↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/186

32話 闘技大会⑤~竜人の娘さん、強すぎた。



 1回戦のラスト。

 対戦カードは、竜人の女オルと、前回優勝者のAランク戦士アレクだ。

 

 アレクの装備は、両手剣。対してオルは、キャノン・ランスを右手に持つ。

 レイは控室の窓から、戦闘フィールドを観戦した。


 試合開始の銅鑼が鳴る。

 オルはキャノン・ランスを、アレクへと向ける。


 レイの隣で観戦していたラプソディが、鋭い口調で言う。


「レイ、無関係の観客が死ぬのは、嫌?」


 レイは訳が分からないながら、答えた。


「当たり前だろ」


 ラプソディの姿が消える。

 ワープ魔法を使ったようだが、行先はどこか? 


 刹那、視神経を焼きかねない、激しい光が起こった。

 オルのキャノン・ランスからだ。


 キャノン・ランスは、その先端を変換することができる。穂先か、砲口かに。

 いまは砲口の状態であり、そこから光の柱が発射されたのだ。


〈光の柱〉は、アレクを飲み込んだ。

 刹那、アレクの肉体は消滅した。

〈光の柱〉の破壊力は、アレクの防御力など上回り、その肉体を跡形もなく消してしまったのだ。


〈光の柱〉はそのまま、真っすぐに進んで行く。すなわち、観客席に向かって。

 観客たちが悲鳴を上げる。〈光の柱〉が触れるだけで、観客たちは消し飛ばされるだろう。


 殺戮が起ころうとした、そのときだ。


 砲口から発射された〈光の柱〉が、観客席に至る直前で止まった。

 まるで、見えない壁に衝突したかのように。


 レイはハッとした。観客席の前に、ラプソディが浮かんでいる。浮遊魔法だろう。

 ラプソディは〈光の柱〉へと、右手を突き出していた。

 停止している〈光の柱〉とは、5メートルほど離れている。


(そうか。ラプソディは、魔法障壁を出しているんだ。〈光の柱〉は、魔法障壁に衝突した。魔法障壁は、肉眼では見えないからな。ラプソディは、観客たちを守ってくれているのか)


 オルは首を傾げてから、キャノン・ランスを下した。

 とたん、〈光の柱〉が消滅する。

 ラプソディは右手を下して、楽しそうに微笑んだ。


「なるほどね。竜人というのは、少しは楽しめそうな種族のようね」


 オルは返答せず、戦闘フィールドから歩き去った。

 アレクが消滅したので、オルの勝利だ。

 

 レイの隣で、ハニが感嘆の声で言う。


「さすが、ラプソディ様。鉄壁の魔法障壁だったよね」


「しかし、変だな。以前にも、キャノン・ランスを見たことはある。だが、火の玉を発射するだけだったぞ。その火の玉も、せいぜいが〈ファイヤ・ボール〉の威力だった」


「オルのキャノン・ランスは、通常のモノではないよ。魔改造されているね」


「魔改造だって?」


「簡単な話。通常より、威力が100倍くらいになっているのさ」


「まてよ。100倍のパワーなんて、改造したからって出せるものなのか? だいたい、キャノン自体が持たないだろ?」


「もちろんさ。だから、オルは自らのMPを使っている。〈光の柱〉の発射元は、オル自身なのさ。大量のMPを消費し、キャノン・ランスを媒介にすることで、初めて〈光の柱〉を放てるね」


「……なるほど。そのため、通常のキャノン・ランスの100倍のパワーを実現し、キャノン本体も壊れないわけか。つまり、オルは魔導士でもあるわけか?」


「厳密には、魔導士ではないね。魔導士は魔法を使う。スキャンしたけど、オルのステータスに魔法はなかった。ただね、MPの数値は膨大だった。悔しいけど、ボク以上だね。ちなみに、ラプソディ様のMPは無尽蔵」


