第1話 ダンジョンとステータス
修行パートとかは、箇条書き程度の方が良いのかなとか手探りですが、良ければ見てってください
突然だった。
2026年、全世界で同時に地震が観測された。
幸い、津波もなければ、建物の倒壊や火災も発生しなかった。しかし、世界中の人々が確かに揺れを感じたにもかかわらず、その被害はどこにも見当たらない。
本当に地震が起きたのか。それとも、全人類が集団催眠にでもかけられたのか。
各国のメディアがその話題で持ちきりになる中、二日後、世界を揺るがすニュースが報じられた。
『日本国内で一基、世界全体では計六基の謎の塔が発見されました。塔の内部には扉が設置されており、その先では、これまで確認されていない生物が発見されたとのことです』
後に人類は、この地震こそが世界の理が変わった瞬間だったのだと知ることになる。
だが、その事実に気づくのは、もう少し先の話だ。
俺、萩野駿は、2051年3月13日、ついに十八歳になった。
身長172センチ。勉強も運動も平均的。顔も、まあ平均的。
自分で言うのもなんだが、どこにでもいるような人間だ。
アニメや漫画は好きだった。けれど、変なプライドが邪魔をして、周囲にはなかなか言い出せなかった。
中学、高校の六年間。陽キャでも陰キャでもない、いわゆる「無キャ」として、よっ友とだけ付き合う学生生活を送ってきた。
そんな俺の退屈な日々を埋めてくれたのが、現実世界にダンジョンが出現する小説だった。
普通の人間がダンジョンに挑み、モンスターを倒し、未知の力を手に入れていく。
画面の向こうの主人公達、ずっとうらやましかった。
でも、今日で終わりだ。
俺も、法律上ダンジョンに潜っていい年齢になったのだ。今まで妄想してたシュチュエーションが現実になるかもしれない。
そんなワクワクを胸にダンジョンへと向かった。
池袋ダンジョン。
今や、渋谷のハチ公前にも負けないほどの待ち合わせスポットになっている。
ダンジョンの周辺には、冒険者らしき人々が大勢集まっていた。装備を整えた者、仲間を募集する者、動画を撮影する者。
その光景を目にしただけで、胸が高鳴った。
俺も、今日からこの世界に足を踏み入れるのだ。
塔の入口には、駅の改札のようなゲートが設置されていた。資格証をかざせば通過できる仕組みらしい。
その先にあるのは、極彩色の光を放つ、ガラス板のような不思議な入口。
あれに触れれば、ダンジョンの内部へ転移できる。
そう、何度も読んだ冒険記事にも書かれていた。
「よし……!」
俺は資格証を握りしめ、ゲートに向かった。
「ちょっと待って!」
「……はい?」
資格証をかざそうとしたところで、背後から声をかけられた。
振り向くと、銀髪のボブカットに、サブカル系の服装をした女の子が立っていた。
身長は百六十センチに届かないくらいだろうか。整った顔立ちで、目を引く容姿をしている。
ミニスカートに、肩の部分が開いた黒いオーバーサイズの服。ハイソックス。
……いや、なんだこの子。
なぜ俺に話しかけてきた?
まさか、詐欺か? それとも宗教の勧誘?
「私、佐々木夏希って言います。十八歳で、三月十日からダンジョンに入ってるんだけど……一人だとちょっと厳しくて」
「はあ……俺は萩野駿です」
「今、一人で入ろうとしてるのを見かけたから、一緒に入れないかなって。どうですか?」
……いや、急すぎるだろ。
こんなにかわいい子に誘われたら、普通の男なら喜ぶのかもしれない。
でも、俺にはどうにも怪しく思えた。
俺は自分で言うのもなんだが、特別な容姿でもなければ、強そうに見えるわけでもない。
そんな俺をわざわざ誘う理由がわからない。
「あー……最初は一人で探索してみて、厳しそうならパーティーを組もうかなって思ってるので……今日は、ごめんなさい」
「あ、そうなんですね。急に誘ってごめんなさい!」
夏希はあっさりと引き下がった。
……なんだ、普通にいい子なのか?
