表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/186

73話 討伐対象『魔王の娘』⑤~レイvsルードリッヒ。



【運命の日】──18時30分。



 レイは、ルードリッヒを恨んではいない。

 だが、レイもパーティ・リーダーを務めるようになって、一つ確信したことがある。


 パーティの仲間を見捨てるような奴は、リーダー以前に冒険者失格だ。

 レイは、両手剣を構えた。


(お前にだけは負けないぞ、ルードリッヒ)


 ルードリッヒは、呪文詠唱を行う。


「〈ハイ・ガード〉!」


 ルードリッヒの身体が、青く輝く。


「よく聞けよ、レイ。〈ハイ・ガード〉によって、俺の防御力は、いま格段に上がった。お前の刃では、ダメージは与えられないぜ」


「前から思っていたが、あんたは話が長い」


 レイは手刀を一閃させ、〈風殺剣〉の斬撃を放った。


 しかしルードリッヒは、右腕を払うだけで、〈風殺剣〉の斬撃を弾く。


「こんな攻撃、効くか! 次はこっちから行くぞ、〈コンファイン〉!」


 瞬間、レイは巨大な立方体の中に閉じ込められた。

 立方体の材質は、鋼鉄のようだ。


 レイは〈茨道改〉を発動。

 しかし、刃は鋼鉄の壁に弾かれる。


(変だな。〈茨道改〉の破壊力ならば、鋼鉄などは、バターを切るように裂けるはずだが?)


 鋼鉄の立方体の外から、ルードリッヒの声がする。どうやらルードリッヒには、立方体の中の様子が分かるようだ。


「無駄だ。その鋼鉄は、魔法でコーティングされている。お前の攻撃力程度では、破壊はできん」


 立方体の中からでも声は届くようなので、レイは返答した。


「すると、ルードリッヒ。お前からも、おれには攻撃ができないんじゃないか?」


「馬鹿め。攻撃する必要などない。〈コンファイン〉に閉じ込められた時点で、お前の敗北は決定したのだからな」


「なんだって?」


〈コンファイン〉立方体の中で、シューという音がしてきた。


 レイは、ハッとした。


「この音は──立方体内の空気を抜いているのか」


〈コンファイン〉立方体の外から、ルードリッヒの高笑いが聞こえた。


「その通りだ、レイ! お前はそこで、窒息死する運命だ!」


 レイは呟いた。


「卑怯な攻撃だな」


 立方体内の声は、ダイレクトにルードリッヒへと届くようだ。

 立方体の外から、レイの呟きに対して、ルードリッヒの返答があったので。


「卑怯だと? 甘っちょろいことを言うなよ、レイ。俺たち冒険者は、結果が全てだ。勝つためには、どんな手段も取る」


「どんな手段もというのは、仲間を魔王城で見捨てることも、か?」


「そうだ。足手まといは見捨てるしかないだろう?」


 レイは、確信した。

 ルードリッヒを、これ以上、冒険者にさせておいてはいけない。

 これからもルードリッヒは、パーティ・メンバーを切り捨てていくだろうからだ。


(ならば、ここでおれが討伐する)


 レイの視界がぐらついた。閉じ込められている立方体の中で、レイは片膝を突く。


 立方体内の様子は、ルードリッヒには見えているらしい。

 ルードリッヒが勝ち誇る。


「そろそろ、酸素が足らなくなってきたんじゃないか、レイ?」


 ルードリッヒの言う通りらしい。レイは眩暈を覚え始めていた。

 再度、〈茨道改〉を放つ。だが、やはり魔法コーティングの鋼鉄には、傷一つ付けられない。


(確かに、硬いな)


「諦めろ、レイ。お前は、そこまでの冒険者だった、というだけの話だ」


 レイは考える。

 ルードリッヒの言うことにも、一理ある。MPを温存して勝利できるほどには、自分はまだ強くはなかった。


 レイは言った。


「いいだろう、ルードリッヒ。本気を出してやる」


「本気だと? 現実逃避もたいがいにしろよ、レイ!」


 レイは、特殊スキルを発動した。


「〈魔装〉発動!」

 

 基本、特殊スキルは生来のものだ。

 だが時おり、突然変異のようにして、発現することがある。たとえば、特殊な状況下で経験値を稼いだとき、などだ。

 

