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勇者の選定

それを思い出したのは、私が5歳になった年の、選定式でのこと。周りの喧騒が響く中で私は呆然とした。


選定式とは、この世界のヒト族が太陽神フレア様から与えられる職業を授かるための儀式。

この儀式は、5歳になると全ての国民に義務付けられている儀式で、どんな落ちぶれた家庭の子でも、親のいない子でも、この国に住む()()()子どもに平等に、公平に定められた儀式となっている。


では何故全ての国民に義務付けられているのか。それはこの世界が、勇者と魔王が対峙するRPG風の恋愛シミュレーションゲームの世界だから。だから物語の設定上、国は勇者を選定式で見つけて、魔王と戦わせる必要がある。そしてその勇者にプレーヤーがなるための布石。そのために設定された、ありきたりな儀式。


ゲーム自体はよくあるもので、プレーヤーである勇者がレベルを上げながら、勇者軍と魔王軍に分かれて戦うだけっていう、単純なもの。ただ、魔王軍と戦うだけなんだけど、勇者の性別が選べるから、選んだ性別でストーリーに変化がある。まぁ、変化といっても、勇者の成長レベルに合わせて恋愛要素も加わるから、選ぶ性別でストーリーの入り方や進み方が変わってくる、っていう感じなくらいなんだけど。。。性別を選べるなんてのもよくある設定かもしれないけど、思ったよりもシナリオが作り込まれていたことと、イラストレーターと声優も人気どころを使っていたから、一定数の人気があった。それに、よくあるゲームには違いないんだけど、選んだ勇者の性別でサイドストーリーにも各キャラの限定ボイスがあったり、イベントスチルも集められるから、各声優ファンや絵師ファンの蒐集癖を刺激していた。

私も仕事の通勤時間とかに遊んでたんだけど、その理由も単純。実は女勇者を選ぶと、敵対する魔王も女魔王になって、男勇者だと同様に男魔王になる仕様なんだけど、これが重要。さっきも言ったように、勇者の成長と恋愛要素は切っても切れなくて。女勇者だと、主要な攻略キャラ、男キャラになっちゃうんだ。いや、まぁ、そりゃそうだ。女勇者に女キャラでハーレム作っても、一部コアなファンが付くだけ。男勇者のハーレムだって、同じこと。ファンに偏り出ちゃうよね。私はどっちも楽しめるタイプです。

まぁ、だから勇者の成長だけじゃなくて、恋愛イベント的にもライバルが必要ってことで、同じ性別の魔王になってたんだけど、女勇者のライバルキャラ、要は女魔王、私の推し声優だった。

やった、久しぶりの悪役声。お決まりの清純派で高く甘めの声よりも、断然低くて色気のある声。耳に残るような、低くても甘いフェミニンな声。大人の色気が残るあの声を出す彼女を聞ける。そんな喜びで私は遊び出した。だけどやはりイベントスチルや限定ボイスは少なくて。まぁ、そうだよね。主要キャラじゃなくてライバルキャラだから、その目的に選ばれてるキャラじゃないし。だけど彼女自身が人気でファンが多いからかな。女勇者のイベがあると必ずライバルで出てくるから数はあるんだよね。その全ての声を回収したくて、実は私全クリをしてたんだ。うん、女勇者編だけだったけどね。まぁ、男勇者編だと彼女の声は用意されてないから、一切やってない。まぁ、男勇者編と女勇者編、最終的には同じ様な話らしいから、このゲーム、好みの性別だけ全クリするだけでもいいみたいだった。ゲームなんて、そんなもんだよね。



で、どうして私がこの儀式で思い出したか?これもなんだか、ありきたりな展開だけど、、

私自身が、勇者だった。だから、私が儀式で勇者と定められた時、魔王が風魔法を使って、私たちにその声を届けた。


「太陽神フレアの子らよ。我は魔王、セレネア。とうとう、久方ぶりの勇者が選定されたようだ。拮抗していた我らはまた、戦わなければならない。準備に入ろう。次は勇者の旅立ちの時。それまでは、この世界は互いのもの。盟約を忘れるな。」


この声が聞こえた時、記憶の波がドッッッッと押し寄せてきて。。。ああ、彼女の声、私を励ましてくれた、推し声優だって。ヤバい、大好きなあの声、だいぶ久方ぶりに耳に触れた。やっぱりあの耳にかかる少し低めの艶のあるくぐもった声。それに魔王だから、尊大に仰々しく、響き渡った声。全てが彼女の魅力を引き立てていて、ヤバいほど好きだ。なんて、グルグルと頭に回って。もしかして、転生特典にあの声に逢える権利、フレア様が授けてくださったのかな?なんて思ったり。

そんなことをツラツラと考えて周りを見渡したら。

うん、そりゃ、騒然にもなるよね。国のお偉いさんと、儀式の(かなめ)の教会のお偉いさん、彼らにとっても由々しき事態。

300年ぶりの勇者だから、王や教皇なんかに報告してこの後の準備、しなきゃなんないもん。それに。


「すごいわ、イリス。やっぱり貴女は私の子ね!これで私たちは、幸せに生きていける、、、!!!」

私の母親、この人も騒がしくなっちゃったよ。困ったものだね。いや、むしろ彼女らから離れるチャンスでもあるのか??うん、そう提言しよう。

だってこれから10年後、魔王が攻めてくるもん。彼らに構ってたら、皆んな死んじゃうよ。


都合の良い理由ができたけど、厄介な職業、引いちゃったなぁ。。。

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