「あ、でも! これも何かの縁だし、よかったらダンS交換しませんか?」
「ダンS?」
「ダンジョン用のSNSです。ここにQRコードを表示してくれたら大丈夫ですよ」
「ああ、それの事か……」
言われたとおりに画面を操作すると、ピロンッ、と通知音が鳴った。
フォロワーが一人増えたらしい。
人と直接交換したことがなかったので、通知音に思わずびっくりしてしまった。
「じゃあ、俺はそろそろ探索に行くので。また何かあったら、よろしくお願いします」
「はい! ……あ、私から連絡してもいいですか?」
「え? ああ、全然大丈夫ですよ」
俺はそう答え改めてダンジョンの入口へ向き直った。
目の前には、極彩色の光が揺らめいている。
期待を胸に、俺は入口に手を触れた。
一瞬、身体がふわりと浮くような感覚があった。
そして気がつくと、俺はダンジョンの中にいた。
ダンジョンの中には、光り輝く石で装飾された円形の大きな部屋があった。広さは十二畳ほどだろうか。
見渡してみると、奥にはさらに続く扉がある。
ここは探索前の拠点のような場所なのだろうか。
いったい何のための部屋なのかと考えていると、不意に声が聞こえてきた。
『ダンジョンへようこそ。個体名:萩野駿様。私はダンジョン案内役です』
「これが、噂に聞くチュートリアルアナウンスってやつか」
女性のような声だが、どこか機械的でもある。声の出どころは分からず、まるで頭の中に直接響いているかのようだった。
『初めに、システムについて説明させていただきます。心の中で念じるか、声に出して「ステータス」と唱えてください』
ステータス。
男子なら、一度くらいは夢見たことがあるんじゃないだろうか。
自分の能力が数値になって見えること。自分でも気づいていない才能や、隠された能力があるんじゃないかと妄想すること。
俺も例外ではない。
「ステータス」
そう唱えた瞬間、目の前に青白く光る板が現れた。
まるで、ホログラムのような表示だった。
─────────────────────
萩野 駿 Lv:1 次のLvまでExp:10
見習い冒険者
HP:8 / 8
MP:9/ 9
筋力:2
耐久:2
魔防:4
敏捷:6
器用:5
知力:3
魅力:4
幸運:10
固有スキル
【独り言】
戦闘系スキル
なし
魔法系スキル
なし
耐性系スキル
なし
生産系スキル
なし
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大きさはA3用紙くらいだろうか。
自分の能力が目の前に表示されている。想像していたものが本当に目の前にあると思うと、なんだか感慨深い。
……いや、今はそんなことよりも。
「ネットで見た平均ステータスより、若干低い気がするな。気のせいかな……気のせいだよな」
幸運が高いのは分かった。
だが、それ以外のステータスは平均か、それ以下のような気がしてならない。
もしかして俺、ダンジョン探索に向いていないんじゃないだろうか。
「あ……ありがとうございます。固有スキルが【独り言】なのは、どうしてなんですか?」
『固有スキルは、個人の生き方や性格などの影響を受けて発現する特殊なスキルです。千差万別、十人十色。同じ固有スキルは一つとしてありませんが、特性の近いスキルは数多く存在します』
「なるほど。個人の生き方、ね……」
生き方や性格によって固有スキルが決まるということか。
……いや、待て。
「ていうか、【独り言】って……。俺、どんだけ独り言を言ってるんだよ……」
自分の性格を考えると、否定しきれないのが悲しい。
まあ、今さら落ち込んでも仕方がない。
次に気になるのは、この固有スキルにどんな効果があるのか、ということだ。
「スキルの効果って、見られたりしますか?」
『効果を知りたいスキルに触れると、詳細が表示されます』
なるほど、タッチパネル式なのか。
そうなると、色々なところを触ってみたくなる。
俺は案内されたとおり、固有スキルの【独り言】に触れてみた。
─────────────────────
固有スキル
【独り言】
自分と会話ができる。
レベルが上がるごとに、独り言が増える。
─────────────────────
「なるほど……」
変わった説明文だが、要するに異世界ものによくある並列思考みたいなものだろうか?
自分と会話ができるということは、もう一人の自分と相談できるとか、そういう感じかもしれない。
……うん。きっとそうに違いない。
「よし、考えるのはやめた。次はどこをタッチしようかな」
俺はステータス画面を上から順番に、あちこち触ってみた。
すると、見習い冒険者の表示に変化があった。
─────────────────────
見習い冒険者
Lv:10 【ジョブチェンジ可能】
─────────────────────
「おっ?」
ジョブチェンジ可能、だと?
いったい何レベルまであるのだろうか。まさか、ジョブチェンジが一回きりということもないだろう。
おそらく、今の自分が目指せる直近の目標が表示される仕組みなのだ。
「まずは最初のジョブチェンジを目指すかぁ。見習いなんて書いてあったら、なんか恥ずかしいもんな」
そのほかの項目もポチポチと押してみたが、特に変化はなかった。
さて、残る問題は固有スキルの使い方だ。
「……で、俺のスキルって、どうやって使うんだ?」
そもそも、【独り言】ってどうすればいいんだ?
とりあえず、心の中で念じてみる。
――【独り言】発動!
「…………何も起きないな?」
頭の中にもう一人の自分の声が響いてくるわけでもないし、何かが変化した様子もない。
「【独り言】発動!」
…………。
うんとこしょ、どっこいしょ。
それでもスキルは発動しません。
「なんだこれ、全く使い方が分からん……」
何か条件があるのだろうか。
それとも、独り言を言っている間に何かしらの効果が発生するスキルなのか?
そもそも、どうすれば発動したことになるんだ?
あれこれ試しているうちに、十分ほどが経過した。
しかし、スキルが発動する気配は一向にない。
「これって、もしかしてハズレスキルか……? 俺のダンジョン生活、始まる前から終わったかぁ……」
さすがに、いつまでもここで悩んでいるわけにはいかない。
スキルのことはひとまず保留にして、ダンジョンを進んでみることにした。
俺は入口とは反対側にある扉へ向かい、そっと手を触れた。
すると、ステータス画面とは違う、黄色いホログラムが目の前に浮かび上がった。
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・1層へ転移しますか?
・ダンジョン入口に転移しますか?
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どうやら、階層を進むごとに転移先の選択肢が増えていくらしい。
一度訪れた階層なら、どこからでも転移できるようになるそうだ。
これは便利な機能だな。
「とりあえず、様子見で1層を見てから考えようかな」
俺は【1層へ転移する】を選択した。
こうして俺は、ダンジョンの第一層へと足を踏み入れるのだった。
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