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ジン(第一部終わり)  作者: 桃巴


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ジン24

 ジンは神龍に乗り天原を泳ぐ。

 翼竜なら空を翔ける、獅子なら大地を駆けるとなろう。


「……あ、やっぱりか」


 ジンは神龍の鱗を手に取った。


「髭と同じで、鱗も生え変わる……脱皮するもんな。痒かったんだろ?」


 ジンは神龍に話しかける。

 それに呼応するように神龍がうねった。


「ミタライ湖に行こう」


 神龍が嬉しそうに、速度を上げた。

 勇者の使徒神獣には、それぞれ秘密の隠れ家的な場所がある。いつもは天界に存在し、勇者に召喚されて地上に現れる。

 その地上での安息地、使徒神獣にしか辿り着けない場所だ。


 ジンの神龍は、天原を進み龍穴と呼ばれる神龍しか入れぬ穴へと入っていく。

 狭い穴を抜けると……神秘的な湖に辿り着く。

 湖に流れ落ちる水脈が二本。

 一方は甘く、一方は爽快な水源である。

 普通は陽が降り注ぎ、木漏れ日が水面を彩らせるものだが、ミタライ湖は反対に湖から光の柱が天へと昇る。


 神龍はその光り昇る湖に身を沈め、身体をうねらせた。


 キラキラ

 パラパラ


 と鱗が抜けていく。

 幼龍から成龍へと最初の脱皮である。

 矢印のようだった鱗が、斧刃のような……扇のような丸みを帯びた鱗へと変わった。


 腰鞄からアイテム用の回収袋を取り出す。

 アイテムカウント百が入る回収袋だ。

 ジンは鱗を回収する。


【神龍・幼龍の鱗 100 所持者飛龍紋ジン】


 便利(マジックアイテム)屋行きだ。

 龍の鱗は、髭と同じく希少価値があるだろう。

〚セブン〛の店主が驚く声が想像できる。


「髭ももう少しだろうな」


 ジンは湖のほとりに座り、光の柱を眺める。

 湖を覆うように伸びる木々の葉を見ながら、鎮守の大木が思い浮かんでいた。


「……お礼に供物持っていこうかな」


 このミタライ湖の水なら喜んでくれるよな、とジンは思い至る。

 腰鞄から空の小瓶を取り出して水を汲んだ。満水にした三本の小瓶を腰鞄に入れる。


「ルララルーの鎮守の大木にお供えしてこよう」


 ジンは神龍の背に乗った。




「集結してる……」


 ジンは鎮守の大木上空から、吊り橋を渡りララ村にぞくぞくと集まる勇者パーティーらを眺めた。


「何をするんだろ?」


 下降したところで、カッツがジンに気づき手を振る。

 ジンは神龍を天昇させ、こん棒を使ってララ村に着地した。


「ジン、どうした、何か言伝か?」


 カッツが訊く。

 王都からの指示があるのかと。


「あ、いえ。個人的来訪です。鎮守の大木にお供えしようと」

「そうか……だが、今から一斉攻撃予定だ。すまないが、サッと終わらせてくれ」


「一斉攻撃?」

「このままじゃあ、埒が明かないからな」


 ジンはチラッと虹色ダンジョンの入り口を見る。

 旋回より近くで見る入り口は、やはり神殿のように荘厳だった。


「ジン?」

「あ、すみません。行ってきます」


 ジンは虹色ダンジョンの入り口に背を向け、鎮守の大木へと向かう。

 五日間、野宿した聖木の根元へ。


 今や、鎮守の大木が聖木として在るのは少ない。

 ネバラン自治領のように魔物が巣食うのは、すでに浄化力が枯渇し、単なる木になっているわけ。『朝露』が採取できなくなった鎮守の大木は、もう聖木ではないのだろう。


 ジンは跪き、腰鞄から湖水の小瓶を取り出した。


「……直置きは違うよな。あ、そうだ!」


 神龍の鱗を三枚取り出し、三つ葉紋のように配置する。その上に、小瓶を三本並べた。


「『朝露』と『三玉』ありがとうございました」


 ジンはお礼と祈りを捧げ、大木にそっと触れる。


『そなたなら、開けられるはず』

「え?」


 サラサラと聖木の葉が揺れ奏でる。


『扉は破るものではない』


 ジンはハッとする。

 聞こえてくる声が聖木からだと。

 優しい声色が耳に残っている。

 耳を澄ませたが、そう以上は聞こえてこない。

 ただただ、風が葉を揺らしていた。


「……また、来ます」


 ジンは立ち上がり踵を返した。

 聖木からまっすぐに荘厳な扉へと、足を進めた。


「おおっと、こん棒少年。お前さんも一斉攻撃に加えさせてやろうか?」


 ニヤニヤした顔で嫌味を言った者は……ランジのパーティーに先陣を強制した勇者だ。


「つっても、お前のこん棒じゃ足しにもならんか、クックックッ」

「俺らがしごいてやってもいいぞ、ギャッハハ」

「見学していたら、どうかしら?」

「見てても参考にもならんって、こん棒じゃあ、俺らの攻撃を真似できねえ」


 そのパーティーの者らが口々にからかう。


「……」


 相手にするだけ無駄だ。


「お前らっ! 無駄口叩くんじゃねえ!!」


 カッツが一喝する。


「ぁ、すんません」


 ダンジョンを殲滅をさせたカッツに逆らう者はいない。


「ジン、挑戦してみるか?」


 カッツが虹色ダンジョンを一瞥する。

 ここに集まった勇者パーティーらが、ことごとく破れなかった出入り口を。


「はい」


 その返答に、勇者パーティーらの視線がジンに集まった。応じるとは思わなかったし、ジンのこん棒攻撃が通じるとは思っていないから。


 ジンに色んな視線が向いている。

 冷めたもの、嘲笑うもの、手厳しいもの、白けるもの、見守るもの等々、イキっただろう勇者(ジン)を見るそれだ。

 その視線は、ジンに期待はしていないのが明らかである。


 だが、カッツだけはジンを頼もしげに見る。


「任せた、やってみろ」


 ジンは頷き、虹色ダンジョンと対峙した。


「じゃあ、やってみます」


 ジンは出入り口へ進んだ。

 背後には名だたる勇者パーティーの視線。


 ジンは静かに深呼吸する。


 それから、手を上げ……




 コンコン


 荘厳な扉をノックした。






やっと日数に話数が追いついた。

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