↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/186

80話 討伐対象『魔王の娘』⑫~リリアス、姫騎士を作ってしまう。




 ラプソディの帰りを待っていたリリアスは、ロリコンの姫様に誘拐された。

 あげく、ロリコンの姫様には追手がおり、王都ルクセンを出たところで、追いつかれてしまった。


 ちなみにロリコンの姫様は、メアリというようだ。

 追手の聖騎士ダッドソンとやらが、そう呼びかけていたので。


 リリアスは混乱していた。


(この聖騎士ダッドソンが、ロリコン狩りならば、リリアスの味方? しかし、リリアスが乗っているのに馬車をひっくり返してくるとは──失礼極まりない!)


 ロリコンの姫様ことメアリが、抱いたままリリアスに話しかける。


「安心したまえ、幼女リリアス。君のことは、わたしが守る。この命にかえても」


 リリアスは、首を捻った。

 ダッドソンの狙いはメアリのようだ。よってメアリが解放してくれれば、リリアスは安全なような。


 聖騎士ダッドソンに相対するのは、メアリの3人の護衛。

 メアリが最も信頼しているのは、護衛のリーダー、サト隊長のようだ。

 そのサトが、ダッドソンに向かって、言う。


「貴様の登場で、ハッキリした。第二王子コヒムが血迷ったという急報、事実だったようだな。半信半疑ながらも、メアリ王女をお守りするため、王都からの脱出を決めたのは、正解だった」


 ダッドソンは、ダイアウルフから降りた。


「だが、我に追いつかれた時点で、全ては無意味となった。オーウェンも、エイブラハムも、亡き者となった。コヒムが王位につくための障害は、あとはメアリ王女だけだ」


 リリアスを抱いたまま、メアリが息を呑んだ。


「父上と兄上が……コヒム、何と恐ろしいことを」


 リリアスは思う。

 どうやら、かつてアデリナが魔王を弑逆しようとした時と、似た展開のようだ。


 ただし、アデリナは失敗したが。


 リリアスは、ダッドソンとサト隊長に、スキャン魔法をかけてみた。

 ダッドソンのレベルは、886。

 対するサトのレベルは、256。部下である2人の護衛に至っては、120と136だ。


 レベルだけ見ると、ダッドソンには勝てない。ただ数的には有利なので、サトが隊長として有能ならば、まだ勝機はある。

 ところが、だ。ダイアウルフのレベルを見て、リリアスは勝機がないことを知った。

 ダイアウルフは、単体でLv650もある。


(これは、死んだ)


 リリアスは、メアリに忠告することにした。


「ロリコンの姫様」


 メアリは不思議そうに言う。


「わたしはロリコンではないぞ、幼女リリアスよ」


(自覚がない……末期だ)


「……姫様の護衛たちでは、ダッドソンには勝てない」


 メアリは微笑んだ。


「心配するな、リリアス。いざとなったら、このわたしが戦おう」


 リリアスは目を見張った。

 メアリは、ただのロリコンではなく、腕に自信がある姫のようだ。強さは性癖には左右されない。

 どのくらい強いのだろうかと、リリアスはさっそくスキャン。


 結果、メアリはLv46だった。

 一般的な農民でLv2とされる。よってメアリは、どこかの農村でなら、無双できる。

 姫様として護身術を習ったところ、勘違いしてしまった、というわけか。


(このロリコン姫様、雑魚だ。あまりに雑魚すぎて、ダッドソンの強さが別次元なことさえ、気づいていない)