 レイも、特殊な状況を経験していた。

 魔王城で4000回以上も殺されかける、という経験を。


 レイが〈魔装〉を獲得したのは、魔王ブート・キャンプの50日目。

 かの魔王に、頭部を引き抜かれる瞬間に会得したのだ。


 そして今──特殊スキル〈魔装〉の発動によって、漆黒の鎧が出現した。

 漆黒鎧は自動的に、レイの身体に装着される。


 漆黒鎧に身を包んだとき、レイは第2職業:闇黒騎士となった。攻撃力は、100倍にまで跳ね上がる。

 そして攻撃力とは、装備する武器の強度にも、影響を与えるものだ。


 レイが両手剣を振ると、〈コンファイン〉立方体は切り裂かれた。バターを切るように。


 レイは、〈コンファイン〉立方体の裂け目から、外へと出る。


 ルードリッヒが、驚愕の表情を浮かべる。


「そ、そんなはずが──俺の〈コンファイン〉が破られるなど、あってなるものかぁ! 〈ファイヤ・ブラスト〉!」


 防御力に難ありのレイだったが、特殊スキル〈魔装〉を得たことで、ようやく克服した。

〈魔装〉の漆黒鎧は、〈ファイヤ・ブラスト〉程度の攻撃は、跳ね返す。


「悪いが、ルードリッヒ。痛くも痒くもないぞ」


 ルードリッヒが怒鳴る。


「ふざけるなよ! お前は雑魚だろうが! 雑魚は雑魚らしく、俺にやられていればいいんだ!」


 レイはダッシュして、ルードリッヒの間合いに飛び込む。


「悪いが、あんたの相手をしているヒマはない」


 レイが両手剣を振り上げると、ルードリッヒが嘲笑った。


「無駄だぁ! 俺の〈ハイ・ガード〉は、鉄壁──」


 レイは両手剣を振り下ろす。

 その刃は、ルードリッヒを脳天から股まで、一刀両断にした。


 ルードリッヒの死に顔は、信じられないという表情で凍り付いていた。


 レイは〈魔装〉を解除した。

〈魔装〉のMP消費ペースは、リリアスの〈タイム〉クラスだ。MPが回復するまで、当分は〈魔装〉を使えないだろう。

 それどころか、残っているMPでは、〈翔炎斬〉も放てそうにない。


(GODランクとの戦いのために、温存したかったんだが──仕方なかったな)


 レイはその場を立ち去ろうとして、ふと思い出した。収納ボックスから、あるアイテムを取り出す。


 薬草(小)が5個だ。


 魔王城で追放されたとき、ルードリッヒに渡された薬草(小)だった。

 掠り傷を治すくらいしか効果のない薬草(小)なので、使うこともなく、収納ボックスに入っていたのだ。


 レイは、薬草(小)5個を、ルードリッヒの死体に放った。


「返したぜ」



【討伐パーティ 残り6人】



※※※



 ローラの必殺技スキル〈山斬り〉の破壊力は、凄まじかった。

 放たれた斬撃は、山をも切り崩せそうなほどの大きさ。

 あまりの威力に、斬撃の放たれた地点では、大地が割れるほど。


 そんな巨大斬撃が、真っすぐ飛んで来る。

 ローラの〈スキル殺し〉は、今も効果は続いている。

 つまり、サラ先輩の〈純白ラ界〉は使えない。


「〈ホーリー・シールド〉!」


『5年後のサラ』ことサラ先輩は、〈ホーリー・シールド〉を発動。〈ホーリー・シールド〉の聖なる盾で、巨大斬撃をいなした。


 巨大斬撃は軌道を外れ、市街地へ飛んで行く。200メートルほど進み、建物群を破壊していった。


 ローラが呟く。


「市民は避難されていますよね?」


 サラが、サラ先輩に言う。


「〈ホーリー・シールド〉でさえ、いなすのが精一杯だったのですか?」


 サラ先輩はうなずく。


「ええ。ですが、悲観することはありません。ローラさんを倒せば良いだけの話です」


 サラ先輩が、〈ホーリー・クロス〉を発動。

 巨大な聖なる十字架が、ローラを貫く。

 

 ローラの身体は、十字架によって遥か高みまで、掲げられた。


 しかし、ローラは大剣〈竜殺し〉を一閃させて、〈ホーリー・クロス〉を破壊。

 そのまま落下して着地するも、バランスを崩した。

 さすがのローラも、〈ホーリー・クロス〉によるダメージが効いているようだ。


 だが、サラは愕然としていた。

 黒龍ムシャムシャにさえ、致命傷を与えた〈ホーリー・クロス〉。


 それがローラに対しては、少しのダメージを与えただけとは。


(剣聖とは、これほどの実力者なのですね)


 ローラは大剣〈竜殺し〉を手放し、宙に浮いている剣の中から、一つの短剣を取った。

 その短剣で、自らの胸部を刺す。


 サラは驚愕した。


「何を──」


 ローラの身体において、〈ホーリー・クロス〉によるダメージが回復されていく。

 ローラは短剣を、胸部から抜き、手放す。刺した箇所にも、傷はない。


「こちらは、〈治癒の女神〉という短剣です。自らに刺すことで、回復が発動されます」


 サラ先輩が嘆いた。


「〈ゴッド・ヒーリング〉並みの回復力ですか──このままだと、ジリ貧ですかね」


 

 刹那、時の流れが止まった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