表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/186

46話 魔王の誕生日会に行こう!④~乾杯の音頭をとる。



 レイは、ようやくラプソディを見つけた。

 ワープ魔法で両親を連れてくることを頼むと、ラプソディは快諾してくれた。


 ラプソディがワープ魔法で出発するのを見届けてから、レイは「あっ」と思った。


(おれも付いて行けば良かった)


 ソワソワしながら待っていると、ようやくラプソディが両親を連れて、戻って来た。


「やぁ、母さん、父さん。半日ぶり。ここが魔王城だ。で、彼女がおれの妻で──」


 ラプソディを正式に紹介する前に、両親ともに泣き出した。


「こんな素敵なお嫁さんをもらえるなんて、お前は神様に感謝しないといけないよ」と母。


「まったくだ。うちの子にはもったいないほど、気立ての良いお嫁さんだ」と父。


「……」


 レイはラプソディを隅に引っ張って行った。


「おれの両親に、変な魔法を使ってないだろうな」


「まさか。あたしはただ妻の立場から、レイの素晴らしさを話しただけよ」


「……まぁ、いいか。喜んでもらえたようだし」


 誕生日会が行われる大広間へと、さっそく移動。

 レイとラプソディの結婚式も、華やかで大規模なものだった。だが、今回は魔王の誕生日会だけあって、それに匹敵している。


 親衛隊員たちが、ラプソディに挨拶に来た。

 ラプソディは、気さくに答える。


「はい、ハニちゃん、クルニアちゃん。あら、バルバ、久しぶりね。人肉を食べるのも、程々にしておきなさいよ。ローペン、元気にしている? あなたは、ちょっと真面目すぎるわよ」


 バルバが人肉を食べている事実を、レイはとりあえずスルー。


 レイは、誕生日会の出席者たちを見回す。


 やはりアデリナの姿はなかった。

 勘当された身なのだから、アデリナがいないのは当然だ、が。

 先ほど魔王城の中で、レイはアデリナに助けられているのだ。しかも、魔王への言伝を頼まれている。誕生日おめでとう、と。


(……言えるわけがないな。アデリナと会った話をしたら、助けられたことまで明かさねばならなくなる。そんなことを聞いたら、ラプソディがどう思うか。命の恩人のアデリナには悪いが、言伝はおれのところで止めておこう)


 魔王が、上座の席に付く。

 レイは下座に移動しようとしたが、魔王が呼んで来た。


「レイ君、わしの隣の席に座りなさい」


 魔王の隣の席とは、実に目立つ。すでに魔族たちの視線を一心に浴びているというのに。

 というのも、ラプソディがレイのことを、「あたしの素敵な旦那様」と紹介して回っているためだ。

 もちろん、そんなふうに紹介されて、嬉しくないわけではない。が、冒険者としては、できるだけ魔族に注目されたくないのも、本音だった。


 とはいえ、義父に言われては仕方ない。

 レイは、早足で移動した。


「ありがとうございます、陛下」


「レイ君。わしのことは、お義父さんと呼んでくれて良いのだぞ。わしは、そちらのほうが嬉しいのだがな」


「……お義父さん」


 魔王は破顔した。


「おお、息子よ!」


「お義父さん」


「おお、息子よ!」


「お義父さん」


「おお、息子よ!」


(……これ、いつまで続くんだ)


 ラプソディが、レイに声をかけてくれたので、魔王とのエンドレスは終わった。

 ラプソディは、何やら思いつめている様子だ。


「どうした、ラプソディ?」


「レイ。やっぱり、友達は公平に扱わないとダメよね?」


 魔王の席から少し離れてから、レイは問い直した。


「どういうことだ?」


「友達をパパの誕生日会に招待するのなら、全員を招待するのが正しいわよね?」


「まぁ、友達を差別するのは良くないからな」


 ラプソディの悩みが晴れたらしい。ワープ魔法で、姿を消した。

 まだ招待していなかった友達を、連れに行ったのだろう。

 

