異世界薬局 専門性は特有の誤字傾向をもたらすか?
異世界薬局ネタになります。以前より、専門分野がある作家さんで、作品が小説家になろうで公開されていて、その作品が作家さんの専門分野を反映しているものがないかなあ、と思っていました。「だいしゅきホールド」の話題で巡り会えました。ありがたいことです。
本題、作品の専門性は特有の誤字傾向をもたらすか?
結論を先に書くと、少しはもたらすと考えます。
最初に、異世界薬局の専門性がもたらしたであろう誤字です。
「鎮痛な面持ち」
「沈痛な面持ち」の誤字です。
コトバンクの「沈痛」項目へのリンク
ttps://bit.ly/2JqIcev
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コトバンクは「精選版 日本国語大辞典」が引けるのでおすすめです。
なんで「鎮痛」が出てくるかというと、おそらく、作者が「鎮痛剤」、「鎮痛薬」を変換する頻度が他の作者よりも高いので、IMEの辞書が「鎮痛」を第一選択にしたと思います。「沈痛」はそもそもの使用頻度が低いので、「鎮痛」が先にでてくる面もあるかもしれません。
作家の専門分野が確認できなかった「魔法医師の診療記録」では「鎮痛」「沈痛」の取り違えは確認できませんでした。医学関係の専門分野だと、変換の都合で発生しやすく、発生しても見慣れているので見逃しがちであると思います。
異世界薬局と同じMFブックスだと、小説家になろうからの代表作であろう「無職転生」でも
「鎮痛な」顔とか表情とか面持ちを書籍版で投入しています。同じ編集や校正だと、同じ誤字を見逃すことになったのかもしれません。「鎮痛」が誤字の場合は、本来であれば「沈痛」と書きたかった箇所で使われます。シリアスなシーンが台無しになるので、気をつけたいところです。
大手の出版社から大手の出版社に移籍した、浅井ラボの「され竜」シリーズでは「鎮痛咒式」「鎮痛効果」という言葉の使用頻度が高いためか
角川スニーカー版、小学館ガガガ版のどちらでも「鎮痛」な顔や面持ちが存在しています。一度発生してしまうと「沈痛」を「鎮痛」にする誤字は、発見しにくい誤字パターンであると言えるでしょう。
以下、他の誤字。
誤字についての投稿を仕上げる手順としては、
「なろう版」を読んで誤字を見つける。
その誤字が書籍版に存在するかどうかを横断検索する。
というふうにしています。なろう版で存在した誤字が、書籍版になければ校正で修正されたということです。
異世界薬局は、理由は分かりませんが、4巻は誤字が修正されている数が多かったです。「馬から下りるでも馬から降りるでもええやんけ!」
皇帝がいるワールドであれば「皇族下馬下乗」の下馬札あわせがいいかなと思います。「降りる」で馬さんがらみだと「降着」を連想してえんぎがよくありません。
門を「かたく」閉ざすであれば、「固く」か「堅く」の方が用例は多いです。「門を硬く~」は無いわけではないぐらい。
なろう版だと「教鞭を取る」でしたので、修正されていました。
なぜか、5巻のあらすじだけ「教鞭を執る」ときっちり書かれていました。誰が書いているものか、システムがよくわかりません。
コトバンク「教鞭を執る」へのリンク
ttps://bit.ly/2JnO1JQ
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ちなみに、「教鞭を執る」は国木田独歩の文を引用していますが、
~~~~~~~~~~~~~~
※日の出(1903)〈国木田独歩〉「校長大島氏は四五人の教員を相手に二百余人の生徒の教鞭を採って居られます」
~~~~~~~~~~~~~~
日国(日本国語大辞典)にも用例引用ミスが存在していて、国木田独歩の底本でも「教鞭を採る」ですので、電子化の際か精選版にするときになんかあったんやなと推察できます。油断できません。適当なことを言うと、夏目漱石の「三四郎」の「教鞭を執って」との取り違えですね。しらんけど。
三四郎 夏目漱石
ttps://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/794_14946.html
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確認すると夏目漱石の「道草」だと「教鞭を取って」になっているという……これもうわかんねえな!
