31話 闘技大会④~初戦の相手がCランク戦士で、微妙だ。
トーナメント表が発表された。
魔法によって、全出場者の視覚に送り込まれて来たのだ。
ただし、ラプソディとハニは初め、敵からの視覚攻撃と解釈し、排除していたが。
レイは、トーナメント表を確認する。親切なことに、レイの名が赤字で記されていた。
つまり、トーナメント情報を送り込んでいる視界の主の名が、赤字になるようだ。
1回戦のレイの対戦相手は、聞いたことのない名だ。
続いてレイは、主要な人物の位置を確かめた。
トーナメントのブロックは全部で4つ。
まず、ラプソディだ。
ラプソディは、レイのいるブロックからは、決勝戦を挟んで『向こう側』のブロックにいた。よって、ラプソディと当たるとしたら決勝である。
ハニは、レイのいるブロックの、隣のブロックだ。当たるとしたら、準決勝ということになる。
オルとイワンは、どうか?
イワンは『向こう側』のブロックで、ラプソディの隣のブロック。つまり、2人が順当に勝ち上がれば、準決勝でぶつかることになる。
問題は、オルだ。
なんの嫌がらせか、オルはレイと同じブロックにいた。
順当に勝ち進むと、レイは準々決勝でオルとぶつかることになる。
(SSSランクの戦士と、戦うのか。悪い冗談だな)
さらに、謎の透明化する出場者も、トーナメント表のどこかにいるはずだ。
(とにかく、いまは1回戦を突破することだな)
試合の出場者は、自分の番が来るまで控室で待機する。
この控室は複数あった。対戦相手が同室にならない配慮だろう。もちろん、同じ控室に集まってもいいわけだ。
レイ、ハニ、サラの3人で、一つの控室を独占した。
控室には窓があり、戦闘フィールドを見ることができる。
はじめに戦うのは、ラプソディの組み合わせだった。
そのため、ラプソディと対戦相手だけが、戦闘フィールドに残った。
対戦相手は、片手剣を装備した男だ。
1回戦からラプソディと当たるのだから、くじ運のない男である。
戦闘開始の合図に、銅鑼が鳴らされた。
観客が湧く。レイ達も、控室の窓から見守る。
片手剣の男が、ラプソディへと突撃する。
ラプソディはあくびをしながら、待ち受けた。
片手剣の男が攻撃に移る。それよりも速く、ラプソディのデコピンが放たれた。
片手剣の男は、デコピン一発で吹き飛ばされ、戦闘フィールドから転げ落ちる。すっかり伸びていた。
試合終了。
「……ラプソディ、容赦がないな。片手剣の男は、デコピンで負けてしまった。あれはもう、立ち直れないんじゃないか」
レイが嘆くと、ハニが言う。
「ラプソディ様が手加減しなかったら、片手剣の男なんて、瞬殺されているからね。片手剣の男は、あれでも命があるだけ幸運だよ」
「それも、そうか」
ラプソディが、レイたちの控室に入って来た。
「敵が弱すぎて、つまらなかったわ」
「……まだ1回戦だから」
こうして、命がけの試合が、進行して行った。
4つあるブロックの中で、レイのいるブロックが最後だ。
レイは、自分の試合への緊張感を抱きつつも、様々な試合を観戦する。
1回戦6試合目で、イワンが出て来た。
イワンは〈アイス・ランス〉を放ち、対戦相手に致命傷を負わせる。対戦相手の戦闘不能で、イワンの勝利となった。
ちなみに〈アイス・ランス〉とは、〈アイス・ニードル〉の上位魔法だ。
1回戦9試合目で、ハニの出番となった。
ハニは、対戦相手に対して、〈ファイヤ・ボール〉を連射。
対戦相手は、連射される〈ファイヤ・ボール〉を避けて行く。
しかし、これがハニの狙いだった。避け続けた結果、ついに対戦相手は、戦闘フィールドから落ちてしまったのだ。
勝利したハニが、控室に戻って来る。
「やったな、ハニ」
「楽勝すぎるよ。ボク、準決勝まではヒマそう」
「準決勝?」
