第8話 初報酬とパーティ結成
何話か書き溜めしているので、基本的には1日、1、2話投稿しようと思います!
出し切ったらゆっくり1日1話か2日で1話出そうと思うので良ければ見てってください。
ダンジョンの五階層。
俺と夏希は、ポップスライム。ボスが出現する階層までやってきていた。
「いよいよだね」
「ああ。三日間の修行の成果を試すには、ちょうどいい相手だ」
俺の言葉に、夏希は腰に差した剣の柄を握った。
この三日間、夏希は素振りを繰り返し、回避の精度を高め、受け流しの技術も練習してきた。
もちろん、それだけで成果が出るとは限らない。実際に戦って確かめる必要がある。
「夏希さん、今回は夏希さんが一人で戦う番だ」
「うん。分かってるよ」
夏希は短く答え、前を見据えた。
俺は少し距離を取り、いつでも助けに入れる位置で見守ることにした。
中央にいたポップスライムが、こちらに向かって跳ねてくる。
ぷるん、と身体を揺らしながら、勢いよく飛びかかってきた。
夏希は剣を構える。
ポップスライムが迫る。
その瞬間、夏希は身体を1歩横にずらした。
魔物の体当たりが、目の前を通り過ぎる。
無駄に大きく動くことはない。
必要な分だけ動き、攻撃を避ける。
修行で何度も繰り返した【回避】の動きだ。
「よし……!」
夏希は体勢を崩すことなく、すぐに剣を構え直した。
ポップスライムが再び跳ねる。
今度は真正面からの突進だった。
夏希は逃げるのではなく、剣を構えて迎え撃つ。
衝突する寸前、剣の角度を変えた。
迫ってきた魔物の勢いを受け流し、その進行方向をわずかに逸らす。
ポップスライムの身体が、夏希の横を通り過ぎていった。
「今だ!」
俺は思わず声を上げる。
夏希はその声に応えるように、一歩踏み込んだ。
剣を振るう。
夏希の刃がポップスライムを捉え、その身体が大きく揺れた。
だが、まだ倒れてはいない。
ポップスライムは再び距離を取ると、身体を震わせながら夏希に向き直った。
夏希は息を整え、剣を握り直す。
ポップスライムが跳ねる。
今度は半歩だけ横へ動いた。
攻撃を避けた直後、剣を振り抜く。
今度の一撃は、確かな手応えとともにポップスライムを捉えた。
その身体が弾けるように崩れ、光の粒となって消えていく。
静寂が戻った。
「……倒せた」
夏希はしばらく、その場に立ち尽くしていた。
やがて、自分の手にある剣へと視線を落とす。
「私、一人で倒せたよ!」
「ああ。ちゃんと自分の力で倒したな」
『お前の時と違って、ほとんど苦戦してなかったけどな。ありゃ化けるぜ』
(ああ、相手が分裂や酸を使う前に倒してしまった、俺より苦戦してないのは事実だな)
俺が少し複雑な感情で、何を言おうかと迷っていると、夏希はゆっくりと顔を上げた。
その表情には、喜びと驚きが入り混じっていた。
「なんだか、まだ信じられないかも」
「三日間、あれだけ練習したんだ。ちゃんと成果が出たんだよ」
「そっか……。えへへ、頑張ってよかった。あっ!レベルアップしたよ!」
夏希は照れくさそうに笑った。
その笑顔を見て、俺も自然と頬が緩んだ。
夏希自身が考えて、努力して、自分の力でポップスライムを倒した。
劣ってるかもとかそんな事は関係ないんだ。二人で努力して、勝利したその事実が大切なんだ。
「そういえば、レベルアップで、どれくらいステータス上昇したんだ?」
「あ、えっとね!」
夏希は上機嫌でステータスを開くと俺に見せた。
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佐々木 夏希Lv:3➤ 4 次のLvまでExp10
見習い冒険者
HP:64/64
MP:51/51
筋力:22(+8)
耐久:16(+8)
魔防:25(+12)
敏捷:16(+8)
器用:19(+8)
知力:17(+8)
魅力:23(+8)
幸運:15(+8)
固有スキル
【未来テープ】
戦闘系スキル
【回避】Lv3
【初級剣術】Lv2
【受け流し】Lv1
魔法系スキル
なし
耐性系スキル
なし
生産系スキル
なし
─────────────────────
「ステータスが俺と同程度になったな。これなら一緒に進めそうだな」
「うん! もっと練習して、もっと強くなりたい」
夏希はそう答えたあと、手にした剣を見つめた。
私は、未来の記憶を再生していた。
そこに映っていたのは、あるニュース番組だった。
映像の中では、一人の剣士について紹介されていた。
『回避も受け流しも、剣の扱いも超一流』
『まるで舞うように魔物を翻弄しており……』
そして、最後に聞こえた言葉。
『舞姫と呼ばれています』
その記憶を思い出すと、自然と胸が高鳴った。
攻撃をかわし、攻撃を受け流し、まるで踊っているかのように剣を振るう。
そんな戦い方ができる人がいる。
今の私の動きは、あの映像の舞姫と比べるとまだまだ荒く、実力も遠く及ばない。
今日だって、駿が見守ってくれていたからこそ、落ち着いて戦えた部分もある。
もっと練習しなければならないし、経験だって積まなければならない。
私も、あんなふうに戦えるようになりたい。
私は、理想に1歩だけ進んだ、そんな気がした。
「……よし!」
「ん? どうした、夏希?」
「ううん、なんでもない!」
私は顔を上げ、駿に笑いかけた。
今はまだ、あの剣士には届きそうにない。未来で舞姫と呼ばれた、あの美しい女性。
目指したいと思えるものができた。
それだけで、これからの修行が少し楽しみになった。