たいていの重ね言葉、重言はとくに口語調であれば「べつにええやんけ!」と思っているんですが、「再度立て直す」パターンだと、立て直し2回目(以降)と受けとられることもあるので1回目の立て直しであれば「立て直す」だけの方がいいと思います。
度を超す → 度を越す
目に止まる → 目に留まる(留意のほう)
直っていたセット。せっかくスクリーンショットをとったのでというあさましいこころ。
表記ゆれセット。「挿管」があるので「挿し込む」になりそうですが、とつぜんお腹やら胸部がいたくなる癪の「差し込み」もあるためなのか、「差し」になっていました。その流れで「刺し」と揺れています。「刺す」も医療系だと使用頻度がたかいので至近の変換でゆれたのかもしれません。揺れとゆれとユラリとしてみました。これぐらいでいいと思いますが、そのスタイルを徹底するとネタがなくなるので……すまぬ……すまぬ……
なろう版であった「採血」のあとに「血を取る」は「採血」のあとに「血を採る」となっていたので、なんらかの使い分けがあるのかもしれません。さしっぱなし? 血が出ているかどうか? 自分だとわかりませんでした。
4巻の誤字が少ないと思った箇所。靴だと「履く」でブーツも「履く」かなと思ったら、該当キャラのイラストを見ると膝上のニーハイストッキング風だったので、ストッキングなら「穿く」だし、ニーハイソックスでも角川系辞書なら靴下は「穿く」なので、角川系のMFブックスだと「穿く」なのか? と調べて楽しめました。楽しめましたが、どういうことなのかはわかりませんでした。
せっかくスクリーンショットをとったのでというあさましいこころ。
なろう版だと「原型をとどめない」でした。書籍版だと「原形」に修正されていました。これも4巻です。
横断検索だと
原形をとどめ 3238
原型をとどめ 1309
原形を留め 2588
原型を留め 1092
「原形を止め」「原型を止め」もありましたが省略します。
どなたかの作品においてなろうで誤字報告をした際に、「原型をとどめ」を「原形をとどめ」で報告することがあったんですが、非採用になったことがあります。「原型をとどめ」を解説文に採用している辞書もあるんですが少数派です。突っぱねなかった、異世界薬局の作者判断がみごとだと思います。
茫然自失、呆然自失、茫然自失とゆれ。なろう版からそのままです。「茫然自失」、「呆然自失」はどっちでも間違いではありません。微妙な使い分けがあるのかどうかはわかりませんでした。指運でも、それはそれでよさそう。
きついところがきました。「ご相伴」、「お褒め」、「栄誉」、「招待」につづく「預かる」は「与る」の誤字です。4巻に誤字の「預かる」がないのが不運だったか。4巻で指摘されていると、その後の巻ではなかったと思います。
「預かる」「与る」の間違いは、小説家になろうから書籍化された作品のある作家のみならず、間違いの少ない作家でもはまりがちな言葉です。中華モノを書いて漢語がらみが鍛えられたであろう嬉野秋彦でも間違う難易度。みんな大好き、ワータイガー話「山月記」の中島敦も「ご相伴に預かる」と書いてしまう。それが「預かる」「与る」です。
環礁 ――ミクロネシヤ巡島記抄―― 中島敦
ttps://www.aozora.gr.jp/cards/000119/files/24444_16659.html
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「預かり知らぬ」という誤字パターンもあります。
この投稿なんかよりも信頼できる解説がほしいという方むけに、毎日新聞 校閲センター「毎日ことば」のコラムを紹介。
「預かり知らぬ」→「あずかり知らぬ」
ttps://mainichi-kotoba.jp/photo-20191218
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「関与」と一緒に覚えておくと忘れがたいです。
「預かる」「与る」は、別の投稿でまとめたいと思います。
海洋法に関する国際連合条約
ttps://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/unclos1.htm
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通行でもいいけど、海洋ものが好きな人もおさえたいなら通航のほうがキャッチーなパターン。船がすれ違う際の安全についてなら「通行」とする用例が多いです。
精根尽き果ての誤字。精魂だと「込める」とあわせて使うことが多いと思います。
なろう版では「神術の腕が訛る」でしたが「神術の腕が鈍る」と修正されていました。
「熱にうなされ」は、幅広い世代に意味が通るようになってきているので、「熱にうなされ」「熱に浮かされ」のどちらでもよいとなる段階になってきていると思います。(ほんと適当なことを言ってるな!)
「的を射る」「的を得る」と同じ状況。ここ最近のコロナ騒ぎで発熱した場合に「熱にうなされ」るとSNSに投稿するひとも多くでてくるでしょう。
別件ですが「熱に浮かされ~」とちゃんと書いている愛内なの先生は、もしかして、誤字ネタをなんの説明も無しにブッ込んでくるタイプなのではないかと思い至りました。
顔、眉セット。「眉をしかめる」については、文化庁の「国語に関する世論調査」があります。「熱にうなされる」も同時に調査されています。
ttps://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/h26_chosa_kekka.pdf
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言葉は日々ゆっくりと変わっていきます。文化庁の調査は、積み重なっていくと内閣告示の常用漢字表にも影響をあたえるはずですので、見ておいて損はありません。
「全面抗争」という言葉が7巻部分であったので、引っ張られて変換されたと思います。「前面」でしょう。
視線を伏せる
横断検索では
目を伏せる 43687
視線を伏せる 2736
薬師の重責という、職務、任についての「たえる」なので
重責に堪える 55
重責に耐える 220
横断検索だと逆転していました。あれ? しかし、せっかくスクリーンショット(略)。
感心でも関心でもつながる箇所。7巻部分までくると、読む集中力を完全に失っていて判断がつかなくなってきていましたが、あさましいこころで貼り付けました。
専門分野が分かっている作家さんの作品については、数年前だと、amazonのkindleのDRMクラックがわりと簡単にできていて、公開作品からテキストだけを抜くのはそう手間でもなかったらしいんですが、今は簡単にはできないそうです。ざんねん。
後半はぐだってしまいました。
次の大きなネタは「鎮痛な~」をまとめるか、「預かる」「与る」ネタになると思います。軽めの投稿が何本かはさまると思います。