「オルが出て来るでしょう」
「なるほど」
ということは、SSSランク同士の戦いが見られるというわけか。
(このコロシアム、崩れるんじゃないか)
レイとハニの会話を聞いていたラプソディが、叱りつけるように言う。
「こら、ハニちゃん。準決勝に勝ち上がって来るのは、オルではなく、レイでしょ」
レイは冷や汗をかいた。
「ラプソディ。おれを高く買ってくれるのは有難いが、オルに勝てる見込みはないぞ」
「では棄権するの?」
「いや。冒険者たるもの、戦わずして負けを認めることはできない」
ラプソディが、レイに抱きつく。
「さすがよ、レイ。カッコいいわよ!」
「そうかなぁ……」
ハニが呻いた。
「これが、バカップル」
こうして、1回戦13試合が来た。
レイの出番だ。
レイの対戦相手の名は、ホブ。
30代の男で、変わった剣を持っていた。鞭状が連結して、剣の刃となる。つまり、剣としても鞭としても使える、ブレードウィップだ。
かなりの戦士でなければ、使いこなせない武器だ。
戦闘フィールドに向かう前に、ラプソディがホブをスキャンした。
「ホブのステータスだと──Cクラス相当の戦士ね」
「Cクラスか……敵にとって、不足はないな」
戦闘フィールド上で、レイとホブが向かい合う。
銅鑼が鳴った。
レイは両手剣を構え、ホブと距離を取る。ひとまず、ホブのブレードウィップの動きを見るつもりだった。
さっそく、ホブが攻撃を仕掛けてくる。
ブレードウィップの刃の連結を解除。鞭状となる。当然、射程距離も伸びる。この鞭が、レイを狙ってきた。
鞭の動きは、まるで生きているかのようだ。
「行くぞ!」
レイは姿勢を低くして、駆けだす。
鞭の切っ先が、レイに向かって来る。それを紙一重で回避。
そこから、さらにダッシュ。
ホブは鞭を連結し直し、剣に戻した。
「いまだ、〈爆裂斬〉!」
リガロンから教わった必殺技スキルで、ホブの剣を弾く。
これによって、ホブの胴体が、がら空きとなった。
この隙を逃してはいけない。
レイは、渾身の斬撃を放つ。
並みの相手では、殺してしまう破壊力だ。
しかし、ホブはCクラスの力量があるという。ならば防御力も高いだろう。防御力が高ければ、ダメージも軽減する。よって、胴体が切断するようなことはあるまい。
もちろん、〈茨道改〉を放っていたら、話は別だったろう。だから、ただの斬撃にしておいたのだ。
レイの斬撃が、ホブの胴体に減り込む。
「ぐわぁぁあぁあぁぁ!」
ホブは吹き飛び、仰向けに倒れた。斬撃の剣傷からは、激しい出血が起こる。もう戦える状態ではない。レイの勝利だ。
ホブのもとに、彼の友人らしきヒーラーが駆け付けた。さっそく回復魔法を始める。
命に別状はなさそうだ。
レイは、控室に戻った。
ラプソディが抱きついて来る。
「さすが、あたしの旦那さんね! もう、レイはAランクのレベルよ!」
「冒険者カードには、いまだEランクとあるけどな」
「冒険者カードに書いてあることなんて、デタラメね。破いてしまいましょう」
「よせ! 破られたら、失業だ!」
こんなことをしているうちに、1回戦16試合目となった。1回戦は、これが最後の戦いとなる。
戦闘フィールドに出て来たのは、オルだ。
オルの対戦相手は、レイと同じ両手剣を装備した男。アレクという名だ。
レイは、「あっ」と思った。
「見過ごしていたが、オルの対戦相手は、前回優勝者だぞ」
ハニが、アレクにスキャン魔法を使う。
「へえ。アレクという男、やるね。Aランク戦士というところだね。とくに攻撃力は高いよ、レイを超えるかも」
レイは、攻撃力にひたすら特化した身だ。そんなレイを上回る攻撃力とは。
「竜人のオルも、苦戦するのではないか?」
ラプソディは小首を傾げる。
「それは、どうかしらね?」
銅鑼が鳴った。
そして──。