 ラプソディの友達なら、魔族だ。


 という、レイの予想は見事に外れた。

 ラプソディがパッと現れる。リガロンと共に。

 リガロンが、トカゲの口をあんぐりと開けた。


「レ、レイ。ここは、どこだ?」


「……魔王城だ、リガロン。これから魔王の誕生日会が行われる」


(……そうか。ラプソディの言う友達は、冒険者のパーティ・メンバーのことだったのか)


「……オレ、場違いじゃねぇか?」


 レイは首を横に振った。


「いや、意外と馴染んでいるぞ」


 ここには異形の者も多い。リザードマンがいても、変ではない。

 このとき、ラプソディはまたも消えていた。次の友達を、ワープ魔法で連れに行ったようだ。レイはハッとした。


(リガロンを連れて来たということは、次に来るのは──)


 ラプソディが、サラと共に現れた。

 サラは周囲を見回し、いまにも卒倒しそうだ。


「レ、レイさん。こ、ここは、ど、どこなのでしょうか?」


「……魔王城だ、サラ。これから魔王の誕生日会が行われる」


 サラは、ガタガタ震えだしながらも、言った。


「た、誕生日、プ、プレゼントを、忘れて、しまいました」


「……大丈夫だから。リガロンと一緒に、隅のほうにいるといい」


 しかし、それをラプソディが邪魔した。


「一緒に来て。パパに、あたしの友達を紹介したいわ」


 リガロンは唖然とした様子。


「パパ、というのは、つまり?」


「魔王よ」


「……」


 リザードマンという種族も、顔面蒼白になるようだ。リガロンがそうなったので。

 レイは思い出した。リガロンはまだ、ラプソディが魔王の娘であることを知らないのだ。いま、知ったが。


 サラのほうは、ついに卒倒した。

 ラプソディが魔王の娘であることは、受け入れたサラ。しかし、魔王と対面するのは、さすがに厳しかったか。


 ラプソディは不思議そうな顔だ。


「あら、サラちゃん。どうしたの?」


 何はともあれ、誕生日会は始まった。

 

 すでにレイは、両親を魔王に紹介し終えている。

 ちなみに、レイの両親は魔王の人柄を褒めていた。


(魔王の人柄を褒める人間とは……我が両親ながら、凄いな)


 とにかく、これで難しいことは終わった。

 あとは食事をして、帰るだけだ。

 しかし、レイのこの読みは間違っていたのだ。


 誕生日会に集まった家臣たちに、魔王が挨拶する。

 それから、レイの肩をポンと叩いた。


「では、諸君。乾杯の音頭は、わしの息子に頼みたいと思う。レイ君、やってくれるかね?」


 レイはうなずいた。


「も、もちろんです、お義父さん」


 断れるはずもない。

 レイは、乾杯の音頭をとるため、立ち上がった。


(まさか、こんな大役が回ってくるとは……)


 視線を巡らすと、ハニとクルニアが隣り合って、座っていた。

 その近くには、ローペンとバルバもいる。

 さらに下座のほうへ視線を向けると、リガロンとサラがいた。

 最後にレイは、隣にいるラプソディへ、視線を向ける。


 ラプソディは、励ますようにうなずく。

 レイは、覚悟を決めた。


「ご指名をいただきました、レイと申します。ラプソディの夫です。僭越ですが、乾杯の音頭をとらせていただきます。魔王陛下、お義父さん、お誕生日おめでとうございます。これからも魔王陛下が、冒険者たちを血祭りに上げ、魔族国家を繁栄させ続けることができますよう、乾杯しましょう」


 これは冒険者の言葉ではないなぁ、とレイは思った。

 とはいえ、いまのレイは、リウ国の冒険者ではない。

 

 魔王の息子だ。


「皆さま、ご唱和お願いします────乾杯!」


 かくして、誕生日会は無事に終了した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