「それじゃあ、そろそろ戻るか」
「うん!」
私たちはダンジョンを後にした。
冒険者ギルドに到着すると、俺たちは受付へ向かった。
今日の探索で得た魔石を換金するため、そしてパーティ登録を行うためだ。
日本に一つしかないダンジョンということもあり、受付には国内外から訪れた探索者が列を作っていた。まるで人気テーマパークのような混雑ぶりだ。
しばらく並び、ようやく俺たちの順番が回ってきた。
「こんにちは。今日はどうされましたか?」
「今日は討伐した魔物の魔石を納めに来ました。それと、パーティの登録もお願いしたいんです」
「魔石の買取と、パーティ登録ですね。お二人で結成されるということでよろしいでしょうか?」
「「はい」」
俺と夏希は、ほぼ同時に答えた。
「かしこまりました。では、先に魔石の確認をさせていただきますね」
俺は持ってきた魔石を二つ、カウンターの上に置いた。
どちらもポップスライムから手に入れた魔石だ。
以前、俺が一人で倒した分と、今日、夏希が一人で倒した分。
それぞれ一つずつだ。
受付のお姉さんは魔石を確認し、俺たちへと視線を戻した。
「ポップスライムの魔石が二つ……。お二人で探索されていたんですか?」
「はい、それぞれ一匹ずつ倒しました」
俺が答えると、お姉さんの表情が少し変わった。
「それぞれ一匹ずつ、ですか?」
「はい!」
夏希が元気よく答える。
「私は今日が初めての単独討伐だったんです。三日間、駿と一緒に修行して、それでようやく倒せました!」
「まあ、そうだったんですね」
お姉さんは夏希を見て、それから俺へと視線を移した。
「ということは、駿さんも以前にポップスライムを討伐されていて、今日はお二人とも成果を持ち帰られたということですね」
「はい」
お姉さんは二つの魔石をもう一度見つめて、こちらを見た。
「とても素晴らしいですね! 新人の方が一人でポップスライムを討伐できるなんて、なかなかできることじゃないですよ」
「まだまだです。これからもっと強くなりたいと思っています」
俺がそう答えると、夏希も隣で頷いた。
「私も! もっと練習して、駿と一緒にいろんな階層を探索できるようになりたいです」
「ふふっ、いい目標ですね。ちなみに、私は川村風花といいます。また何かございましたら、私の、受付に立ち寄ってくださいね」
川村さんは柔らかく微笑んだ。
ただ、何となく圧を感じるというか、逆らえないような雰囲気がある気がする。
「魔石の買取金額をご案内しますね。ポップスライムの魔石は、一つ二千五百円になります。二つで五千円ですね」
「……え?」
思わず聞き返してしまった。
二千五百円。一つで?
俺はカウンターの上に置かれた魔石を見つめた。
あのポップスライムを倒すために、どれだけ時間を使ったか。特に俺が倒した個体は、分裂や酸まで使ってきたのだ。何度も危ない場面があったし、倒すのだって楽じゃなかった。
それなのに、一つ二千五百円。
……安くないか?
『ははっ! 命懸けで戦った報酬が二千五百円か。世知辛いなぁ、おい』
(うるさい。お前は黙ってろ)
頭の中で笑う傲慢に、俺は心の中で言い返した。
「魔石の価値は、魔物の種類や大きさ、品質などによって変わります。ポップスライムの魔石はボスとはいえ、比較的安価なんですよ」
川村さんは慣れた様子で説明してくれた。
「なるほど……」
そう言うしかなかった。
確かに、まだ五階層の魔物を倒しただけだ。最初から大金を稼げると思う方が甘いのかもしれない。
それでも、もう少しくらい期待していた。
「それでは、合計五千円で買い取らせていただきますね」
「……お願いします」
俺は少しだけ肩を落としながら、買取の手続きを進めてもらった。
冒険者として稼いでいくのも、なかなか大変そうだ。
「それでは、魔石はこちらでお預かりします。パーティ登録の手続きも進めていきましょう」
そう言って、川村さんは必要な書類を取り出した。
俺と夏希は説明を聞きながら、順番に必要事項を確認していく。
その間も、川村さんは時折、俺たちの様子を興味深そうに見ていた。
俺たちは、まだ駆け出しの探索者だ。
実績だって、ようやくポップスライムを倒せるようになった程度。
それでも、こうして一歩ずつ前へ進んでいる。
そして今日、俺たちはもう一つの一歩を踏み出そうとしていた。
「はい、これで登録は完了です。パーティ名は七界ですね。正式にパーティとして登録されました」
パーティ名は俺が決めることになった。
別世界が存在していること。そして、その一つに、七つの大罪にも登場する傲慢を冠した世界が存在していること。
そこから考えたのが、七つの世界――略して七界だ。
正直、もっといい名前があった気もする。けれど、ほかに思いつかなかったので、ひとまずこれでいいことにした。
一緒にダンジョンへ行ったり、修行をしたりしてきた。
けれど、こうして正式にパーティを組むのは初めてだ。
「よし。それじゃあ、これからよろしく、夏希」
「うん! こちらこそ、よろしくね、駿!」
俺たちは笑い合った。
「お二人なら、きっといいパーティになれそうですね」
川村さんがそう声をかけてくれた。
「ありがとうございます」
俺は礼を言い、夏希と一緒に受付を離れた。
まだ見ぬ階層。
まだ出会っていない魔物。
そして、これから積み重ねていく経験。
俺たちの探索は、ここからまた一歩先へ進んでいく。
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