 リリアスが嘆いていると、ダッドソンたちの戦闘が始まった。


 ダッドソンは、必殺技スキル〈分身〉を発動。5体となり、サトたちに襲いかかる。


〈分身〉の対処法は、本体を狙うことだ。5体のうち、ダイアウルフが付き従っているのが、本体だろう。


 サトも同じ考えらしく、ダイアウルフの近くにいるダッドソンを攻撃するよう、部下にも指示した。


 そこでリリアスは考える。

 ダッドソンも、〈分身〉の弱点は知っているはず。つまり、本体を攻撃されると、分身も消滅する、という弱点を。

 ならば、それを逆手に取るかもしれない。


 試しにリリアスは、再度、スキャン魔法をかけた。それから、満足した。

 リリアスの読み通りだったのだ。


 スキャンで判明したことだが、5体の中に、本体はいなかったのだ。

 ダイアウルフが付き従うダッドソンも含めて、5体とも分身なのだ。


 こういうことだろう。

 ダッドソンは、〈分身〉で5体の分身を出す。

 同時に、本体のダッドソンは姿を消す。

 おそらく、透明化の〈インビジブル〉あたりで。


 すなわち、サトたち護衛の相手を、分身たちにさせておく。

 その隙に、本体のダッドソンが狙うのは──。


 リリアスは迷ったが、仕方ないので警告した。


「ロリコン姫様、危ない!」


 メアリは顔をしかめる。


「だからロリコンではないと言っている」


 リリアスは頭を抱えたくなった。しかし、ここで見捨てると後味が悪い。

 たとえメアリが、幼女の天敵だとしても。


 リリアスは、血統魔法にして時間魔法を、発動。


「〈タイム〉!」


 時の流れが停止する。

 このときリリアスは、除外者を変更していた。

 時間停止の影響を受けない除外者は、その数が多いほどに、リリアスのMP消費ペースが早くなる。

 そこでリリアスは、節約することにした。

 メアリだけを除外者としたのだ。


 こうしてリリアスとメアリを抜かし、世界の時間が止まった。


 メアリが驚いた様子で周囲を見回す。

 サトたち護衛、対する分身のダッドソンたち。全員が、完全に固まっている。時間が停止しているのだから、当然だ。


「こ、これは一体?」


「リリアスが時を止めた」


 リリアスがそう説明すると、メアリはすぐに状況を理解した。頭は悪くないようだ。

 それから、独り言をつぶやいた。


「……時が止まっているならば、悪戯し放題ではないか」


 誰に対し、どんな悪戯をするのか。

 リリアスは、追及しないことにした。恐ろしいので。


「腐れロリコン姫様」


「なぜ侮辱された?」


「ダッドソンの本体は、すぐそこまで迫っている。ただし、透明化しているため、普通に探しても分からない」


「なんと。透明化というものを、解除はできないのか?」


「透明化の解除はできない。しかし──」


 リリアスは地面から砂をすくいあげて、周囲に振りまいた。


 すると、メアリから3メートルほど離れた地点だ。

 振りまいた砂によって、人の形が作られた。


 すなわち、透明化したダッドソンだ。

 もちろん、この本体も時間停止のため、固まっている。


 それにしても、リリアスの想定より、ダッドソンは近くまで迫っていた。


(あと1秒でも〈タイム〉が遅かったら、ロリコン姫様は仕留められていた)


 リリアスは〈タイム〉を継続しつつ、召喚魔法を発動。


「〈サモンズ〉!」


 召喚したのは、聖剣である。


 聖剣とは、神々に選ばれた勇者だけが授かることのできる、特殊な剣だ。

 リリアスは当然ながら、勇者ではない。


 召喚した聖剣は、ある勇者を倒したとき鹵獲したものだ。

 もとの持ち主の勇者は、エクスカリバーという名だった。

 そこでリリアスは、この聖剣を、エクスカリバーと呼んでいる。


「リリアスは、時の支配者。リリアスの前では、全ての強者は無力──そして、聖剣スキル〈忌み嫌われし者を切り裂く刃〉を発動!」


 聖剣が特別なのには、理由がある。

 神々によって、聖剣自体に必殺技スキル(聖剣スキル)が、付与されているのだ。それは所有者だけが発動できる。

 そして、もちろん聖剣エクスカリバーにも、固有の聖剣スキルがあった。


 聖剣エクスカリバーが浮き上がり、自動で斬撃を放つ。

 

 敵を問答無用で切断する、〈忌み嫌われし者を切り裂く刃〉の斬撃が。


 かくして、ダッドソンは一刀両断にされた。


 さすがのSSSランク聖騎士も、リリアスの敵ではなかったのだ。

 だが、リリアスは困った。リリアスが聖騎士を倒したことを、サト達に知られたら、いろいろと詮索されるだろう。


 そこでリリアスは、聖剣をメアリに押し付けた。


「なにをする、リリアス?」


「これも、お互いのため」


 リリアスは、〈タイム〉を解除した。時の流れが正常に戻る。


 ダッドソンが死んだことで、5体の分身も消滅。

 狼狽したのは、分身と戦っていた、サトたちだ。


 時間が停止している間に、リリアスはダッドソンを始末した。

 よってサト達にしてみれば、一瞬で事態が急変したことになる。


 ダイアウルフは、主の死を見て取り、逃走した。


 サトはメアリのほうを振り返った。とたん、口をあんぐりと開ける。

 無理もない。メアリのそばには、一刀両断にされたダッドソンの死体があるのだから。

 しかも、メアリは剣を持っている。


 リリアスが、メアリを示した。


「ロリコ──ではなく、メアリ姫が、ダッドソンを倒した。神々より授かりし、聖剣エクスカリバーで!」


 メアリは、ポカンとした顔。


 はじめに反応したのは、サトだった。メアリの前に跪く。


「姫様! 拙者の目に狂いはありませんでした。やはり、あなたは女王となられるお方ですぞ! 神々が授けた聖剣が、その証! あなたは伝説の職業である、姫騎士になられたのです!」


 残りの護衛たちも、畏怖の表情で跪く。


 メアリは、右手に握らされた聖剣エクスカリバーを見る。

 それからリリアスを見た。


 リリアスが目顔でうながす。


 リリアスとしては、こうするしかない。

 メアリはともかく、サトたちに、リリアスの力を知られるのは不都合。

 そこでダッドソンを倒した手柄を、メアリに押し付けることにしたのだ。


 メアリにも、リリアスの求めが分かったようだ。


 メアリは気乗りしない様子で、聖剣を掲げる。


「えー、ご紹介に預かった、姫騎士だ」


 姫騎士メアリの誕生であった。


 それからメアリは、リリアスを抱き上げる。


「そして、わたしの従者となった、リリアスだ!」


 メアリは、リリアスの耳元で囁いた。


「リリアス。わたしを姫騎士にしてしまったのだから、最後まで付き合ってもらうぞ。それにしても、幼女の匂いは良いものだなぁ」


 リリアスは思った。


(リリアスは、泥沼に嵌った)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。