二人の心は通ったようだ。


 アッシュが満面の笑みで、ナーシャのベールを上げた。

 ナーシャの瞳が不安げにアッシュを見る。

 アッシュがナーシャの紋様を指でなぞった。


「これがグリネだな。必ず採取してくる。だが、この紋様のそなたも『最愛』だ」


 ナーシャの紋様に、アッシュが口づけた。


 というわけで、ハラハラは回避された。

 二人を除き、皆がホッとする。


「ジン、散々な言われようだったな」


 カッツがジンの肩に手を置いた。


「当て馬にされた気分はどうだ?」

「自ら当て馬になったんですって」


 ジンは肩を竦めた。


「でも、あのお二方は……いつぞやのカッツさんとアメリさんのようで、既視感があります」

「っ、……ま、まあ」


 カッツの照れた動揺をよそに、ジンは天を仰ぎ『神の庭』を望む。


「そろそろ、行きます!」


 ジンは勇者の証、右手甲の飛龍紋を掲げた。

 皆の視線がジンに集まった。


 アッシュが頷く。

 ナーシャにマントを羽織らせてもらい、ジンの差し出した左手をガシッと掴む。


 クランツ王、クランツの皇太子、ナーシャに視線を合わせた後、カッツと頷き合い、ジンは口を開いた。


「出でよ、飛龍!」


 神龍が姿を現し、ジンとアッシュを乗せて天へとうねり昇った。




『神の庭』


 まさに、それにふさわしい美しさ。

 ところかしこが虹色を纏って清らかに光っている。雨上がりの澄んだ空気が心地よい。


 ジンは神龍でテーブルトップマウンテンを飛翔した。


「アッシュ殿下、空酔いはありませんか?」

「大丈夫だ。それより、グリネを探さねば。文献では湖水に群生していると。この一番大きな湖に降りようではないか」


 アッシュが眼下の湖を指差した。


「少し降下」


 ジンは神龍に指示する。

 湖面の波紋が目視できるまで降りて旋回した。


「見つけたぞ、ジン!」


 アッシュが喜々として叫んだ。


「あそこだ! あそこにも、あっちにも」


 と湖面に浮かび漂う水草を興奮気味に告げる。


「ジン、降りて採取しよう」

「いえ。あれは違います」


 ジンは、キッパリと否定した。


「点在している時点で、グリネではありませんよ。確かにグリネと似ていますが」

「そう、なのか? だが、一応採取しておいたらどうだ?」


 アッシュが納得していないのか、提案する。


「……アッシュ殿下、私はあれがグリネでないと断言できますよ」

「なぜ、わかる?」


 ジンは説明する時間が惜しいと思う。

 ならば、行動あるのみだ。


「アッシュ殿下、しっかり掴まっていてください」

「は?」


「飛翔、龍湖を探せ!」


 神龍が一気に加速した。


「グリネ、実は見たことあるんですよね」

「ぬあにぃぃーー、っうあぁぁーー」





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終盤第三感想嬉しく思います。

第一部あと少し頑張ります。

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