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ジン(第一部終わり)  作者: 桃巴


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ジン22

 ジンは二度ほどゆっくりと旋回し、虹色物体が動きを完全に止めたのを確認すると、ルラ村のカッツの居る方へと着地する。

 神龍を天昇させ、こん棒で下降して。


「カッツさん」


 ジンはすぐにカッツのところに寄る。

 カッツも目を見張りながら、ジンに近寄った。


「ジン、お前……光ってるぞ。あの鎮守の大木も光っていたよな?」


 カッツが鎮守の大木を一瞥する。


「あっ、えーっと……」


(鎮守の大木の力で、こん棒がレベルアップしたからとでも言っておけ。聖の力は言う必要はないぞ)


「なんか、鎮守の大木の力を借りて、こん棒レベルが上がったみたいで、その影響かと」

「確かに前に見たときとは様相が違うな。武器がレベルアップすると神々しいものだ」


『ククッ、こん棒のレベルアップだとよ』

『ププッ、恥ずかしげもなくカッツさんに報告してるぞ』

『こん棒少年は純粋だこと。ヤッたぜ、嬉しいぞ、ってことだろ?』

『経験積んであげる武器レベルを、他力で上がるっちゃあ、やっぱこん棒なだけはあるよな。フォークがナイフになったあ、嬉しいぞ! ってな』


 カッツの表情が一気に険しくなる。

 苦言を呈する勢いだが、ジンは小さく首を振って笑った。

 陰口には慣れている。気にしちゃいない。


「……ジン、わかった。ザナギさんに報告に行くのか?」

「はい。……たぶん、虹色物体(あれ)は階層ができて、ちゃんとダンジョン化したようです。ララ村に留まるのでしょう。入り口もララ村に向いてますし」


 カッツが大きく頷く。


「じゃあ、次はダンジョン開通か」

「でしょうね」


「そう簡単にはいかなそうだがな」


 ジンは『そうですね』と答えながら、村民の視線を感じていた。

 勇者パーティーらにではなく、ジンを窺っているのだ。


「じゃあ、私は王都へ」


 カッツの側を離れ、村長に挨拶へと向かう。

 それを待っていたかのように、村長と村民らがジンを取り囲んだ。


「ジンさん、こちらへ」


 ジンは村長と村民らと一緒に、村の中心にある石碑へと移動する。


「不安ですよね?」


 ジンは村人らを気遣った。


「たくさんの勇者パーティーがいますから、安心してください。皆さんには、確かに招かれざるダンジョンでしょうが、ダンジョンによって村が栄えます」


 ダンジョンは勇者パーティーらの現場になるからだ。周囲はダンジョン景気にわく。

 ダンジョンを目的にした勇者パーティーらが吊り橋を使えば、通行料も手にできる。


「国に認可されれば、村にはダンジョン管理費が支払われますし」


 宿屋や飯屋などを設置する費用になる。

 武器屋、防具屋、便利(マジックアイテム)屋等が次々に出店し、地方ギルドまでできれば町へと変わるだろう。

 かつてのルララルーのように。


「あ、それは、どうでもよくて……」

「え?」


 ジンは村長の答えに耳を疑った。

 ダンジョンがどうでもいいのか、村の発展がどうでもいいのか……。

 よく見ると、村民らの表情は不安げではない。

 普通なら、要塞並のダンジョンが目前に鎮座したら、不安にかられ怖いと感じるものだろうに。


「えっと……?」


 村民らが顔を見合わせて、スッと退く。


「これを見せるべきかと」


 村長が蔦で覆われた石碑の下部を手で払ってジンに見せた。


 石碑の下部には在りし日のルララルーが刻まれている。

 地割れのないルララルーの。

 注目すべきは鎮守の大木の真ん前に、丘が描かれており、そこに三つ葉紋が印されていること。


 まさに今、虹色ダンジョンがはまっている場だった。

 今の景色と同じような光景が石碑に刻まれている。


「この石碑は、どういうことです?」

「ザッケカラン最初の聖女は、このルララルーから誕生しました。ちょうど、この三つ葉紋の所。あのダンジョンがある場あたりなのですよ」


 村長が蔦を戻す。

 聖女が生まれた聖地を刻んだ石碑なのだ。

 それが今現在と酷似している。


「ですから、我々は特にあのダンジョンを恐れてはいません。無くした光景が還ってきたかのように感じているのです」


 村長と村民らは、ジンの笑みを見せる。


「我々の村では、ずーっとあの渓谷に聖女の丘があったと言い伝えられてきましたから。村になっている今現在じゃあ、ここが最初の聖女誕生の地だと知っている者は少ないようで……」


 村長が勇者パーティーらを一瞥する。


「昔は、この地を訪れた聖女は真っ先に祈ったそうなのですがね」


 勇者パーティーらに居る聖女は、この地に来ても祈っていないようだ。

 この地でなくとも、聖女の祈り習慣は廃れている。


「ですから、ジンさんがララ村で毎朝祈っておいでだったことが我々には嬉しくて」

「あ、それは……見られてたのか、参ったなあ」


 ジンは居心地が悪い。気恥ずかしいから。

 早朝の淡い光に祈りを捧げて『朝露』を頂戴していたわけ。祈りを捧げることが当たり前だとジンは思っていたから。

 朝陽に祈るのと同じ感覚で、挨拶のように。


「祈っていただき、ありがとうございました。ジンさんに、ルララルーのことをお伝えできて良かった」


 ジンはコクンと頷き、石碑にも敬意を払うように胸に手をあてた。


「では、私はこれから王都へ報告に行きます。何か困ったことがあれば、さっき私が話していた人に言ってください」


 村長と村民に見送られ、ジンは王都へと戻った。




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