 レイは、整理した。

 オルは膨大なMPを持っているが、魔導士ではない。

 キャノン・ランスを魔改造し、自分のMPを消費することで、〈光の柱〉を放てる。


「そうか。〈光の柱〉の正体は、必殺技スキルだな」


 必殺技スキルとは、MPを消費して放つ、必殺の技。レイもMPを使って、〈茨道改〉などを放っている。


「だね」


 ラプソディが、ワープ魔法で戻って来た。

 レイはラプソディに頷きかける。


「ありがとう、ラプソディ。観客たちを守ってくれて」


「レイのハグがご褒美よ」


「……いま、人前で?」


「もちろん」


 レイは、ラプソディを抱きしめた。

 ハニが呆れ顔をし、サラが顔を真っ赤にしていた。


 こうして、1回戦の全試合が終了した。

 前回優勝者が早々に敗北、しかも殺されるという、波乱を含んだ始まりだった。


「よし、宿に帰るか」


 ラプソディが小首を傾げる。


「何を言っているのよ、レイ。これからが、本番でしょう?」


「……ラプソディ。闘技大会の日程表、読んでないのか?」


「なぜ、あたしが読むの?」


「2回戦、準々決勝、準決勝が行われるのは、大会2日目。つまり、明日だ。そして大会3日目に、決勝戦が行われる」


「決勝戦は、レイとあたしで決まりね」


「……オルを撃破するだけでなく、ハニも倒さなければ、決勝まで行けないんだが?」


 ラプソディは、レイを信じきった眼差しだ。


「レイなら、やれるはずよ」


「……努力する」


 コロシアムの表で、観客席にいたリガロンと合流。

 リガロンは、オルの〈光の柱〉について、言った。


「たまげたな、アレは。これまで戦ってきた敵の中では、文句なしで最強だろ」


「これまで戦った中だと──最も手ごわかったのは、吸血鬼リークか」


 レイは、頭の中で、オルとリークを戦わせてみた。

 リークにも、〈ブラック・ホール〉という、強力な殲滅系の魔法があった。

 実際、ハニを苦しめたほどの敵だ。

 

 それでも、リークがオルに勝てるとは、思えなかった。


「ああ。今のところ、敵ではオルが最強だな」


「そんなオルと、お前は準々決勝で当たるのか……前回優勝者を瞬殺した、化け物と」


「……まあな。といっても、まずは2回戦を突破しなければ、だが」


「準々決勝まで進んだら、戦う前に棄権しろよ。リーダーを失っちゃ、このパーティはお終いだぜ」


「……」


 確かに、リガロンの助言は正しい。レイでは、オルには勝てないだろう。

 しかし、それを理解したうえで、レイは思うのだ。


(今のおれの力が、どこまでオルに通用するのか。それを試してみたい)と。


 5人は、宿に戻った。

 宿では、不機嫌そうなクルニアが待っていた。

 レイが聞く。


「あれ、クルニア。コロシアムには、行かなかったのか?」


 クルニアは、つまらなさそうに言う。


「ふん。姫殿下が勝利されると、明らかではないか。むろん、姫殿下の勇姿を見届ける価値はある。しかし、それは明後日の決勝だけで、充分だ。決勝でハニと当たるまでは、どうせ雑魚ばかり。姫殿下も、退屈されるだろう」


 クルニアは、ちゃんと大会スケジュールが頭に入っているらしい。

 ハニが、気の毒そうに言う。


「クルニアさん、失敗したよ。試合を観戦していたら、さっそくラプソディ様の勇姿を見ることができたのに」


 それからハニは、オルの〈光の柱〉を、ラプソディが魔法障壁で防いだ話をした。

 クルニアは興味を持ったようだ。


「ほう。竜人が出場しているのか。それは手合わせ願いたいものだな」


「うちのパーティだと、まずレイが戦うことになりそうだよ」


「なに、この男が?」


 ハニとクルニアが、同時にレイを見た。

 

 レイは唸った。


「……すでに死んだ者を見るような眼差し、やめろ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。