41話 闘技大会⑭~ラプソディvsオル。
ワイバーンのテグスは、城郭都市ベルグの外で待っていた。
クルニアが呼ぶと、すぐさま飛んで来た。
テグスの背には鞍がない。クルニアは手綱も持たず、余裕でテグスに騎乗する。
一方、クルニアの後ろに乗ったレイとサラは、たまったものではなかった。
テグスは上昇気流に乗ると、途轍もない速度で飛んだ。
当然、振り落とされたら命はない。
レイは、必死になってクルニアにしがみ付いた。
逆にクルニアは、レイを振り払おうとする。
クルニアが言うには、
「姫殿下の夫のくせに、私に抱きつくな。不貞だ!」
ということらしい。
レイは命がかかっているので、クルニアの言い分は無視した。
そんなレイの後ろには、サラが騎乗していた。
当然ながら、サラはレイにしがみ付いた。振り落とされないためだ。
が、クルニアにとっては、これも気に入らなかったようだ。
「ヒーラーの娘。姫殿下の夫に、抱きつくな。不貞だ!」
サラも、命がかかっているので、しがみ付くのを止めることはなかった。
こうして、何度もテグスから振り落とされそうになりながらも、レイとサラは耐えきった。
気づけば、バール高原の上空。
14キロの距離も、テグスにはあっという間だった。
レイは高みから、バール高原を見下ろした。
戦闘の深い傷跡が、確認できる。
地面は至るところが割れている。高原の周囲にある森林までも、攻撃の影響は及んでいた。木々は押し倒されているか、または焼け落ちている。
しかし、ラプソディとオルの姿はない。
レイは呻いた。
「もう別の場所に移動してしまったのか」
サラが、レイの肩を叩いた。
「違います、レイさん! 上です!」
「上?」
レイは上を見上げた。
もともとテグスは、かなりの高度を旋回している。
さらに、その上空なのだ。
黒い点が降って来る。
いや、そうではない。
あれはラプソディとオルだ。
テグスを掠めるようにして、2人は降下していき、ついに地面に着地した。
その衝撃で、大地が抉れた。
オルが〈光の柱〉を発射しながら、キャノン・ランスを振り回す。
ラプソディは、右腕に魔法障壁を張り、その腕で〈光の柱〉を弾いた。
〈光の柱〉は、鞭のようにしなって、森林地帯まで伸びる。
まだ残っていた木々が、〈光の柱〉によって両断された。
〈光の柱〉の射程距離に限界はないようだ。どこまでも伸びているのだから。
ラプソディが、業火の竜巻を作り出した。
猛火が渦巻き、天まで届きそうだ。
これなら都市丸ごとを、簡単に殲滅できるだろう。
サラが悲鳴を上げる。
クルニアは、楽しそうに解説した。
「見ろ、レイ。〈トルネード〉と〈ゴッド・フレイム〉の融合魔法だ。殲滅系の魔法を合体させるなど、姫殿下にしか出来ぬ芸当だ」
オルは、業火の竜巻に飲み込まれた。
普通なら、命はない。
しかし、オルは火炎を纏いながらも、自力で竜巻領域から脱した。
それどころか、キャノン・ランスを槍モードにして、ラプソディに飛びかかる。
キャノン・ランスの突きを、ラプソディは右拳で弾く。
このタイミングで、キャノン・ランスの穂先が、砲口へと変換。至近距離から、ラプソディへと〈光の柱〉が、発射される。
〈光の柱〉の直撃を受ける、ラプソディ。
レイは目を凝らして、ハッとした。
(いや、直撃を受けたわけではないぞ!)
〈光の柱〉は、ラプソディに達していない。
ラプソディの身体へと至る前に、黒い球体に吸い込まれているのだ。
その球体は、直径80センチ程度なのに、凄まじいエネルギーを発している。
レイは、考えた。
あの黒い球体は、どこかで見たことがある、と。
やがて答えが分かった。
かつて吸血鬼リークが発動した、ブラック・ホールだ。
ただし、リークが出したものよりも、ラプソディのブラック・ホールは、かなり小さい。
ラプソディのブラック・ホールの目的は、〈光の柱〉を吸い込むことにあるようだ。
これによって、何が起きたか。
オルの自慢の〈光の柱〉は、ブラック・ホールに吸い込まれ続けている。
つまり、もう攻撃には使えない。
オルは状況を打開するために、〈光の柱〉をいったん解除した。
ブラック・ホールから離れて、再度、〈光の柱〉を出そうというのだろう。
しかし、それが判断ミスだった。
〈光の柱〉が解除されたとたん、今度はキャノン・ランスの砲口が、ブラック・ホールに吸い込まれ始めたのだ。
〈光の柱〉を出している間は、まだ良かった。
〈光の柱〉が、ブラック・ホールに吸い込まれ続けていたので、キャノン・ランス本体は無事で済んでいた。
ところが〈光の柱〉を解除したため、今度はキャノン・ランス本体が、ブラック・ホールに捕まったわけだ。
オルは見誤った。
初めオルは抵抗したが、ついにキャノン・ランスを諦めた。
キャノン・ランスの柄から手を離し、後ろへと跳ぶ。
ブラック・ホールは、キャノン・ランスの先端を飲み込み、最後には全部を吸い込んでしまった。
刹那、ラプソディが、オルの背後にワープした。
〈ダーク・ブレイド〉を発動する。闇黒の刃だ。
反転したオルは、自らの右肘で、闇黒の刃を弾いた。
それからオルは大地を蹴り、高く跳び上がる。
オルの跳躍力は、異常だった。
テグスが旋回している高度まで、跳んで来たのだから。
(どうりで、さっきはテグスより上空で、戦っていたわけだ)
サラが叫ぶ。
「わたし達を目指して、跳んで来ますよ!」
クルニアが舌打ちした。
「私のテグスを強奪して、この場から離脱するつもりか。生意気だな。私がトドメを差す」
戦闘槌を構える、クルニア。
しかし、レイが止めた。
「よせ、クルニア!」
「なんだと?」
「オルは、ラプソディの獲物だ」
「その通りよ、レイ」
そう答えたのは、ラプソディだった。
テグスの頭の上へと、ワープして来たのだ。
下方からは、物凄い速度で、オルが跳んで来る。
オルの両拳が、真っ赤に輝きだした。エネルギーが充填されているようだ。
レイは考える。
(オルは拳を武器にした、必殺技スキルを発動するつもりか。対するラプソディは──?)
ラプソディの右手の指先から、銀色の糸が伸びだす。奇妙な輝きを放つ、銀糸が。
「あたしに、これを使わせるなんてね。オルちゃん、なかなか良かったわよ」
ラプソディが、テグスの頭から落下した。
下方から跳んで来るオルと、対決する。
オルが、輝く拳を放つ。
「〈魔轍〉!」
対するラプソディは、銀糸を一閃させる。
「〈インフィニティ〉!」




